
昼間は晴れていて、夕方に驟雨の来る日が続いた。
雷が鳴りみぞれが降った。

十月二十七日月曜日から神田神保町で、
第四十九回 東京名物神田古本まつりがはじまった。
年に一度、百万冊の本が並ぶ。
本の回廊と称して、靖国通り沿いの歩道に、古書店と向かい合って
縁日の出店のような本棚が作られる。
本の背を照らす提灯の列がえんえんと続く。
仕事を終えて閉店間際に駆けつけた勤め人やOLで賑わっていた。

株価の暴落、急激な円高よって、経済が混乱している。
世のなか真っ暗闇のようだ。
夜の暗がりの中に、点々と どこまでも続く提灯の明りに、
何か希望のようなものを感じた。

この古本まつりに来ている人たちも、
生きるよろこびを与えてくれる言葉を探しているに違いない。
「世界の歴史」全百巻を五千円で買っていかれた中年男性。
わが子に読ませるのだろうか。
おほきな河のうへを
夜の汽車がとほる
むかうのはうにも
橋があるらしく
いちれつの灯がかわにうつつて
ひとつびとつ
ながいながいひかりになってゐる

八木重吉詩集
「鞠とぶりきの独楽」より
写真はイメージです。
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