CGIARの予算規模は日本の農業研究開発費の半分か1/4。国際比較の難しさ [2012年09月19日(Wed)]
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<承前>
CGIARがネット上で公開している最新の経理報告によると、2010年の収入は6億9,600万ドル、財団・政府等からの支援が6億7,300万ドルとしている。 これがどの程度の規模のものかを今回みてみたい。桁は違わないものの、一致しない金額が多く、不正確を避けるため、少し長くなることをご寛恕いただきたい。ざっくりとした結論は最後だ。 そもそも、国ごと、組織ごとに経理・財政の考え方や表現の仕方が違うし、どこからどこまでを「研究開発費」とするか、CGIARの収入と比較すべきか等、難点があり、緩い比較にしかならないことを予め留意していただきたい。 日本の農林水産省の農林水産技術会議事務局が2009.02にまとめた「農林水産研究をめぐる情勢」の「V-4.世界の地域別、年別の農業研究開発費(公的資金)」では奇しくもCGIAR傘下のIFPRI ( International Food Policy Institute )国際食糧政策機構の統計数字を使ったと記している。 そもそも、IFPRIの統計調査はマクロな世界規模での政策策定を目的にみており、国際的な農業支援や国家間の格差などを視点に据えているので、各国比較には不向きではあるものの、国際比較に、農林水産省さえ使う次善最上のデータのようだ。 この、農林水産省自身が引用するIFPRIが2008年に試算しているとする2002年における日中印の比較表の中で、日本の公的農業研究開発費(日本のデータはかつては日本側から提出されていたかも知れないが、現在のIFPRIのHPでは見当たらない)は26億8,300万「国際」ドルだ。同じアジア域内の同年の中国が25億7,400万ドル、インドが13億3,500万ドルで「急速に規模が拡大している」と記載している。 IFPRIの現在発表している原資料には単位はPPPドルで、数字も僅かに違い、修正が加えられたか、筆者の読み間違えかもしれないが、ほぼ、同じだ。また、農林水産省の単位はPPPドルでなく、「国際ドル」で「アメリカにおいて1ドルの購買ができるという仮想単位」としている。 また、IFPRIの統計調査はASTI ( Agricultural Science and Technology Indicators )と呼ばれる「プロジェクト」である。実は、ASTIにも前史・変遷はがあり、簡単に紹介すると、現在のものはゲイツ財団の全面的支援を2008年よりうけているものである。ASTIは元々、IFPRIとISNAR ( International Service for National Agricultural Research )(2004年に解散し、IFPRIに実質的に統合された)との共同プロジェクトだった。こうしたことも数字の不一致に影響しているかもしれない。 先述のように、国際調査には、とりまとめ組織の定めるいくつかの「ルール」に基づき「各国」所轄省庁等が取りまとめて回答しているはずだが、国ごとに制度や実態が違うためや、当該国内各省庁間の立場の差異を含め、作為や無作為の解釈の違いや無理がどうしても生じるのを前提としなければならない。 ここで引用している、IFPRIの数字で、日本の「公的」なものが「農林省」の倍前後と違うのは、年度の期間のとり方、各省庁や地方の金額が加算されていたり、「研究開発」に算入すべき経費の解釈の違い等々が主因と考えられる。 上述の農林水産省の書類の次の頁では「W-1.農林水産研究関係予算の概要」の中で「平成20 ( 2008 ) 年度農林水産研究関係予算(科学技術振興費)の総額は約1,187億円」とし、「7割が独立行政法人運営費交付金及び施設整備費補助金、 2割がプロジェクト研究資金及び競争的研究資金」であり、「近年、農林水産研究関係予算額は、1,100〜1,200億円程度で推移。」としている。グラフで、遡って、示されている平成14 ( 2002 ) 年度農林水産研究関係予算(科学技術振興費)の総額は1,108億円となっている。つまり、桁は同じものの、半額前後だ。 日本の農林水産省がネット上で掲載している2010年度の「政策ごとの予算との対応について(総括表)」で「6.横断的に関係する政策」のうち「(1)農林水産分野の研究開発」として予算額を1,102億円としている。ほぼ同じ内容なのか、上記の平成14 ( 2002 ) 年度農林水産研究関係予算(科学技術振興費)の総額、1,108億円とほぼ同じだ。 つまり、まとめると、2002年の日本の農業研究開発費のIFPRI試算の「公的資金」が金額26億8,300万「国際」ドルである一方、同じ資料の同年の国の農林水産研究関係予算は1,108億円で、これは、別の資料による2010年の農林水産分野の研究開発予算は1,102億円とほぼ同じである。 金額には倍以上の差があるものの、桁としては同じようだ。 2010年の円・ドルレートとして80円と計算すると、CGIARは556億円で、日本の農林省の研究開発費、1,102億円のほぼ半分ということだ。広い意味にとらえたとしてもほぼ1/4くらいだ。 多いとみるか、少ないとみるか。筆者はそれなりのインパクトがある金額だと考える。 <続く> |




