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台風の被害、台風の上陸とは、風土とは―命名という権威(その4) [2012年10月31日(Wed)]

<承前>

ハリケーン・サンディに関する検索が多く、中でも「上陸」地点や被害、そうしたものの日本の台風との違いが探られているようなので、元々の記事にも関連するので、とりあえず、関係する用語の紹介をしておきたい。

今回のハリケーン・サンディに関しては、報道によって「landfall 上陸」を巡る意味が微妙に違って伝わっているように感じられる。

公式には、台風の「center 中心」が海域から陸域に上陸した地点と時点をいうときに「landfall 上陸」が日本同様使われる。

台風の「 eye 目」、「台風の中心」、「衛星写真の雲の有無」等の扱い方や理解に報道等での初歩的な混乱と見られるもの以上に表現が微妙になる原因はいくつかあるようだ。

そもそもの定義として「台風の中心」とは、 pressure 気圧が最低、もしくは、wind 風速が最低の地点とされていることだ。

このことは、観測のメッシュが細かいか荒いかによっても左右されるし、観測のメッシュが一様に均一でないことも難しさの原因になる。

また、そもそもこうしたことが当該台風の「安定性」によって、或いは、「上陸」前後の高度や地形によって揺れ動き、観測方法、観測時点の頻度、解析や決定の頻度によっても違いが出ることもある。

さらに、気圧や風の谷が垂直、鉛直に真っ直ぐに一様であるとは限らない。気圧や風の谷が曲がっていて、水平的に同一地点で同一時点であっても、高度によって、つまりは地表と空中との間で、すれが生じることがあることだ。そうしたこともあって、下記に引用した当局による「用語集」でも、注意法用には地表のものを使っていると注意喚起しているくらいだ。因みに、台風は、こうした台風の中心部が鉛直方向に谷になることが特徴的であるが、まさに、上陸が故に、風前の灯の揺らぎが生じることもあるようだ。

もう一つは、上陸地点や時点から想定できるものが、当該台風の性格はもとより、大きく言えば陸域への侵入地点によって違うからだ。

さらに留意しなければならないのは、迷走する場合や、かすめる場合は、それはそれで、上陸の決定が難しいが、多くの場合、大陸への台風の上陸は水分を失ったり、勢いがそがれたりで、島嶼群と違って、減衰し、程度や時間差があるにしても、台風の中心どころか、台風でなくなること、消滅することを意味することだ。

翻って、日本列島のような細長い地域で、かつ、多くの台風を経験していると、台風が「縦断」とか「横断」とかして、列島を東西に通過するか、南北に通過していくかによって、それぞれの地点で反時計回りの雨と風がどの方向からどのくらい来襲するか、伝える側も伝え聞く側も、「台風の中心」の動きによって予測できる社会として慣れている。

一般的に、北半球の台風は、大きくみると発生後、南から北へ動くが、同時に東から西に動き途中から西から東に方向転換する。その途中のどこの地点で陸域に遭遇するかによって、減衰して消滅したり、通過して水分を失ったりするかによって、人間の居住地での受け止め方が違う

そういった意味で、米国の場合、北米大陸、米国の東側での台風、ハリケーンの上陸の多くは基本的に、フロリダ半島の西側のメキシコ湾を南東から北西に入るか、フロリダ半島にいずれかの側をほぼ南北に縦断していくか、今回のような少ない例として、東西の方向転換がらみで、北大西洋の西側の沿岸近辺、いわゆる東海岸を北上するかだ。

フロリダ半島は本州の2/3くらいの大きさで、緯度や半島の大きさや人間の居住地の違いもあるので、あくまで、違いがあるという事例として次のように日本の様々な台風への実感の違いからも類推できると思う。

日本列島本州での紀伊半島、伊豆半島、房総半島等のどちら側から、台風が、どの方向から、どの程度の勢い「上陸」するか「通過」するかによって、いずれかの半島や伊勢湾、静岡沿岸、駿河湾、相模湾、東京湾、千葉、茨城、宮城、岩手の太平洋岸等での雨風、「被災」、の内容、強弱、継続時間に違いがある。

広く日本社会ではそうした違いがあることが幾度となく「経験」され「理解」されていることが米国東海岸との違いかもしれない。

今回は、米国東部では、稀な方の、北でのケースであるため、大勢である南でのケースの知識や経験とが混じり合い報道はもとより、行政、あるいは住民の受け止め方、態勢自体に、不慣れもしくは混乱が生じているようだ。

本記事の最後に、米国の National Hurricane Center の用語集での関連用語の大切を原文のまま引用したい。

Landfall:
The intersection of the surface center of a tropical cyclone with a coastline. Because the strongest winds in a tropical cyclone are not located precisely at the center, it is possible for a cyclone's strongest winds to be experienced over land even if landfall does not occur. Similarly, it is possible for a tropical cyclone to make landfall and have its strongest winds remain over the water. Compare direct hit, indirect hit, and strike.

Center:
Generally speaking, the vertical axis of a tropical cyclone, usually defined by the location of minimum wind or minimum pressure. The cyclone center position can vary with altitude. In advisory products, refers to the center position at the surface.

Center / Vortex Fix:
The location of the center of a tropical or subtropical cyclone obtained by reconnaissance aircraft penetration, satellite, radar, or synoptic data.

Direct Hit:
A close approach of a tropical cyclone to a particular location. For locations on the left-hand side of a tropical cyclone's track (looking in the direction of motion), a direct hit occurs when the cyclone passes to within a distance equal to the cyclone's radius of maximum wind. For locations on the right-hand side of the track, a direct hit occurs when the cyclone passes to within a distance equal to twice the radius of maximum wind. Compare indirect hit, strike.

Indirect Hit:
Generally refers to locations that do not experience a direct hit from a tropical cyclone, but do experience hurricane force winds (either sustained or gusts) or tides of at least 4 feet above normal.

Strike:
For any particular location, a hurricane strike occurs if that location passes within the hurricane's strike circle, a circle of 125 n mi diameter, centered 12.5 n mi to the right of the hurricane center (looking in the direction of motion). This circle is meant to depict the typical extent of hurricane force winds, which are approximately 75 n mi to the right of the center and 50 n mi to the left.

Eyewall / Wall Cloud:
An organized band or ring of cumulonimbus clouds that surround the eye, or light-wind center of a tropical cyclone. Eyewall and wall cloud are used synonymously.

続く
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