格差・多文化社会における災害復興 [2006年05月08日(Mon)]
以前、カタリナ台風被害に呼応してBrad Pitt=ブラッド・ピットが主宰する建築設計コンペを紹介しましたが、ニューオーリンズ現地において、災害復興の中心的な役割を果たしているNPOの一つ、Common Grounds Collective=「共有の場集団」のHPを紹介します。今日の米国社会を考えさせられます。
http://www.commongroundrelief.org/ 米国は慈善・寄付・献金が盛んといわれていますが、このCommon Grounds Collectiveのキャッチフレーズは”Solidarity Not Charity”=「チャリティではなく連帯を」です。 同様に、Common Grounds Collective と協働するNew Orleans Housing Emergency Action Team=ニューオーリンズ緊急居住支援行動チームのキャッチフレーズは”The Government Does Not Care. We The People Must Help Each Other!”=「政府は構いやしない。私たち市民はお互いに助け合わなければならない」です。 http://www.no-heat.org/ Common Grounds Collectiveは275,000 戸が失われたニューオーリンズにおいて、他のハリケーン災害に比べて特に支援活動が必要な理由として、同地では、約40%の世帯の所得が $20,000以下であり、70%以上の世帯が一人だけの親によって賄われ、識字率が約39%.である上に、清掃、修繕、居住地確保が遅々として進んでいないから、としています。 http://www.commongroundrelief.org/mission_and_vision ホームページが募集しているボランティアの概要説明の中、ボランティアに求められる一般的な条件や働く環境が描かれています。 週、最低5日〜7日の作業従事、特に週末のボランティアは必須。原則として2週間以上の参加とし、2週間以下の参加の場合は、住居の撤去に原則とするなどと、条件が挙げられています。 http://www.commongroundrelief.org/node/63 また、例えば、FAQとして、「安全か?」かという質問の中の「宿舎」に関する回答で、到着時のに「誓約書」に全員署名させるとしたうえで、 ” We believe that our volunteers have a right to be in spaces that are free of: =「私たちは私たちのボランティアが次のようなものから無縁である権利を有していると信じています」 * Drugs, alcohol and weapons =麻薬、アルコール、武器 * Racist, sexist, homophobic (classiest, ageist, ableist etc.) remarks or actions. =人種主義者、性差別者、嫌悪症(階級差別者、年齢差別者、障害差別者等)的発言や行動 * Dishonesty, stealing, scamming or messing with peoples stuff. =不実、窃盗、詐欺、他人のもの/ことにちょっかいを出す * Violence or threat of violence towards anyone. =如何なるひとに対しての暴力もしくは暴力の脅威 をあげています。 ここでの、個々の項目の意味を丁寧に解釈し、使用されている語彙をみると、単に同性愛嫌悪にとどまらない広い意味での”homophobic”や、弱者や被差別者を表現してきた言葉を裏返してよりはっきりと差別を逆転的にみせる”ageist, ableist”という表現、など、深慮が短い中でも感じさせられます。 これは、ボランティアのためのハンドブックをみると、なお一層、細かい配慮を行き届かせた案内がみられ、格差・多文化社会、先進国米国のコミュニティ復興活動の在り様を知る上で、興味深い点が多々感じさせられます。 http://www.commongroundrelief.org/images/Volunteer_handbook_1-9-06.doc |
<追記>
識字率を巡って。 下記のブログ「日本の底力}では「識字率、識字率といいますが字が読めてどうするんです?」と問いかけています。 https://blog.canpan.info/gakuen-collabo/archive/11 また下記のブログ「新税制 」では「識字率の低い国において、煩雑な手続きが必要な税制は搾取にも思えるが。」と。 https://blog.canpan.info/agustinamasumi/archive/59 下記ブログ「New Orleansのハリケーンについて」ではNHK「クローズアップ現代--巨大ハリケーンの衝撃〜揺れる超大国アメリカ〜」を紹介しています。 https://blog.canpan.info/tsublog/archive/3 |