『プリズン・サークル』
『プリズン・サークル』
(坂上香著、2022年、岩波書店)
2020年、横川シネマで公開された同名のドキュメンタリー映画を観たかったのですが、コロナ禍もあり、観逃してしまってずっと気になっていたところ、取材記録などその背景なども含めて書籍されたので早速購入しました。
予想した通り、とても興味深い。
2008年に島根県浜田市旭町に開設された、「島根あさひ社会復帰促進センター」という名称の、犯罪傾向の進んでいない、初犯で刑期8年までの男性が対象の「新しい刑務所」の中での更生に特化したプログラムを取り上げています。
そのプログラムはTCユニットと呼ばれ、依存症や犯罪などの問題を、当事者たちの力を使って共同体の中で解決していこうとする試みで、刑務官と教育を担当する民間の社会復帰支援員が手助けしながら、20人前後のグループで週3日、3時間ずつの授業(グループワーク)を3か月を最小単位として「1クール」行い、最低半年の参加が義務づけられており、本人の希望を確認しながら継続することもできるようになっている。
グループは2グループ、40人くらいなので、1000人を超えるそこでの収容者(さらに言うと、国内の受刑者は4万人くらいで、このプログラムが行われているのはここだけ)のうち、参加できるのはごく一部で、その他の収容者はいわゆる普通の職業訓練などのユニットに参加している。
この本を読んでみて、プロローグの中に書いてある、上映会の参加者の中から聞かれる、
スクリーンの中でサークル(円座)になって語り合う受刑者の姿を見て、「自分もあの輪の中に入って語りたい」と口にする人や「なぜ塀の外には語り合う場がないのですか?」と問いかけてくる人も多い。
といった思いをまさに感じます。
少なからず虐待やネグレクト、性被害などを受けてきて、そういったことを語る場を持たなかった受刑者たちが、徐々にお互いに信頼関係を築いていく中で、まさに一筋縄ではいかないながらも、少しずつ語るようになり、誰かが教え諭すというのではなく、自分の感情に向き合うことができるようになったり、「暴力を学び落とす」ことができるようになったりする現場が詳しく書かれています。
こういった取り組みがもっと全国的に取り組まれてほしいと感じるものの、プライバシーの問題や刑務所自体の旧態依然な体制などによる取材の難しさや、付随する様々な課題も提示されていたり、この取り組みが縮小気味だったりすることも書かれてはいます。
いずれにしても、直接的には犯罪を犯してしまった人が更生していくことはどういうことかといったことになるのでしょうが、実は日常の中でも、自分のことなどを語る場があることというのは、地続きのような気がするので、この本をきっかけに、そういったことが安心して語り合える場や雰囲気ができるといいなと思います。
おススメな本です。
追記:私は、最初に書いている通り、映画を観ることができなかったのですが、映画を観た知り合いが、自主上映をやってでも、この映画を多くの人に観てもらいたいと言っていて、本を読んでみて、その気持ちがわかる気がします。
にほんブログ村
にほんブログ村
(坂上香著、2022年、岩波書店)
2020年、横川シネマで公開された同名のドキュメンタリー映画を観たかったのですが、コロナ禍もあり、観逃してしまってずっと気になっていたところ、取材記録などその背景なども含めて書籍されたので早速購入しました。
予想した通り、とても興味深い。
2008年に島根県浜田市旭町に開設された、「島根あさひ社会復帰促進センター」という名称の、犯罪傾向の進んでいない、初犯で刑期8年までの男性が対象の「新しい刑務所」の中での更生に特化したプログラムを取り上げています。
そのプログラムはTCユニットと呼ばれ、依存症や犯罪などの問題を、当事者たちの力を使って共同体の中で解決していこうとする試みで、刑務官と教育を担当する民間の社会復帰支援員が手助けしながら、20人前後のグループで週3日、3時間ずつの授業(グループワーク)を3か月を最小単位として「1クール」行い、最低半年の参加が義務づけられており、本人の希望を確認しながら継続することもできるようになっている。
グループは2グループ、40人くらいなので、1000人を超えるそこでの収容者(さらに言うと、国内の受刑者は4万人くらいで、このプログラムが行われているのはここだけ)のうち、参加できるのはごく一部で、その他の収容者はいわゆる普通の職業訓練などのユニットに参加している。
この本を読んでみて、プロローグの中に書いてある、上映会の参加者の中から聞かれる、
スクリーンの中でサークル(円座)になって語り合う受刑者の姿を見て、「自分もあの輪の中に入って語りたい」と口にする人や「なぜ塀の外には語り合う場がないのですか?」と問いかけてくる人も多い。
といった思いをまさに感じます。
少なからず虐待やネグレクト、性被害などを受けてきて、そういったことを語る場を持たなかった受刑者たちが、徐々にお互いに信頼関係を築いていく中で、まさに一筋縄ではいかないながらも、少しずつ語るようになり、誰かが教え諭すというのではなく、自分の感情に向き合うことができるようになったり、「暴力を学び落とす」ことができるようになったりする現場が詳しく書かれています。
こういった取り組みがもっと全国的に取り組まれてほしいと感じるものの、プライバシーの問題や刑務所自体の旧態依然な体制などによる取材の難しさや、付随する様々な課題も提示されていたり、この取り組みが縮小気味だったりすることも書かれてはいます。
いずれにしても、直接的には犯罪を犯してしまった人が更生していくことはどういうことかといったことになるのでしょうが、実は日常の中でも、自分のことなどを語る場があることというのは、地続きのような気がするので、この本をきっかけに、そういったことが安心して語り合える場や雰囲気ができるといいなと思います。
おススメな本です。
追記:私は、最初に書いている通り、映画を観ることができなかったのですが、映画を観た知り合いが、自主上映をやってでも、この映画を多くの人に観てもらいたいと言っていて、本を読んでみて、その気持ちがわかる気がします。
にほんブログ村
にほんブログ村