ハリケーン・サンディ、台風の名付け親・ゴッドファーザー、命名という権威(その1) [2012年10月28日(Sun)]
超大型台風が北大西洋北西岸、つまりは米国東海岸に近付いている。ワシントンDCからニューヨーク辺に上陸するといわれている観測史上最大級のハリケーン「サンディ」だ。
Sandy なので、アルファベットで (Q、Uを除く) 19番目の S で始まるから、日本だったら台風19号というところだ。 かの Hurricane Katrina ハリケーン・カトリーナは2005年のアルファベットで11番目の K すなわちハリケーン11号だった。 次のように、米国のハリケーンの名前は既に将来の名称も各年毎に21号まで「決まっている」。 2012 2013 2014 2015 2016 2017 Alberto Andrea Arthur Ana Alex Arlene Beryl Barry Bertha Bill Bonnie Bret Chris Chantal Cristobal Claudette Colin Cindy Debby Dorian Dolly Danny Danielle Don Ernesto Erin Edouard Erika Earl Emily Florence Fernand Fay Fred Fiona Franklin Gordon Gabrielle Gonzalo Grace Gaston Gert Helene Humberto Hanna Henri Hermine Harvey Isaac Ingrid Isaias Ida Ian Irma Joyce Jerry Josephine Joaquin Julia Jose Kirk Karen Kyle Kate Karl Katia Leslie Lorenzo Laura Larry Lisa Lee Michael Melissa Marco Mindy Matthew Maria Nadine Nestor Nana Nicholas Nicole Nate Oscar Olga Omar Odette Otto Ophelia Patty Pablo Paulette Peter Paula Philippe Rafael Rebekah Rene Rose Richard Rina Sandy Sebastien Sally Sam Shary Sean Tony Tanya Teddy Teresa Tobias Tammy Valerie Van Vicky Victor Virginie Vince William Wendy Wilfred Wanda Walter Whitney さて、米紙では、「Hurricane Sandy」が一番多く使われている一方、恐ろしいハリケーンとして「Frankenstorm」も一部で使われ、「Winter Storm Athena」という呼称が「却下」されたと伝えている。 「冬の嵐のアテナ」つまり「冬の嵐1号」という名称が却下されたのは、サンディが「冬の嵐」ではなく今年、 Alberto の第1号で始まった「ハリケーン」の続きと判定されたからだ。 今回は、誰がこうした名称を「決めている」のか、「却下」しているのかを紹介しながら、「NPOのようなもの」のはたらきを探っていきたい。 北大西洋のハリケーンが人名を援用しているのは、第二次大戦中の米軍太平洋部隊の太平洋の台風の愛称をアルファベット順に女性名称にしたことに由来している。後述のようにかつて占領米軍の名残があった頃は勿論日本全土でも、そして現在でも、在日米軍を中心に、無機質な数字でない、そうした名称が聞かれる。 では、まず、こうしたものの「頂上」組織から。 こうした気象関係の国際組織、つまりは国際的政府間組織の嚆矢の一つといえるのが、IMO だ。 International Meteorological Organization 国際気象機関だ。 その前に、今日、国際的組織で IMO というと、一般的に、ロンドンに本部をおく International Maritime Organization 国際海事機関、170カ国が加盟している、国連=国際連合の専門機関のこと。 詳しくは別に譲りたいが、簡単にこちらをまず紹介しておきたい。 こちら「海」の組織の IMO は、元は第二次大戦中の1948年に連合国間で発議された、IMCO =Inter-Governmental Maritime Consultative Organization 政府間海事協議機構が1982年に改称したもの。さらに遡ると、1914年の最初の「International Convention for the Safety of Life at Sea (SOLAS) 海上における人命の安全のための国際条約」に遡る。この条約は1912年のかの RMS Titanic タイタニック号の惨状への反省から生まれたものだ。因みに RMS は Royal Mail Ship の略で元々は、英国の Royal Mail の船便を請け負う船が誇り高くつけたもの。俗に言えば「御用達」の「郵船」だ。Royal Mailは英国国教会をつくったヘンリー8世の1516年に遡る。 国家的システムと郵便事業、国際的システムと郵船事業は密接不可分な関係にあり、本ブログでテーマとしているNPOのようなものを考察する上で、歴史的にも重要なものだ。 東インド会社のような政府そのものを請け負う特許会社が「ぎらつく」程ではないが、国家的規模の郵便事業は日本での「小泉改革」の諸論議をみるまでもなく、多くのテーマが潜んでいる。一国内でみただけでも切手といった準通貨、郵便為替といった準政府的為替、特定郵便局といった準地方組織、といったことから通信の自由、信書の秘密等々話題がつきない。 そもそも、IMO の発端である SOLAS 条約は、 a.船舶には、全員が乗船できるだけの救命艇を備え、航海中救命訓練を実施すること b.船舶には、モールス無線電信を設置し、500kHzの遭難周波数を24時間聴守する無線当直を行い、そのための通信士を乗船させなければならないこと c.北大西洋の航路で流氷の監視を行うこと d.船客の等級による救出順序を廃止すること を決めたもの。 つまり、災害時の国際的取り決め、無線通信の国際的プロトコルの嚆矢だ。 海というものは、これまでこのブログではあえてあまり触れてこなかったが、「国際公共財」のなかでも、「国際的」というよりは「無政府的・国家間隙的」な「公共財」といえる大きなテーマだ。私権も公権も及ばない、私権も公権も乱用し得るところ、つまり所有者、管理者なき海、公海が大半の海では、否応もなく「NPOのようなもの」の存在を必然にしている。 例えば、島の名称や島であるか否かがよく話題になるが、こうした問題の根幹では、国連の地名会議決議によって、「 General Bathymetric Chart of the Oceans (GEBCO) = 大洋水深総図」という「NPO組織」の小委員会 (SCUFN) と政府間機関、UNGEGN =国連地名専門家グループのワーキング・グループ (WGMUF) によって、「Standardization of Undersea Feature Names 海底地形名標準」が作成されている。これが実態としての海の地名、呼称法の「世界標準」になっている。この GEBCO には、アルベール一世というモナコの大公が設立に関わっている。欧州域内でNPOの発展に、王族たちの「私的」な熱意や努力がいかに貢献しているかの典型例でいずれ仔細に紹介したい。 気象の問題に戻る前にもう一つ触れておきたい。もう一つの重要な世界的な海の組織としては、本部が IMO の本部ロンドンの隣のパリにある UNESCO=United Nations Educational, Scientific and Cultural Organization 国連・教育科学文化機関の傘下の IOC がある。IMO が「海事」、人間の「航海」だとすると IOC は「海洋学」、「環境・生態」だ。国際オリンピック委員会と略称が同じだが、これは Intergovernmental Oceanographic Commission 政府間海洋学委員会の略称だ。 今回は「海洋」の概観だけで長くなってしまったので、ここまでとし、台風関連の組織の概観を次回に続けたい。 続く 追記:お詫び(再) 「かの Hurricane Katrina ハリケーン・カトリーナは2005年のアルファベットで11番目の K すなわちハリケーン11号だった。」の記述は間違いでした。お詫びの上削除いたします。。。。。。」としましたが、申し訳ありません、間違いではなかったようです。 元に戻します。1年違いの北大西洋と南大西洋の話が混線しました。詳細は次回に掲載します。 |
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