『ウイルス学者の絶望』
『ウイルス学者の絶望』
(宮沢孝幸著、2023年、宝島社新書)
長年ウイルス研究をしてきた著者が、今回のコロナ禍で自らの知見を活かすことができなかったことを残念に思いながら、改めて、現段階でわかっていることについて解説してくれている本。
ただ、私自身はウイルスや細菌のことについてもともと関心があって、著者の師匠にあたる山内一也さんの本なども読んでいるのですが、それでも若干専門的でわかりにくいところがあったので、なかなかわかりやすく説明するのは難しいのだろうなあと感じました。
今回のウイルスについては、最初こそ毒性が強かったものの、感染の広がりとともに弱毒化していったので、より汎用性のあるもともと備わっている自然免疫を強めたほうがよい可能性や、ワクチンを作るにしても、いろいろな作り方があって、別のターゲットに対応したワクチンにした方がよかった可能性などについて、また、妊娠時の妊婦と胎児の関係は免疫的に複雑なこと、流産の率が高いことなどから、ワクチンの影響が判断しにくいことなど。
ちょっと衝撃なのは、今回のウイルスに対するワクチンについて、2回目接種以降のブースター接種は、ブースター接種によってワクチンを取り込んだ細胞がスパイクタンパク質をつくり出すようになると、先の2回の接種によって既に誘発された免疫がその細胞をウイルスに感染した細胞と勘違いして攻撃してしまうリスクがあるのだそう。
著者は、本当は、ウイルスによる動物の共進化の研究に集中しようとしていた矢先、今回のコロナ禍があって、そちらに奔走されてしまったらしく、私も関心のあるテーマなので是非、そちらの研究を頑張ってほしいなと思いました。
最後に、ウイルス学者を悩ませた16の質問ということで、ミニQ&A集みたいなのがあって、こんなデマが手回っているんだということを知ることができるのですが、最近はインターネットを誰もが普通に見ていて、とんでもない誤報が多くの人を惑わせているということをあらためて感じます。
それと、こういった科学的知見に関する解説本と言える本には、特に最近書かれている本に必ずと言っていいほど、一見役に立たない基礎研究に対して予算が削られていることについて書かれていて、これはお決まりなのかとも思わせるところがあったりします。特に理系の研究には研究費が必須なので、なかなか切実なのだなと思わせます。
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(宮沢孝幸著、2023年、宝島社新書)
長年ウイルス研究をしてきた著者が、今回のコロナ禍で自らの知見を活かすことができなかったことを残念に思いながら、改めて、現段階でわかっていることについて解説してくれている本。
ただ、私自身はウイルスや細菌のことについてもともと関心があって、著者の師匠にあたる山内一也さんの本なども読んでいるのですが、それでも若干専門的でわかりにくいところがあったので、なかなかわかりやすく説明するのは難しいのだろうなあと感じました。
今回のウイルスについては、最初こそ毒性が強かったものの、感染の広がりとともに弱毒化していったので、より汎用性のあるもともと備わっている自然免疫を強めたほうがよい可能性や、ワクチンを作るにしても、いろいろな作り方があって、別のターゲットに対応したワクチンにした方がよかった可能性などについて、また、妊娠時の妊婦と胎児の関係は免疫的に複雑なこと、流産の率が高いことなどから、ワクチンの影響が判断しにくいことなど。
ちょっと衝撃なのは、今回のウイルスに対するワクチンについて、2回目接種以降のブースター接種は、ブースター接種によってワクチンを取り込んだ細胞がスパイクタンパク質をつくり出すようになると、先の2回の接種によって既に誘発された免疫がその細胞をウイルスに感染した細胞と勘違いして攻撃してしまうリスクがあるのだそう。
著者は、本当は、ウイルスによる動物の共進化の研究に集中しようとしていた矢先、今回のコロナ禍があって、そちらに奔走されてしまったらしく、私も関心のあるテーマなので是非、そちらの研究を頑張ってほしいなと思いました。
最後に、ウイルス学者を悩ませた16の質問ということで、ミニQ&A集みたいなのがあって、こんなデマが手回っているんだということを知ることができるのですが、最近はインターネットを誰もが普通に見ていて、とんでもない誤報が多くの人を惑わせているということをあらためて感じます。
それと、こういった科学的知見に関する解説本と言える本には、特に最近書かれている本に必ずと言っていいほど、一見役に立たない基礎研究に対して予算が削られていることについて書かれていて、これはお決まりなのかとも思わせるところがあったりします。特に理系の研究には研究費が必須なので、なかなか切実なのだなと思わせます。
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