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2009年03月26日

コラム さざなみ 3月5日号 ☆日造協☆



春の雨

春先の雨が続いて木々や地面を濡らしている。
うるおった大地から木々や草花が芽吹いて
花のつぼみがふくらんでいる。



梅は咲いた。桜はこれから。
黄水仙が庭の片隅を明るくしている。
食卓のうえのヒヤシンスはピンクから赤に色を変えていく


寒風が吹き、乾ききった大地に降る雨はいのちを生き返らせるようだ。
自然は春になれば花咲き、秋に実を結ぶ。

しかし人生の嵐は時を待たない。
        今日一日をどう生きよう。
               誰しも苦労を負っている





四時を忘れずめぐり来る季節に
草木、花、鳥、風、雨、雲、
そして空に日に月に星に、
人は支えられている。

このいまを共に生きる人たちとの信頼によって人は支えられている。
生きてあることは喜びに違いない。



春だ 窓枠を一枚はずすと
  部屋の中へ 物音が
  近くの寺の 祈祷をしらせる鐘の音が

人声が 車輪の響きが とびこんできた
わたしの心にも命と力がかえってきた
 かなたに青く遠景が見える
  心は野原へ 広い野原へとぶ




あそこでは 花をまきながら 春が歩いていよう    


          マーイコフ(樹下節訳)



写真はイメージです。
 コラムをお楽しみいただく 参考になれば 幸いです。

機関紙「日造協」が、変わります。
新年度から、新聞型ー縦書きーから通信型ー横書きーへ

もう少しで、みなさまのお手元に届きます。
御期待くださいませ。

☆日造協でした☆
posted by 日造協 at 13:40 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム「さざなみ」

2009年02月02日

コラム「さざなみ」1月5日☆日造協☆



牛くらい有益でありがたい家畜はない。
田畑を耕し、ミルクを出し、肉まで食べさせてくれる。
それどころか、皮の衣まで与えてくれる。


牛は古代の中国では
祭祀のときに供えられる最も重要な犠牲とされた。
闘牛もあるが、忍耐強く温和な性質をもつ。
馬は戦いの象徴、牛は平和の象徴であった

牛車もあった。
昔、高貴な人をのせ牛に引かせた屋形ぐるまで
枕草子や源氏物語に出てくる。
月夜に水たまりの路を牛車がゆく。
車輪がはねた水滴が月のひかりに光るなどと書いてあった。


牛にまつわる言葉は少なくない。
「牛耳る」―組織の中心となって思い通りに支配すること。
「牛の歩み」―ものごとの進み方がのろのろしていること。
国会の「牛歩戦術」が浮かぶ。
お正月でも「牛飲馬食」は慎もう。
本好きな人には「汗牛充棟」がある。
牛に引かせれば汗をかくほどに、
  家に積めば屋根の棟に届くほどに本の数が多い

幸いを皆で公平に分けて、
  遅々とした歩みでも希望に向って進む一年でありたい。




 長き夜をひとり爐により
 唐びとの詩讀みをれば
 こころ足り時ぞ過ぎゆく
 愁なき人にかも似る

    「長き夜を」佐藤春夫詩集より


写真はイメージです。
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      ☆日造協☆
posted by 日造協 at 15:15 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム「さざなみ」

2008年12月25日

コラム さざなみ 12月5日号 ☆日造協☆



嵐電に乗った。
京福電鉄嵐山線はいまや京都を走るただひとつの路面電車として
「嵐電」とよばれ親しまれている。


嵐電に乗って嵯峨のもみじを見に行き、
人波に押されて風情を楽しむところまでいかず、
ラッシュを恐れて急ぎ京都駅に帰った。

京都駅から地下烏丸線に乗り、二つ目の四条で降り、
阪急京都線烏丸線からひと駅乗り、大宮で降りる。
四条大宮駅が嵐電の始発駅なのだ。
地下鉄烏丸線の四条駅は阪急京都線の烏丸駅、
阪急京都線の大宮は嵐電の四条大宮駅になる。
駅名が違っていても同じ所なのだ。
梅田が大阪であるように。


