秋学期が始まり、卒業した友達や東京から離れなければならない友達が何人かおり、最近はお別れが多い時期です。これまで一緒に楽しく過ごせて、一生忘れられない沢山の思い出が作れたので、彼らに本当に感謝してます。
その感謝を元に、今回は感謝を表現する言葉に関して紹介しようと思いました。
先ずは日本のケースを見てみましょう。
一番一般的に使われるのは「ありがとう」です。この言葉の起源として、平安時代(794−1185頃)の「枕草子」で使われている「ありがたきもの」があります。この言葉は「この世に有るのが難しい」という意味でつかわれていました。そこから「有り難し」と言う形容詞になり、「有る(ある)」ことが「難い(かたい)」、つまり有ることが難しいという意味で、「滅多にない」、あるいは「珍しくて貴重」という意味になりました。
では、どのように「感謝」を伝えるための言葉になったのでしょう。
室町時代(1336−1573)になり、神仏の慈悲によって貴重で得難い物を得た時に神仏への感謝を込めて「有り難きことでございます」「有り難く存じます」と宗教的な感謝の気持ちを言うようになりました。そこから徐々に一般化されていき、現在の使い方になったと言われます。
方言で使われる言葉に関しては、「ありがとう」の部分が省略されたものもあります:
「おおきに」→「大きに有り難し」から
(関西) (「大きに」=「大変・非常に・大いに」)
「だんだん」→ 「だんだんありがとうございます」から
(「だんだん」=「重ね重ね」)
(鳥取、島根、愛媛、福岡、熊本)
沖縄の場合は、「ありがとう」を“うちなーぐち”で「にふぇーどー」、「にふぇーでーびる」(前者の丁寧語)、「かふーしどー」と言うそうです。最初の二つの「にふぇー」は「御拝」の意味で、三つ目の「かふー」は「果報(=幸運)」の意味です。
ちなみに、「ありがとう」が使われる前に感謝を伝えるために「かたじけない」が使われてました。
ロマンス諸語に関しては色々な「ありがとう」の言い方があります。
まず、自分の母国語のスペイン語では“Gracias”と言いますが、この言葉は「優美・恩寵・ざれ言」等、様々な意味を持つ“gracia”の複数形です。この言葉はラテン語の「快適・親愛な・ありがたい」意味を持つ形容詞 “gratus” から派生した名詞“gratia”から来ました(ラテン語で「感謝する」は“gratias agere”でした)。さらに、“gratus”はインド・ヨーロッパ祖語で「(声を出して)褒める・賞賛」の意味を持つ語根 “*gʷerH-” から来たと言われています。なので、元々「ありがたい」時は、相手を褒めていたのだろう。
ちなみに、イタリア語の“Grazie”も同じ語源です。
また、ポルトガル語では“Obrigada/Obrigado”と言います。しかし、この言葉は「義務付けられている・強制されている」と言う意味もあります。なぜこのように全然違う意味で使われるようになったのかと言うと、この言葉は元々ラテン語の“obligare”から派生したからです。「〜に・〜に対して」の意味を持つ接頭語の“ob”と、「結ぶ・繋げる・合わせる」の意味の“ligare”から構成され、「責任を持たせる・誰かを有罪にする・拘束する・妨げる・強制する」と言う意味でした。それが「ありがたい」時に、「その人や出来事に対して(恩返しする)責任感で結ばれる」と言う意味になったのだろう。
フランス語の“Merci”はラテン語の“merces” から派生しました。意味は「給料・賃金・値段・褒美・賄賂」の意味で使われ、さらにそれ以前はイタリア祖語の「商品」の意味の“merx”から派生しました。
では、なぜこれが「ありがとう」になったのだろうか。それは、ラテン語の“merces”が古フランス語の“mercier” になり、「誰かを報酬する、罰する」と「感謝する」の意味になったからです。なので、恐らく「ありがたい」時に、「その人や出来事を報酬したい気持ち」を伝えたかったのだろう。
ちなみに“Merci”は「ありがとう」以外に、「慈悲」と言う意味も持ちます。(英語の“mercy”も同じ言葉から来ているそうです)。
それでは、今回はここら辺までにします。また次回をお楽しみに!
14期生
メキシコ
南重松行紀
Posted by 日系留学生管理者 at 03:14 |
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