『土と生命の46億年史 土と進化の謎に迫る』
『土と生命の46億年史 土と進化の謎に迫る』
(藤井一至著、2024年、講談社ブルーバックス)
土とは、「岩石が崩壊して生成した砂や粘土と生物遺体に由来する腐植の混合物」と定義されるらしい。
土の研究者である著者は、地球が生まれた46億年前からさかのぼって、岩石の成り立ちをその構成要素である原子レベルから解き起こし、その風化によってできた微粒子である粘土が電気をおびえているために、海中にできた生命の部品たるタンパク質やアミノ酸などを引き寄せ、化学反応を手助けすることによって生命が生まれた仮説を説明し、そこから生命の歴史が、土と切っても切れない関係を築きながら発展(進化)してきたことを俯瞰させてくれます。
いろいろと興味深いことが満載の本書ですが、例えば、人体の乾燥重量で3パーセントも占め骨や脳にとって欠かせないのに、土壌中で溶出しにくい栄養素であるリンは、肥料としては家畜の骨のリサイクルから始まり、古戦場の遺骨の利用、チリ沖の島々で採掘できる海鳥の糞尿の化石であるグアノの活用に至って、それでも間に合わなくなって遂には、アフリカや中国で見つかるクジラなどの脊椎動物の骨の化石(リン鉱石)に頼ることになり、現在の私たちの身体のリンの4割はそのリン鉱石由来だとのこと(私たちの身体に含まれる窒素2キログラムの半分は化学肥料由来だとも)。
化学肥料の弊害(土中の微生物が死滅してしまったり、肥料過多になると微生物の働きが弱まったりする)や土地利用のし過ぎで土中の養分がなくなってしまうことを懸念している著者は、人工土壌ができないかという研究をしていて、土壌の本質を「超多様性と超個体という性格をあわせ持つ微生物群衆が有機物を循環させながら腐植を作り、砂、粘土と相互作用を展開しながら立体構造(団粒など)を作る自立的、持続的な生物と鉱物の集合体」としていて、「大脳を司る100億個の神経細胞の相互作用と大さじ1杯の土の100億個の最近の相互作用。多様な細胞があたかも知性を持つように臨機応変に機能する超高度な知性を、私は脳と土しか知らない」。とまで言っていて面白い。

にほんブログ村

にほんブログ村
(藤井一至著、2024年、講談社ブルーバックス)
土とは、「岩石が崩壊して生成した砂や粘土と生物遺体に由来する腐植の混合物」と定義されるらしい。
土の研究者である著者は、地球が生まれた46億年前からさかのぼって、岩石の成り立ちをその構成要素である原子レベルから解き起こし、その風化によってできた微粒子である粘土が電気をおびえているために、海中にできた生命の部品たるタンパク質やアミノ酸などを引き寄せ、化学反応を手助けすることによって生命が生まれた仮説を説明し、そこから生命の歴史が、土と切っても切れない関係を築きながら発展(進化)してきたことを俯瞰させてくれます。
いろいろと興味深いことが満載の本書ですが、例えば、人体の乾燥重量で3パーセントも占め骨や脳にとって欠かせないのに、土壌中で溶出しにくい栄養素であるリンは、肥料としては家畜の骨のリサイクルから始まり、古戦場の遺骨の利用、チリ沖の島々で採掘できる海鳥の糞尿の化石であるグアノの活用に至って、それでも間に合わなくなって遂には、アフリカや中国で見つかるクジラなどの脊椎動物の骨の化石(リン鉱石)に頼ることになり、現在の私たちの身体のリンの4割はそのリン鉱石由来だとのこと(私たちの身体に含まれる窒素2キログラムの半分は化学肥料由来だとも)。
化学肥料の弊害(土中の微生物が死滅してしまったり、肥料過多になると微生物の働きが弱まったりする)や土地利用のし過ぎで土中の養分がなくなってしまうことを懸念している著者は、人工土壌ができないかという研究をしていて、土壌の本質を「超多様性と超個体という性格をあわせ持つ微生物群衆が有機物を循環させながら腐植を作り、砂、粘土と相互作用を展開しながら立体構造(団粒など)を作る自立的、持続的な生物と鉱物の集合体」としていて、「大脳を司る100億個の神経細胞の相互作用と大さじ1杯の土の100億個の最近の相互作用。多様な細胞があたかも知性を持つように臨機応変に機能する超高度な知性を、私は脳と土しか知らない」。とまで言っていて面白い。

にほんブログ村

にほんブログ村