観光地でよく目にする光景は、女子洗面所の列で、広くして数を増やしたら、
お土産が二倍売れやすまいか。
日本では、財布の紐はご婦人が握ってるい場合が多い。
西洋では反対らしい
地下鉄で乗り合わせたスウェーデンのご夫妻、
 御主人が席を立ち、御老人に席を譲った。
座っているお内儀に、京都はどうかと聞くと、素晴らしいと笑顔で答えた。



十二月になってしまつた
名越の山々の
麓を曲がる小路に
はみ出た蒼白な岩かどに
海しだの墨色のみどり



西脇順三郎
「旅人かへらず」より


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今日は クリスマス。素敵なことが ありますように
  メリークリスマス     ☆日造協☆
 
posted by 日造協 at 10:32 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム「さざなみ」

2008年12月03日

コラム さざなみ ☆日造協☆





昼間は晴れていて、夕方に驟雨の来る日が続いた。
雷が鳴りみぞれが降った。



十月二十七日月曜日から神田神保町で、
第四十九回 東京名物神田古本まつりがはじまった。
年に一度、百万冊の本が並ぶ。

本の回廊と称して、靖国通り沿いの歩道に、古書店と向かい合って
縁日の出店のような本棚が作られる。
本の背を照らす提灯の列がえんえんと続く。
仕事を終えて閉店間際に駆けつけた勤め人やOLで賑わっていた。



株価の暴落、急激な円高よって、経済が混乱している。
世のなか真っ暗闇のようだ。
夜の暗がりの中に、点々と どこまでも続く提灯の明りに、
何か希望のようなものを感じた。


この古本まつりに来ている人たちも、
生きるよろこびを与えてくれる言葉を探しているに違いない。

「世界の歴史」全百巻を五千円で買っていかれた中年男性。
わが子に読ませるのだろうか。


おほきな河のうへを
夜の汽車がとほる
むかうのはうにも
橋があるらしく
いちれつの灯がかわにうつつて
ひとつびとつ
ながいながいひかりになってゐる



八木重吉詩集 
「鞠とぶりきの独楽」より


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posted by 日造協 at 15:45 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム「さざなみ」

2008年11月10日

さざなみ 10月5日号



ニセコ、札幌へ行った。
翌週は雪が降った。

晩秋の北海道だった。
どもまでも打ち続く田畑、高い針葉樹の林、
草をはむホルシュタインの群れ、
木の間から突然現れたみずうみ、
稜線の美しい山やま



忘れえぬ人々にも会った。
清楚に身づくろいした小柄なおばあさんが、
駅のベンチで日に何本もない列車を待つ。
肩から斜交(はすか)いにかばんを下げた
おじいさんが方言で公衆電話をかけている。



札幌農業学校開校は明治九年、
初代教頭に就任したウイリアム・S・クラーク博士は、
体罰も含む過酷な校則を示されて意見を求められたとき
「そんなことで人間をつくることはできない
『ビー・ジェントルマン』
この一言を持って足れり」
               といった。

内村鑑三、新渡戸稲造、宮部金吾、
    志賀重昴(しげたか)、有島武郎、
近代の礎を築いた人物が綺羅星のごとく輩出した。



「朝食 飯、汁、香の物、湯
 昼食 飯、一菜、香の物、湯
 夕食 パン、バター、肉魚の肉にて二品、湯
 但し一日おきにライスカレー、他に二品」
これは明治十四年末、札幌農学校の学生の食事。
いまこそ、真の教育が求められる。


豊かに稔れる石狩の野に 
雁(かりがね)遥々(はるばる)沈みてゆけば

羊群声なく牧舎に帰り 
手稲の嶺(いただき)黄昏(たそがれ)こめぬ

都ぞ弥生
(北海道帝国大学予科寮歌)




さざなみコラムをお楽しみに皆様
掲載が遅くなりまして、申し訳ございませんでした。


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posted by 日造協 at 16:50 | Comment(0) | TrackBack(0) | コラム「さざなみ」