『日本を救う未来の農業―イスラエルに学ぶICT農法』
『日本を救う未来の農業―イスラエルに学ぶICT農法』
(竹下正哲著、2019年、ちくま新書)
私は、このブログを書き始めたきっかけが、紙ベースで書いていたはたけ通信をブログにしてみては、と知り合いから声をかけられたことだったというくらい、はたけが好きです。
一方で、多くの人を支えている食料生産技術としての農業というものも知っておきたいという気持ちもあります(いい意味で、いろんな技術を使って生産性が上がることは必要なことだと思いますが、それと、自分がはたけをして感じる楽しさは別物だと思っています)。ちょっと、気を引くタイトルだったので読んでみました。
著者は、日本の農業の最大の問題点は、農家の高齢化や担い手不足、耕作放棄地、低い自給率、などではなく、補助金が使われすぎていることと、単位面積当たりの収穫量の少なさだという。その結果、関税がなくなりつつ昨今にあって、日本の農産品の価格が世界一高いレベルになってしまっていて国際的に太刀打ちできなくなってきていると。
それを解決するためには、イスラエルの農業を学ぶべきというわけです。というのも、ほとんどの場所がもともとやせた土地でしかも雨量が少ないため、農業に適していないイスラエルでは、はじめからビジネスとして農業の取り組んでおり、土作りは最初から考えず、ドリップ灌漑(肥料を含んだ水が適度に染み出すようにしたパイプによる灌漑)を基本にして、データを駆使して、必要なときに必要な栄養が吸収できるように、そして、成長をさまたげないように枝が伸びやすいような工夫をするなどによって、日本に比べて単位面積当たりの生産量が数倍に達しているとのこと。
進んだ農業と言うと、一時はやった植物工場のようなものを想像する人もいるかもしれませんが、コストがかかりすぎるということであまり広がらなかったようで、太陽光などは取り入れたりして、そういうものとは違うようですし、農薬のことはあまり詳しく書いてないものの、日本で使われているよりかなり少ない量で済んでいるようではあります(オランダなども収量が多いもののガラス張りの大きなハウスを使っており、地震や風水害の多い日本には適さないとのこと)。
著者は、実際にドリップ灌漑が雨量の多い日本でも収量増加が見込めるはずだとして、実験を行っており、これまでのところある程度の実績を上げているようですが、まだ実例としては少ないようです。
この本では、単位面積当たりの生産量のみについて書かれていて、全体でかかるコストについては書いてなかったことなど、気になる部分は何点かあったのですが、収量を高める技術はいろんな面で進化してきていることはわかります(日本では、人の手間はかかるけど、気候など、農業にとっては恵まれていて、特別なコストをかけなくても収穫できるということはあると思う)。
薬剤を使うのではなく、パッケージの中の気体の組成を変えることによって、長期にわたって鮮度が保たれる方法なども紹介されており、安全で長持ちする技術などは今後も開発されてほしいものです。

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(竹下正哲著、2019年、ちくま新書)
私は、このブログを書き始めたきっかけが、紙ベースで書いていたはたけ通信をブログにしてみては、と知り合いから声をかけられたことだったというくらい、はたけが好きです。
一方で、多くの人を支えている食料生産技術としての農業というものも知っておきたいという気持ちもあります(いい意味で、いろんな技術を使って生産性が上がることは必要なことだと思いますが、それと、自分がはたけをして感じる楽しさは別物だと思っています)。ちょっと、気を引くタイトルだったので読んでみました。
著者は、日本の農業の最大の問題点は、農家の高齢化や担い手不足、耕作放棄地、低い自給率、などではなく、補助金が使われすぎていることと、単位面積当たりの収穫量の少なさだという。その結果、関税がなくなりつつ昨今にあって、日本の農産品の価格が世界一高いレベルになってしまっていて国際的に太刀打ちできなくなってきていると。
それを解決するためには、イスラエルの農業を学ぶべきというわけです。というのも、ほとんどの場所がもともとやせた土地でしかも雨量が少ないため、農業に適していないイスラエルでは、はじめからビジネスとして農業の取り組んでおり、土作りは最初から考えず、ドリップ灌漑(肥料を含んだ水が適度に染み出すようにしたパイプによる灌漑)を基本にして、データを駆使して、必要なときに必要な栄養が吸収できるように、そして、成長をさまたげないように枝が伸びやすいような工夫をするなどによって、日本に比べて単位面積当たりの生産量が数倍に達しているとのこと。
進んだ農業と言うと、一時はやった植物工場のようなものを想像する人もいるかもしれませんが、コストがかかりすぎるということであまり広がらなかったようで、太陽光などは取り入れたりして、そういうものとは違うようですし、農薬のことはあまり詳しく書いてないものの、日本で使われているよりかなり少ない量で済んでいるようではあります(オランダなども収量が多いもののガラス張りの大きなハウスを使っており、地震や風水害の多い日本には適さないとのこと)。
著者は、実際にドリップ灌漑が雨量の多い日本でも収量増加が見込めるはずだとして、実験を行っており、これまでのところある程度の実績を上げているようですが、まだ実例としては少ないようです。
この本では、単位面積当たりの生産量のみについて書かれていて、全体でかかるコストについては書いてなかったことなど、気になる部分は何点かあったのですが、収量を高める技術はいろんな面で進化してきていることはわかります(日本では、人の手間はかかるけど、気候など、農業にとっては恵まれていて、特別なコストをかけなくても収穫できるということはあると思う)。
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