「501(c)(3)」とは、「NPOのようなもの」(1/2) [2012年10月16日(Tue)]
「501(c)(3)」を検索した結果の訪問がこのブログは多い。他のサイトでは簡単な紹介にしているからかもしれない。
このブログでも、これまで、まとめて紹介できていないので、少し、今まで掲載したもの(以前の「です・ます調」のまま引用した)をまとめ、補筆しながら紹介したい。少し長くなるので、分割して掲載した。 「501(c)(3)」は、米・日のNPOの「業界用語」としてよく使われるもので、要は、アメリカ合衆国、米国のNPO、「非営利組織」を指す言葉だ。今回は原資料に依拠し、基本的なことを紹介していきたい。 その前に、対比することができるように、少し、日本の「NPO」についてもみておきたい。 ◆日本のNPO 日本における「NPOとは何か」という問いは難題であり大きな問題だ。そもそも、このブログは、世界との対比の中で日本のNPO、世界のNPOについて、時間をかけて探っていく形のブログにしたいと思っている。多くの視点から考察が必要と考えている。 NPOが外来語であることもさることながら、日本語の中での新造語であり、多くの人たちが様々な意味に使っているし、使う人たちも増えている。そして、おそらく、「NPOのようなもの」は変貌し始めていて、変わることを期待されているだろうし、変わるだろうからだ。 ◇NPO法、狭義のNPO 日本には通称、NPO法、「特定非営利活動促進法」(平成十年三月二十五日法律第七号)という法律がある。 NPO法は通称であり、略称だ。法律や特定非営利活動法人をどのような略称にするか法案の準備が進む段階で、様々な論議があったと記憶しているが、結局、大勢において、NPO法、NPO法人が使われるようになった。 「法的」な意味で、日本での法律の「略称」とはどのように定められているかと調べると、その実態が、参議院法制局のホームページのコラムに掲載されている。 「法制執務コラム集」の「法令の題名、件名及び略称」によると、総務省行政管理局が、「官報を基に、e-Gov(イーガブ)の中にある施行期日を迎えた一部改正法令等を被改正法令へ溶け込ます等により整備を行」った上で「法令データ提供システム」に掲載している「略称法令名」が法令の略称といわれるものの大本になっているようだ。 さらに同コラムによると、「イギリスでは、法律の中に必ず当該法律の略称を定める条項が盛り込まれています。我が国の法律では、イギリスのような条項はなく、法制局職員が立案の際に略称を考える機会は余りありませんが、せめて「題名」の方は、自分の子供の名前と同じくらい大切に考えていきたいと思います」とのこと。日本では「公式・正式」の略称はないようだし、「略称」の出来上がり方もふんわりしているようだ。 ◇国際社会と日本におけるNGO 新聞研究所等で調査されたものがあるかも知れないが、NPOという語彙に遥かに先行して、NGOという語彙が日本社会の一部で使われていたことは確かだと思う。そうしたこともあって、当時は、NGOという語彙が、今日いうところのNPOの一部を包含していた時代もあった。 NGOの国際社会での由来は、以前紹介したように、国連経済社会理事会だ。第二次大戦後の戦後国際社会での、復興期から開発期にかけての時期において、国際社会が疲弊した旧ガバナンス体制から新しいガバナンスを探っていた時代から始まるものだ。戦勝国家を中心に国際社会が形成され、民族運動が活発になり、独立国が陸続と誕生し、様々な分野や地域の国際的組織が統廃合・新設される中で、「政府」だけでは手が足りなくなった時代だ。 この時期は冷戦期でもあり、従って、市場社会と非市場社会の二極構造もあった。つまり、国際的にも、非営利であることと非政府であること、或いは、反営利であることと反政府であることが入り組んだ状態にあった。そういった意味でも、日本におけるNGOという語彙も、国際社会の動きに連動している。 ◇NPO法総則 とまれ、日本における「狭義」のNPOはこの「NPO法」で定められたものといえる。以下がその法の「総則」だ。 第一章 総則 (目的) 第一条 この法律は、特定非営利活動を行う団体に法人格を付与すること並びに運営組織及び事業活動が適正であって公益の増進に資する特定非営利活動法人の認定に係る制度を設けること等により、ボランティア活動をはじめとする市民が行う自由な社会貢献活動としての特定非営利活動の健全な発展を促進し、もって公益の増進に寄与することを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において「特定非営利活動」とは、別表に掲げる活動に該当する活動であって、不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするものをいう。 2 この法律において「特定非営利活動法人」とは、特定非営利活動を行うことを主たる目的とし、次の各号のいずれにも該当する団体であって、この法律の定めるところにより設立された法人をいう。 一 次のいずれにも該当する団体であって、営利を目的としないものであること。 イ 社員の資格の得喪に関して、不当な条件を付さないこと。 ロ 役員のうち報酬を受ける者の数が、役員総数の三分の一以下であること。 二 その行う活動が次のいずれにも該当する団体であること。 イ 宗教の教義を広め、儀式行事を行い、及び信者を教化育成することを主たる目的とするものでないこと。 