この日はte to baが3番目の拠点として整備を計画している空き家について、梅沢さん、まりえさんから構想をお聞きし、それについてOB会のメンバー、参加者が意見交換をするワークショップとして開催しました。
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「五島ミュージアム」と仮称された新たな拠点は、te to baのすぐ近くにある空き家。以前はまちの写真館や書道教室の会場として利用されていた建物です。まちの人にとっては記念写真を撮影した思い出が残る場所でもありました。持ち主の方から「まちに開かれた、みんなに使われる場所になってほしい。あなたたちに託したら、何か面白いことをしてくれそう」と白羽の矢が立って、譲り受けることになりました。
旅人や島の人がふらっと立ち寄ったり、滞在する場所としてのカフェte to baやホステルta bi toは既にある。では、この場所はどんな場所になったらよいのだろうか?について、全国の空き家活用の事例を調べたり、実際に訪ねたりもしましたが、結局自分たちで考えるしかないな、という結論に至りました。「誰でも自由に使ってください」という場所はうまくいった事例も少なく、何のしかけもない場所は機能しないということも容易に想像ができました。また事業者なので人件費や光熱費など維持するための採算も取れなければ続けることもできません。
「ずっと住み続けられる島をつくる」のte to baのミッションに立ち戻り、島の課題を整理することから構想づくりを行いました。
文化的な施設がない、世界に発信する特産品がないなど、課題はさまざまありましたが、そのなかでも、「島を出ていって帰ってこない子どもたち」に注目しました。「島には何もない」「つまらない」と子どもたちは口にしますが、実はそれは大人の考えなのかもしれない。島に帰ろうとする子どもに「こんなところに帰ってきてどうする?」と帰ることを喜ばない/求めない大人たち。故郷を誇りに思えない環境をつくりだしているのは大人たちなのかもしれない。また、子どもたちのなかには釣りをしたことがない、魚をさばけない子もいました。せっかく島にいながら、周囲の環境で得られる貴重な体験を今の子どもたちはしていない。将来、都会に出ていったときに「自分にはこんな体験がある」と自信を持って語れる経験を、今の子どもたちはしていない。これも実は「させていない大人」たちによるものかもしれない。
こうした課題意識から、「子どもたちが島を誇りに思える場」として五島ミュージアムの構想が生まれました。ここは、現代アートのアーティストやものづくりを行っている様々な大人たちと島の子どもたちが出会う場です。アーティストはこの島、このまちをどんなふうに見ているのだろうか?それがどのような作品に仕上がるのだろうか?に触れることができます。また実際に子どもたちを対象にワークショップを開催します。「見て、触って、学べる」コンテンツを提供し、子どもたちは多様な大人、多様な生き方・暮らし方を知ることができます。他には草木染の工房や自習室もつくる予定です。持続的な運営のために、ヴィンテージドレスのレンタルギャラリーやミュージアムショップなどで収益も出します。
これらはまだ構想中ですが、「集まった人が手と手を合わせて場をつくり、才能を発揮し、芽生えさせる場、魅力的だからこそ人が集う場、多様な価値観に出会い、島の可能性、自身の可能性を広げる場としての拠点づくり」を目指していきます。
このような構想を話題提起として、後半の意見交換では、大人にこそ多様な生き方、働き方、価値観に触れる機会が大切ではないか?島の子どもたちに、そうした機会をつくることが、これからを生きるうえで大切ではないか?などの話に展開しました。
日本は高度にシステム化・役割分化されてしまって、余白がない。それぞれが分断されているからこそ、見えない部分に想像力が働かない。一方、青年海外協力隊が赴任した途上国はすべての過程が目に見えているからこそ、どんな人が何をしているのか?を知ることができるし、分化されていないが故に、一人がいろんなことができなければいけなくなる。全体が見えず、余白がないなかで自由が制限されたり、システムから外れることへの恐怖が人を窮屈にし、人頼みでしか動けない社会をつくってしまっているのかもしれない。これからは自分で道を切り開き、自立していくことが生きる術になっていくのだとしたら、このミュージアムは、そんなことを体験したり挑戦したりできる場所になるとよいな。参加者との意見交換のなかでもキーワードとして「遊ぶ」がありました。子どもだけでなく大人も遊び方を知らないのかもしれない。島にある自然で遊ぶ体験は、当たり前の環境の豊かさを知る機会にもなりますし、遊べない、遊び方を知らないのはもったいない!もっと遊び上手になろう!という話もありました。
子どもたちの未来をつくる、可能性をひろげる新たな拠点が、今後どのように展開していくのか、楽しみです。
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2日間に渡る訪ねる旅には、青年海外協力隊のOBだけでなく地域おこし協力隊、福江島出身で現在は島外に暮らしている方、福江島に興味のある方など多様な方が、北海道、東北から関東、九州、国を超えてメキシコからも参加頂きました。梅沢さんとまりえさんのお話をきっかけに、地域で事業を営むということ、島や中山間地の課題、子どもの教育と未来、など幅広い話題について参加者の皆さんと意見を交わすことも出来ました。
五島列島、福江島を訪れる際は、富江町の te to baに、ぜひお立ち寄りください。