『現代手芸考 ものづくりの意味を問い直す』
『現代手芸考 ものづくりの意味を問い直す』(上羽陽子・山崎明子編、2020年、フィルムアート社)
私としては、こういう本を待っていました。
というのも、去年はコロナ禍で、ほとんど開催されなかったこともあり行っていないのですけど、近年全国で盛り上がっているハンドメイド作品のフリーマーケット(とか、マルシェとか言ってたりします)に行くのが好きですし(作家さんと話をするのが楽しい)、ものづくりで起業している知り合いもいたりと、ものづくりについていろいろと気になっていることが多いので(私自身は、たまに思いついて小物を作る程度)。
なんとなく思ってはいたのですが、日本においては、美術←工芸←手芸という階層があって、手芸は低く見られている雰囲気があるのは、やはりそういう面はあって、手芸自体は、明治初めに学制が敷かれたときに、女児小学に「手芸」という科目名が使われるようになってから本格的に使われるようになり(それまではお細工ものなどと呼ばれていた)、それは、生産技能や学識が男性に優先的に与えられた時代にあって、女性がモノをつくり稼ぎだすための技術としてあったこと、そして、高度成長期に家電品の普及などによって家事労働から解放されてきた主婦が、新たに作られた家庭像の中で、自分とその家族が暮らす家庭を素敵な空間にするために手芸にいそしむという面があったこと、2000年以降は、豊かな素材供給と自由な市場形成が出来上がり、「ハンドメイド」と呼称を変えて、製品のクオリティよりもセンス、技術よりもつくり手の想いが重要となってきて現在に至っていると。
そして、手芸的なるものが研究対象となっていなかったことから、博物館・美術館や美術系大学の研究者や編集者、文筆家などに声をかけて研究会を立ち上げて、議論を重ねる中で、手芸的なものを俯瞰していくために、「つくる×技術」「教える×伝承」「仕分ける×アイデンティティ」「稼ぐ×社会階層」「飾る×自己実現」「つながる×社会空間」という6つのテーマについて共同で書き進めています。
各章が、まずその章のテーマについての十数ページ分の論文的なひとまとまりの文章があり、次に、話題づくり的な3、4ページのコラムが3、4本、そして十数ページ程度の対談という作りになっていて、読みやすいいい構成になっている。
「あとがきにかえて」と最後に2人の編集者のミニ対談になっているところで、「本書が手芸的なるものに関わる人たちの思考の糸口になるといいですね」とあって、少なくとも私にとっては、まさにその通りの本となっています。一定の結論を出す、というより、こういう論点がありますよねという感じですが、いろいろ考えるヒントになります。
もちろん、ハンドメイドは、四の五の言わずに単純に楽しめばいいものだ、とも思ってはいるんですけど。
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私としては、こういう本を待っていました。
というのも、去年はコロナ禍で、ほとんど開催されなかったこともあり行っていないのですけど、近年全国で盛り上がっているハンドメイド作品のフリーマーケット(とか、マルシェとか言ってたりします)に行くのが好きですし(作家さんと話をするのが楽しい)、ものづくりで起業している知り合いもいたりと、ものづくりについていろいろと気になっていることが多いので(私自身は、たまに思いついて小物を作る程度)。
なんとなく思ってはいたのですが、日本においては、美術←工芸←手芸という階層があって、手芸は低く見られている雰囲気があるのは、やはりそういう面はあって、手芸自体は、明治初めに学制が敷かれたときに、女児小学に「手芸」という科目名が使われるようになってから本格的に使われるようになり(それまではお細工ものなどと呼ばれていた)、それは、生産技能や学識が男性に優先的に与えられた時代にあって、女性がモノをつくり稼ぎだすための技術としてあったこと、そして、高度成長期に家電品の普及などによって家事労働から解放されてきた主婦が、新たに作られた家庭像の中で、自分とその家族が暮らす家庭を素敵な空間にするために手芸にいそしむという面があったこと、2000年以降は、豊かな素材供給と自由な市場形成が出来上がり、「ハンドメイド」と呼称を変えて、製品のクオリティよりもセンス、技術よりもつくり手の想いが重要となってきて現在に至っていると。
そして、手芸的なるものが研究対象となっていなかったことから、博物館・美術館や美術系大学の研究者や編集者、文筆家などに声をかけて研究会を立ち上げて、議論を重ねる中で、手芸的なものを俯瞰していくために、「つくる×技術」「教える×伝承」「仕分ける×アイデンティティ」「稼ぐ×社会階層」「飾る×自己実現」「つながる×社会空間」という6つのテーマについて共同で書き進めています。
各章が、まずその章のテーマについての十数ページ分の論文的なひとまとまりの文章があり、次に、話題づくり的な3、4ページのコラムが3、4本、そして十数ページ程度の対談という作りになっていて、読みやすいいい構成になっている。
「あとがきにかえて」と最後に2人の編集者のミニ対談になっているところで、「本書が手芸的なるものに関わる人たちの思考の糸口になるといいですね」とあって、少なくとも私にとっては、まさにその通りの本となっています。一定の結論を出す、というより、こういう論点がありますよねという感じですが、いろいろ考えるヒントになります。
もちろん、ハンドメイドは、四の五の言わずに単純に楽しめばいいものだ、とも思ってはいるんですけど。
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