ロ 政治上の主義を推進し、支持し、又はこれに反対することを主たる目的とするものでないこと。 ハ 特定の公職(公職選挙法 (昭和二十五年法律第百号)第三条 に規定する公職をいう。以下同じ。)の候補者(当該候補者になろうとする者を含む。以下同じ。)若しくは公職にある者又は政党を推薦し、支持し、又はこれらに反対することを目的とするものでないこと。 3 この法律において「認定特定非営利活動法人」とは、第四十四条第一項の認定を受けた特定非営利活動法人をいう。 4 この法律において「仮認定特定非営利活動法人」とは、第五十八条第一項の仮認定を受けた特定非営利活動法人をいう。 ◇広義の公益法人と広義のNPO しかし、それでも、厄介なことがある。「法律」上、NPO法の成立の前から「広義」に「公益法人」と括られる、何らかの形での「法」的に「非営利の組織」や「公益の組織」とみなされる「NPO」が幾種類かあり、その数は多数にのぼるからだ。 具体的には、様々な枠組みの変化が起きているので、「法人」と名付けられているものを大雑把に新旧織り交ぜた通称を列挙すると財団法人、社団法人、社会福祉法人、医療法人、学校法人、特殊法人、独立行政法人、或いは更生保護法人、宗教法人等々ある。 このほかにも労働組合、農協、漁協、生協等の協同組合や町内会、自治会等の地縁団体や、今は殆んどなくなった公社・公団、等もある。 かように、日本一国国内、「法」の面からみただけでも、NPOの幅は広く、様々な定義や概念が実態からみるとあり得る。 「法人」と比べた時、協同組合等は考え方に国際的な出自を持つこともあって、当然のことながら、世界各国間であまり差がないものの、多くの「非営利法人」「非営利組織」「NPO」なる「NPOのようなもの」は全体として、そして個々にも、在り様が世界各国・各社会によって法的にも実態的にも概念的にも多様だ 例えば容易に想像できるものとして、「ホームレス支援」、「就業支援」、「コミュニティ作り」、「学習支援」、「起業支援」、「マイクロ・クレジット」、「家族計画」、「異文化理解」、「識字教育」、「農業支援」というものは、国の在り様、経済の在り様、社会の在り様、信仰の在り様、風土の在り様によってまちまちだ。それを反映して「NPOのようなもの」の在り様も様々だ。 因みに、こうした多様性もあって、日本の実態についても包括的にとらえたものが殆んどないが、林 知己夫(はやし ちきお、1918.06.07 – 2002.08.06 )元統計数理研究所所長と入山映(いりやま あきら、1939 - 2012.08.05)の共著、「公益法人の実像」はその全容を在る視点から概観させてくれる稀少な著作だ。 なお、民法改正、公益法人制度改革関連3法(「一般社団・財団法人法」、「公益法人認定法」「関係法律整備法」平成18年法律第48~50号)によって少し話は、過渡的な時期であることも手伝って、複雑になっている。元々、「民法34条法人」と「民法」上の一部としていわゆる「財団法人」や「社団法人」などが括られていたものが、新たに独立した法律で「括られる」ようになり、さらに今現在は「移行期間中」だからだ。 ◇公益財団・社団、狭義の公益法人 参考までに、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律(平成十八年六月二日法律第四十九号)」の「総則」を紹介したい。 第一章 総則 (目的) 第一条 この法律は、内外の社会経済情勢の変化に伴い、民間の団体が自発的に行う公益を目的とする事業の実施が公益の増進のために重要となっていることにかんがみ、当該事業を適正に実施し得る公益法人を認定する制度を設けるとともに、公益法人による当該事業の適正な実施を確保するための措置等を定め、もって公益の増進及び活力ある社会の実現に資することを目的とする。 (定義) 第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 一 公益社団法人 第四条の認定を受けた一般社団法人をいう。 二 公益財団法人 第四条の認定を受けた一般財団法人をいう。 三 公益法人 公益社団法人又は公益財団法人をいう。 四 公益目的事業 学術、技芸、慈善その他の公益に関する別表各号に掲げる種類の事業であって、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいう。 (行政庁) 第三条 この法律における行政庁は、次の各号に掲げる公益法人の区分に応じ、当該各号に定める内閣総理大臣又は都道府県知事とする。 一 次に掲げる公益法人 内閣総理大臣 イ 二以上の都道府県の区域内に事務所を設置するもの ロ 公益目的事業を二以上の都道府県の区域内において行う旨を定款で定めるもの ハ 国の事務又は事業と密接な関連を有する公益目的事業であって政令で定めるものを行うもの 二 前号に掲げる公益法人以外の公益法人 その事務所が所在する都道府県の知事 さて、上記の財団・社団法人等と同様に、一連の「仕分け」によって政府に「近い」法人たちの在り様も過渡期、混乱期にある。 さて、そうした状況にある日本を含め、多くの国や社会で「NPOのようなもの」は制度や慣習によって特権を享受している。税制上の特権が一般的であり、国によっては通信や交通、表現等々にも「特権」がある。 多くの場合、税制上の特権が他の「特権」の依拠しているものになっていることも多い。 以上を前提に本題に入りたい。 |