「投資と慈善の哲学―ジョージ・ソロス―NHK未来への提言」 [2008年02月14日(Thu)]
ここで、連載を中断して、NPOを国際的に考えるにあたって興味深い本(NHK出版から950円+税です)が出たので紹介します。
ご存知の方が多いかと思いますが、ビル・ゲイツが莫大な個人資産を注ぎ込んで、超大型のビル・エンド・ミリンダ・ゲイツ財団を設立する以前から、オープン・ソサエティ財団グループに個人資産を供して築き、クォンタム・ファンドを率い、1992年には英国政府と戦い、本人の弁によれば一日で1000億以上儲け、英国政府のERMからの離脱を余儀なくし、ヘッジ・ファンドの帝王として知られるようになった、あのGeorge Soros ジョージ・ソロス氏へのNHK BSのインタビュー本が出版されました。 90頁足らずの薄いブックレットともいえる本ですので、最近の出版流通事情から考えると直ぐにも書店店頭から姿を消してしまうといけないので、前回までの記事を中断して紹介します。 日本国際交流センターの山本正理事長がソロス氏からいくつかの話題について聞き取る形をとっています。 本書にもその経緯が少し紹介されていますが、「Open Society オープン・ソサエティ=開かれた社会」という冷戦時代からポスト冷戦時代においては、きわめて強力かつ万能のコンセプトが、もともとは、ユダヤ人としての迫害経験はもとより、同氏の英国のLSE(ロンドン大学のスクール・オブ・エコノミックス)時代に知遇を得たSir Karl Raimund Popperカール・ライムント・ポパーに由来することが紹介されています。 さて、オープン・ソサエティ・グループはそうしたコンセプトのもと、東欧を中心に報道の自由がきかないジャーナリストのために人工衛星・衛星通信手段から果ては防弾チョッキを提供したり、殺されたときの遺族への手当ての提供や、体制崩壊後に失職する軍事科学者の民用科学者への転用促進など、先進的かつ戦略的な活動してきた財団として知られています。 オープン・ソサエティ・グループは国際的な財団グループとして各地、或いは各事業毎に少しずつ違いを持った名称で活動しており、その全体像や仕組みに誤解が生じていることがあります。オープン・ソサエティはホームページをみてもわかりますが、Open Society Institute と Soros Foundations Networkの二つの名を掲げています。 東欧を始め世界約30カ国に、××× Open Society Foundation、 Open Society Fund、 Soros Foundation などの名称で各国毎の財団、Open Society Initiative for Southern Africa (OSISA) と Open Society Initiative for West Africa (OSIWA) というアフリカ27カ国のネットワークによって構成されています。また、世界各地に事務所や「イニシアティブ」がるあ他に米国のニューヨークとハンガリーのブダペストに二つのメイン・オフィスを持っていると紹介しています。後者はどちらかといえば、全体の資金関係業務の統括をしているともいわれます。 さて、このインタビューで興味深い話題が二つあります。 ひとつは、ある基金理事会のことで、様々な代表者が理事会に出席していることの話題です。この基金の場合、具体的には理事会に援助をする側と援助をされる側の代表が入り、それから議決権を持たない理事が出席していることです。 出し手はともかく受け手の側が入ることは、「衡平性」を確保するものの、一般的には「conflict of interest 利害の衝突」が生じるとして避けられ傾向にあります。しかしながら、「情報開示」、「透明性の確保」という狙い以上に、よりダイナミックな組織の運営の可能性に賭けるという観点から、いくつかの組織で、この基金よりさらに進んで理事会の「公開」の試みが散見されるようになって来ました。 利害の衝突を避けるため、一部議題は非公開にするというような工夫もされていますが、今後こうした試みは増えていくかもしれません。 二つ目は、「CSR 企業の社会的責任」に関しての話題です。企業経営者個人が寄付すればよいとし、企業が公益活動に寄付するか否かは、株主に公表することが前提だとソロス氏は強調しています。企業の社会的責任の遂行の中身で特に金の動きには株主の同意が前提であるとのことのようです。 ところで、カール・ポパーはFalsifiability 反証可能性の旗手として有名です。まさにインターネット時代のウィキペディアのようなオープン・コンテントの百科事典の運営で議論されるのが掲載記事の反証可能性や検証可能性が根幹にある理屈で、話題を膨らませることも可能ですが、これ自身の議論が尽きないようでもあり、本稿はこの辺で終わりにします。 xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx 「閑話休題」の....... 最初はここです。 直近はこれです。 「国境なき記者団―報道の自由」 最初はここです。 直近はこれです。 |
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