『タネが危ない』
『タネが危ない』(野口勲著、2011年、日本経済新聞出版社)
種子法が廃止になったり、種苗法が改正になって大変とか、いろいろうわさは聞くものの、実際のところどうなのか、いまいちわかっていないので、ちゃんと調べなきゃと思って、まずは読んでみた本。
ただ、この本には、種子法や種苗法のこと自体はほとんど出てきません。現在流通しているタネについての基本的なことがわかります。
著者は、手塚治虫さんのマンガに惚れ込んで、『火の鳥』の編集に携わり、のちに実家の老舗タネ屋を継いで、固定種にこだわっている野口さん。
現在流通している野菜のタネには大きく、固定種とF1種(一代雑種、交配種)があり、それぞれ以下のような特徴があると書いてあります。
・固定種
地域で何世代にもわたって育てられ、自家採種を繰り返すことによって、その土地の環境に適応するよう遺伝的に安定していった品種。
・F1種(一代雑種、交配種)
異なる性質のタネを人工的に掛け合わせて作った雑種の一代目。現在世の中に流通している野菜や花のタネの多くがF1。
F1種は、異なる品種を掛け合わせてできる一代目のタネが、遺伝子の中の顕性(2017年以前は優性と言っていたが必ずしも優れているわけではないので、優性・劣性を、顕性・潜性と言い換えようということになっています)の性質が必ず出ることを利用していて、大きさや収穫時期がそろうため、規格を合わせて出荷をする農家にとっては都合がいいので、流行っている。あくまで出荷に都合がいいだけで、かならずしも味がいいというわけではない。さらに、二代目以降は、いろんな性質がでてくるため、自家採種に向かないため、毎年タネを買わざるを得ないことになる。
F1種にするには、雌しべに別の品種の雄しべの花粉をつけて受粉させるわけですが、野菜の種類によって、自家受粉するもの、雄花と雌花が別々に咲くもの、自家不和性があるものなどいろいろあるので、それぞれ違った方法が考えられてきていて、さらには「雄性不稔(ゆうせいふねん)」という雄しべができない遺伝子の異変を活用する方法などがあることについて書いてあります。
なお、2007年にヨーロッパやアメリカで起こったミツバチの突然の消滅現象について、その原因にはいろんな説があるようですが、野口さんは、雄性不稔を活用したF1種の作成に大量のミツバチが利用されていることを疑っていて、その説も興味深い。
固定種のほうは、大きさも収穫時期もまちまちになるため、大量生産には向かないけど、自家採種によって、徐々にその土地にあった品種になっていくと言うメリットがあるようです。そのためには、よくできた野菜を選抜して、そこからできるタネを採って植えるということの繰り返しを行うわけです。つまり、自家採種自体が品種改良の過程だったのですね。私もたまに自家採種をしますが、そういう視点があまりなかったのでちょっと反省。
固定種は、大量に生産する必要のない家庭菜園に向いているとのことで、今後それぞれの地域にあった固定種を守っていくのも、家庭菜園(趣味のはたけ)の一つの役目なのかもと思った次第です。
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種子法が廃止になったり、種苗法が改正になって大変とか、いろいろうわさは聞くものの、実際のところどうなのか、いまいちわかっていないので、ちゃんと調べなきゃと思って、まずは読んでみた本。
ただ、この本には、種子法や種苗法のこと自体はほとんど出てきません。現在流通しているタネについての基本的なことがわかります。
著者は、手塚治虫さんのマンガに惚れ込んで、『火の鳥』の編集に携わり、のちに実家の老舗タネ屋を継いで、固定種にこだわっている野口さん。
現在流通している野菜のタネには大きく、固定種とF1種(一代雑種、交配種)があり、それぞれ以下のような特徴があると書いてあります。
・固定種
地域で何世代にもわたって育てられ、自家採種を繰り返すことによって、その土地の環境に適応するよう遺伝的に安定していった品種。
・F1種(一代雑種、交配種)
異なる性質のタネを人工的に掛け合わせて作った雑種の一代目。現在世の中に流通している野菜や花のタネの多くがF1。
F1種は、異なる品種を掛け合わせてできる一代目のタネが、遺伝子の中の顕性(2017年以前は優性と言っていたが必ずしも優れているわけではないので、優性・劣性を、顕性・潜性と言い換えようということになっています)の性質が必ず出ることを利用していて、大きさや収穫時期がそろうため、規格を合わせて出荷をする農家にとっては都合がいいので、流行っている。あくまで出荷に都合がいいだけで、かならずしも味がいいというわけではない。さらに、二代目以降は、いろんな性質がでてくるため、自家採種に向かないため、毎年タネを買わざるを得ないことになる。
F1種にするには、雌しべに別の品種の雄しべの花粉をつけて受粉させるわけですが、野菜の種類によって、自家受粉するもの、雄花と雌花が別々に咲くもの、自家不和性があるものなどいろいろあるので、それぞれ違った方法が考えられてきていて、さらには「雄性不稔(ゆうせいふねん)」という雄しべができない遺伝子の異変を活用する方法などがあることについて書いてあります。
なお、2007年にヨーロッパやアメリカで起こったミツバチの突然の消滅現象について、その原因にはいろんな説があるようですが、野口さんは、雄性不稔を活用したF1種の作成に大量のミツバチが利用されていることを疑っていて、その説も興味深い。
固定種のほうは、大きさも収穫時期もまちまちになるため、大量生産には向かないけど、自家採種によって、徐々にその土地にあった品種になっていくと言うメリットがあるようです。そのためには、よくできた野菜を選抜して、そこからできるタネを採って植えるということの繰り返しを行うわけです。つまり、自家採種自体が品種改良の過程だったのですね。私もたまに自家採種をしますが、そういう視点があまりなかったのでちょっと反省。
固定種は、大量に生産する必要のない家庭菜園に向いているとのことで、今後それぞれの地域にあった固定種を守っていくのも、家庭菜園(趣味のはたけ)の一つの役目なのかもと思った次第です。
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