ブラジルの教育
[2012年09月22日(Sat)]
今年はブラジルで市長と市議会議員の選挙があります。毎回選挙のときによく挙げられるトピックは教育、福祉、治安の政策ですが、これらの問題が解決されないままブラジルが発展してきました。今年も選挙を取り上げるニュースを読んで、特に教育について調べたりしてみましたので、今日は教育についてお書きします。
最初にブラジルの教育の事情に詳しくない方のために、数字をいくつか示したいと思います。学習到達度調査(PISA)というテストはしばしば日本のニュースでも取り上げられます。最後のPISAでの日本の結果は、数学的リテラシーにおいて529点(9位)、読解力において520点(8位)、科学的リテラシーにおいて539点(5位)でした。一方、ブラジルの点数はそれぞれ386点(63位)、412点(57位)、405点(59位)でした。この点数は参加国全体の平均が500点になるように設定されています。従って、どの学習に関しても日本は世界のトップに入り、ブラジルは平均を大きく下回っています。トップに入る国は主に東アジアの国と地域(韓国、台湾、上海など)で、ヨーロッパではフィンランドの点数が高く、北アメリカではカナダが高い教育水準を示しています。主に南米から来ているNFSAのメンバーは、PISAの点数という観点から自国を誇りに思える人は誰もいません。NFSAメンバーの出身地で準位が一番高いのはチリですが、40位くらいで平均をかなり下回っています。
次に識字率について数字を挙げます。日本は識字率が100%に近い国で、ブラジルではデータ上90%になっています。しかし、自分の名前を書けば識字していると判断するデータなので、文章を理解する力、文章で何かを伝える力は実に多くのブラジル人に欠けています。日常生活において、満足に読み書きと算数を使いこなせないことを機能的非識字(analfabetismo funcional)といいます。やや悲観的なデータによると、機能的非識字者はブラジルの人口の75%を占めている。つまり、不自由なく言語と基本的な算数を使いこなせるブラジル人は4人に1人だけです。
それで、この文章を読んでいるブラジル人の方は機能的非識字者がそんなにいるように実感していないと思います。私もそうです。それもまたブラジルの教育の問題の一つです。私はそれほど裕福な家庭で生まれたわけではありませんが、小さい時から良いとされている学校に通い、高校もブラジル屈指の進学校に行きました。その環境で育てられると、非識字者と接する機会がほとんどなく、ブラジルの恥ずかしいデータの実感も薄くなります。因みにPISAのトップの国々は点数が高いだけでなく、社会全体に教育が行き渡っているのも特徴です。以下はブラジルの田舎の貧困層の学校の写真と、都会の私立学校の写真があります。藁で作った校舎で、穴がいっぱいあいている黒板を使って読み書きを教えるのは至難の業です。本来、教育は社会の成員全員に平等なチャンスを与えるためのものでしたが、ブラジルでは不平等を促進するためのものになっています。
今日はブラジルの教育がどれくらい酷いかだけを書いて終わってしまいました。また、教育に関して書く気になったら、ブラジルの教育がこの状況に陥った理由についてお書きしたいと思います。
↑都会の私立学校
↑田舎の公立学校
