『感染症 広がり方と防ぎ方 増補版』
『感染症 広がり方と防ぎ方 増補版』
(井上栄著、2006年、2020年増補、中公新書)
2003年に書かれた本ですが、今回の新型コロナウイルス流行を受けて、「新型ウイルスが広がりにくい社会」という補章を加えて発行された本。
感染症についての基本的なことがわかりやすく書いてあります。
印象に残ったことをメモしておくと、
ヒトは、自分の遺伝子に変化が起こらなくても、生活様式、行動様式をどんどん変えてきたが、病原体は、人間の行動様式に対して自分の遺伝子を変化させてそれに対応してきた。(上下水道が完備されて衛生環境がよくなると、糞便では感染が広がらなくなるので、咳や嘔吐が起こるような病状になるように変化して、感染を広げ、自分の生存領域を増やすようにするとか)
日本は、生活様式が清潔なので感染が広がりにくいということはよく言われますが、日本語をしゃべるときの風圧も比較的少ないというのも要因の中にあるらしい。
O157菌は昔からあったが、牛が本来の草を食べていた時はそれほど多くなかったが、(より効率よく太らせるために)穀類を与えるようになって菌量が増えたという監察結果がある。
ウイルスのワクチンを受けた人も時間が経過すると免疫が低下してしまうが、野生株ウイルス(自然界にいるウイルス?)に軽く自然感染することによって、症状は出ないが免疫が強められることがある。
動物はそれぞれ固有のウイルスと共存していて、その状態では問題を起こさないが、ほかの動物の体内に入ると病気を起こすウイルスがあり、結果として他の動物から守る働きをしているものもある。
ウイルスのなかには、体の特定の組織にのみ増殖するものと、全身で増殖するものがあるが、特に肺の中で直接ガス交換をしている(酸素を取り入れ二酸化炭素を排出する)肺胞という部位で増殖すると、炎症が起こって滲出液によって肺胞がふさがれ、おぼれた状態になってしまうので重篤化してしまう可能性が高い(新型コロナウイルスもそのようです)。
エイズなどに性感染症については、コンドームがシンプルながら効果の高い予防策で、日本は諸外国に比べて、使用率が高かったが、その文化が薄れつつある。
ウイルス感染の予防策には、やはり、抗ウイルス剤の備蓄、ワクチンの開発、マスクの着用、学校・職場の閉鎖、集会制限、地域間の人の移動制限などが重要。
そして、ウイルスが話題になっているこの機会に、昨年読んだ『ウイルスの意味論 生命の定義を超えた存在』(山内一也著、2018年、みすず書房)を読み返してみました。
裏表紙に書いてある宣伝文句が端的にこの本の魅力を表しているので、一部を抜粋すると、
「一部のウイルスは、たびたび世界的流行を引き起こしてきた、ただしそれは、人類がウイルスを本来の宿主から引き離し、都市という居場所を与えた結果でもある。本来の宿主と共にあるとき、ウイルスは「守護者」にもなりうる。あるものは宿主を献身的に育て上げ、またあるものは宿主に新たな能力を与えている。私たちのDNAにもウイルスの遺伝情報が大量に組み込まれており、一部は生命活動にかかわっている。
ウイルスの生態を知れば知るほど、生と死の、生物と無生物の、共生と敵対の境界が曖昧になっていく。読むほどに生物学の根幹にかかわる問に導かれていく一冊。」
細菌にしてもウイルスにしても、病気を起こす厄介なものとしてまず研究が進んだ歴史があるけれども、ともに見えなかっただけで、協力して共存している生物界の一員であり、特に、ウイルスの全般的なことに関しては、2000年代以降に急速に研究が進んでいて、どんどん新しい発見がなされていることがわかります。

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(井上栄著、2006年、2020年増補、中公新書)
2003年に書かれた本ですが、今回の新型コロナウイルス流行を受けて、「新型ウイルスが広がりにくい社会」という補章を加えて発行された本。
感染症についての基本的なことがわかりやすく書いてあります。
印象に残ったことをメモしておくと、
ヒトは、自分の遺伝子に変化が起こらなくても、生活様式、行動様式をどんどん変えてきたが、病原体は、人間の行動様式に対して自分の遺伝子を変化させてそれに対応してきた。(上下水道が完備されて衛生環境がよくなると、糞便では感染が広がらなくなるので、咳や嘔吐が起こるような病状になるように変化して、感染を広げ、自分の生存領域を増やすようにするとか)
日本は、生活様式が清潔なので感染が広がりにくいということはよく言われますが、日本語をしゃべるときの風圧も比較的少ないというのも要因の中にあるらしい。
O157菌は昔からあったが、牛が本来の草を食べていた時はそれほど多くなかったが、(より効率よく太らせるために)穀類を与えるようになって菌量が増えたという監察結果がある。
ウイルスのワクチンを受けた人も時間が経過すると免疫が低下してしまうが、野生株ウイルス(自然界にいるウイルス?)に軽く自然感染することによって、症状は出ないが免疫が強められることがある。
動物はそれぞれ固有のウイルスと共存していて、その状態では問題を起こさないが、ほかの動物の体内に入ると病気を起こすウイルスがあり、結果として他の動物から守る働きをしているものもある。
ウイルスのなかには、体の特定の組織にのみ増殖するものと、全身で増殖するものがあるが、特に肺の中で直接ガス交換をしている(酸素を取り入れ二酸化炭素を排出する)肺胞という部位で増殖すると、炎症が起こって滲出液によって肺胞がふさがれ、おぼれた状態になってしまうので重篤化してしまう可能性が高い(新型コロナウイルスもそのようです)。
エイズなどに性感染症については、コンドームがシンプルながら効果の高い予防策で、日本は諸外国に比べて、使用率が高かったが、その文化が薄れつつある。
ウイルス感染の予防策には、やはり、抗ウイルス剤の備蓄、ワクチンの開発、マスクの着用、学校・職場の閉鎖、集会制限、地域間の人の移動制限などが重要。
そして、ウイルスが話題になっているこの機会に、昨年読んだ『ウイルスの意味論 生命の定義を超えた存在』(山内一也著、2018年、みすず書房)を読み返してみました。
裏表紙に書いてある宣伝文句が端的にこの本の魅力を表しているので、一部を抜粋すると、
「一部のウイルスは、たびたび世界的流行を引き起こしてきた、ただしそれは、人類がウイルスを本来の宿主から引き離し、都市という居場所を与えた結果でもある。本来の宿主と共にあるとき、ウイルスは「守護者」にもなりうる。あるものは宿主を献身的に育て上げ、またあるものは宿主に新たな能力を与えている。私たちのDNAにもウイルスの遺伝情報が大量に組み込まれており、一部は生命活動にかかわっている。
ウイルスの生態を知れば知るほど、生と死の、生物と無生物の、共生と敵対の境界が曖昧になっていく。読むほどに生物学の根幹にかかわる問に導かれていく一冊。」
細菌にしてもウイルスにしても、病気を起こす厄介なものとしてまず研究が進んだ歴史があるけれども、ともに見えなかっただけで、協力して共存している生物界の一員であり、特に、ウイルスの全般的なことに関しては、2000年代以降に急速に研究が進んでいて、どんどん新しい発見がなされていることがわかります。

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タグ:新型コロナウイルス