『迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか』
『迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか』(シャロン・モレアムwithジョナサン・プリンス著、NHK出版、2007年)
進化によって、有害な病気をおこすような遺伝子は淘汰してなくなるのではないかと思われるのになぜ?この疑問にいろいろな実例や実験結果を示して答えていくというお話で、少し難しいですがとっても面白い。
その中でも一番印象に残ったのは、「第5章 僕たちはウィルスにあやつられている?」です。細菌やウィルスや寄生虫というものを、私たちは一般に忌み嫌いますが、実際には、彼らと私たち(というかみんな含めて、私たち)は長年共存していて、お互いに補完しあいながら日々進化をしています。細菌やウィルスは比較的単純な作りなので、世代交代が早く、進化の速度が速いので、環境の変化に対応しやすい。その変わり身の早さを利用して私たち(の遺伝子)も進化しているということがあるらしいのです。そして、現代の私たちは、そういった仕組みを知ることによって、病気とうまくやていくことだってできるはずだと言うのです。
例えば、病原体は宿主(人)の中で繁殖するわけですが、生き残っていくためには次の宿主に移っていかないといけません。その手段によって、毒力がちがうのだそうです。宿主どうしが直接接触したり、近づいたときに空気を介して移るようなカゼなどは、宿主が動き回れるくらい元気なほうが以降に有利なので病状は不愉快だけど危険というほどではありません。一方、コレラを起こす病原体は、激しい下痢を起こさせ、下水と飲料水が混ざるような非衛生的な状況であれば、宿主が動き回らなくても簡単に新しい宿主に乗り移ることができるので毒力が強いと考えられています。であれば、衛生状態をよくして、瀕死の状態で下痢をさせただけでは、新しい宿主にたどりつけないようにしてやれば、毒性を弱めて宿主が動き回ってもらえるように進化するのではないか。そして、実際に、1991年にペルーでコレラが大流行したとき、下水道の整備の進んでいたチリにコレラが広がっていったとき、コレラの毒性は弱まって、ほとんど死者を出さずに済んだそうです。テロに対して、一所懸命テロで対応しようとしていたり、その協力ばかりしているどこかの国の人に教えてあげたい話ですよね。最後に本の中に載っていた言葉を引用します。
人間が細菌に抗生物質という武器を使うと、細菌は抗生物質に負けない武器を進化させる。人間が別の武器を使うと、細菌はそれをまた出し抜く。それが永遠に繰り返される。こんな軍拡競争にかかわるのはもうやめよう。それよりも人間と細菌がともに共存できる「落としどころ」となる合意点を想定して、細菌が合意点に向かって自由に進化できるような環境を人間が整えてやればいいのではないか。(by進化生物学の先駆者 ポール・イーワルド)
進化によって、有害な病気をおこすような遺伝子は淘汰してなくなるのではないかと思われるのになぜ?この疑問にいろいろな実例や実験結果を示して答えていくというお話で、少し難しいですがとっても面白い。
その中でも一番印象に残ったのは、「第5章 僕たちはウィルスにあやつられている?」です。細菌やウィルスや寄生虫というものを、私たちは一般に忌み嫌いますが、実際には、彼らと私たち(というかみんな含めて、私たち)は長年共存していて、お互いに補完しあいながら日々進化をしています。細菌やウィルスは比較的単純な作りなので、世代交代が早く、進化の速度が速いので、環境の変化に対応しやすい。その変わり身の早さを利用して私たち(の遺伝子)も進化しているということがあるらしいのです。そして、現代の私たちは、そういった仕組みを知ることによって、病気とうまくやていくことだってできるはずだと言うのです。
例えば、病原体は宿主(人)の中で繁殖するわけですが、生き残っていくためには次の宿主に移っていかないといけません。その手段によって、毒力がちがうのだそうです。宿主どうしが直接接触したり、近づいたときに空気を介して移るようなカゼなどは、宿主が動き回れるくらい元気なほうが以降に有利なので病状は不愉快だけど危険というほどではありません。一方、コレラを起こす病原体は、激しい下痢を起こさせ、下水と飲料水が混ざるような非衛生的な状況であれば、宿主が動き回らなくても簡単に新しい宿主に乗り移ることができるので毒力が強いと考えられています。であれば、衛生状態をよくして、瀕死の状態で下痢をさせただけでは、新しい宿主にたどりつけないようにしてやれば、毒性を弱めて宿主が動き回ってもらえるように進化するのではないか。そして、実際に、1991年にペルーでコレラが大流行したとき、下水道の整備の進んでいたチリにコレラが広がっていったとき、コレラの毒性は弱まって、ほとんど死者を出さずに済んだそうです。テロに対して、一所懸命テロで対応しようとしていたり、その協力ばかりしているどこかの国の人に教えてあげたい話ですよね。最後に本の中に載っていた言葉を引用します。
人間が細菌に抗生物質という武器を使うと、細菌は抗生物質に負けない武器を進化させる。人間が別の武器を使うと、細菌はそれをまた出し抜く。それが永遠に繰り返される。こんな軍拡競争にかかわるのはもうやめよう。それよりも人間と細菌がともに共存できる「落としどころ」となる合意点を想定して、細菌が合意点に向かって自由に進化できるような環境を人間が整えてやればいいのではないか。(by進化生物学の先駆者 ポール・イーワルド)