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2017年01月30日(Mon)
ハンセン病「グローバル・アピール2017」
12回目の今年はインドから発信
社会的烙印と差別をなくすために


世界ハンセン病の日」(毎年1月の最終日曜日)に合わせて日本財団は1月30日(月)、「ハンセン病に対するスティグマ(社会的烙印)と差別をなくすために」と題した「グローバル・アピール2017」(宣言文)を発表しました。12回目となる今年は、世界保健機関(WHO)ハンセン病制圧大使および日本政府ハンセン病人権啓発大使である日本財団の笹川陽平会長の呼び掛けにより、世界171の議会が加盟する列国議会同盟(IPU)の共同宣言として、インドの首都・デリーから発信しました。会場は約300人の参加者で埋まり、ハンセン病回復者も多数参加しました。

宣言文を読み上げるハンセン病コロニーの奨学生たち.JPG

宣言文を読み上げるハンセン病コロニーの奨学生たち


今回の共同宣言は「ハンセン病は薬物療法により完治する病気となり、これまでに世界中で1600万人以上の患者が治療を受けているが、病気に対する誤った認識が今なお残っており、社会的、経済的な差別が続いている」と強く指摘し「ハンセン病患者あるいは回復者であることによって起こる、あらゆる差別に反対し、スティグマと差別をなくすための非差別的な法律と政策の制定と施行を働き掛け、すべての人が自由で、尊厳と人権について平等である社会づくりを促進することを保証するよう求める」などと訴えました。

グローバル・アピール式典の基調講演で笹川会長は、40年ほど前にハンセン病との闘いの旅に出たいきさつ、目標を「病気の制圧」に向けた経緯、そして制圧の望みが見えるようになってきてもハンセン病回復者がなお差別に苦しんでいる状況を見て2006年から「ハンセン病による差別のない世界を目指す」という新たな目標に向け、世界のさまざまな専門家や指導者と共同で、毎年グローバル・アピールを発信してきた経過を紹介しました。

グローバル・アピールの式典で主催者あいさつをする日本財団の笹川陽平会

グローバル・アピールの式典で主催者として基調講演をする日本財団の笹川陽平会長



さらに笹川会長は「今回のグローバル・アピールのメッセージの中でIPUは、ハンセン病患者、回復者に対する非差別的な法律を制定し、そのような法や政策の施行を進めることを表明されています。私は、皆さまのこれからの活動に大きな期待を寄せています」と述べて、IPUと共同でグローバル・アピールを発信する意義を強調し、ハンセン病差別撤廃に世界の議員が果たす役割に期待を示しました。

約300人の会場.JPG

約300人の参加者で埋まった会場



その上で笹川会長は「この旅は多くの方と共に歩みを進める旅です。インドをはじめとする各国政府、これまでグローバル・アピールに賛同してくださった方々、そして何より、患者、回復者の皆さまと共に、私たちはここまで来ることができました。ハンセン病の制圧まで最後の1マイルというところまで来ていると言う人もいらっしゃいます。しかしこの旅はまだ終わりません。私たちは今、ハンセン病に伴う差別のない社会を目指すという、病気の制圧の先にある終着点を目指しています。これからの旅にロードマップはありません。その道はより険しいものになるかもしれません。しかし私は、これからも多くの仲間と、そして本日をきっかけに新たにこの旅に加わってくださる皆さまと共に、この道なき道を切り開き、一歩一歩、ハンセン病との闘いの旅を続けていきます」と決意を表明しました。

挨拶するIPUのチョードリー議長

挨拶するIPUのチョードリー議長

会場には多くのハンセン病回復者が参加しました

会場には多くのハンセン病回復者が参加しました



続いてIPUのサベル・チョードリー議長は「インドには長きにわたる差別がありました。薬でたくさんの人が治ってきましたが新規患者も多いのが実情です。特に多くの努力をしてきたのが回復者の人権問題です。コロニーに住む回復者の尊厳を取り戻すことに努力をしてきました。今年はグローバル・アピールをインドで発表しましたが多くの人が賛同してくれました。日本財団の笹川会長に感謝します」などとあいさつをしました。

会場にはナレンドラ・モディ・インド首相が「ハンセン病との闘いには国の力も必要だが、皆さんの力も必要だ」と呼び掛けるビデオメッセージも流されました。

日本財団はハンセン病の制圧と回復者に対する差別撤廃に向けた活動を国内外で実施し、「世界ハンセン病の日」に合わせて世界の各界代表者らと06年以来「グローバル・アピール」を発表して「ハンセン病は治る病気」「治療は無料」「差別は不当」と訴えてきました。また日本財団は14年度から、ハンセン病の正しい知識の普及を図る世界規模のキャンペーン「THINK NOW ハンセン病」を展開しています。

東京・新宿の早稲田大学大隈記念講堂(1月29日撮影)

東京・新宿の早稲田大学大隈記念講堂(1月29日撮影)

日本国内では「世界ハンセン病の日」の1月29日(日)、日本財団によるハンセン病写真展のほか、世界ハンセン病デー特別企画〜明日に架ける橋〜「朗読劇 あん」の上演や、「ハンセン病問題支援学生NGO(非政府組織)橋‐Qiao」によるシンポジウムが、東京・新宿の早稲田大学大隈記念講堂で開催されました。朗読劇とシンポジウムは、音楽制作やステージ制作などを手掛ける(株)オンザフィールド(東京・世田谷)が主催・制作しました。

写真展は世界規模のキャンペーン「THINK NOW ハンセン病」の一環です。「ハンセン病を考えることは、人間を考えること。」のテーマで、日本財団の富永夏子フォトグラファーが、ブラジル、インド、ベトナム、エジプト、モロッコ、コンゴ民主共和国、ロシアなど世界各国で撮影した写真約40点を講堂内に展示し、多くの来場者の関心を集めました。

日本財団主催の写真展の様子

日本財団主催の写真展の様子



「朗読劇 あん」は、道化師ドリアン助川さんの小説「あん」を朗読劇に仕上げた作品です。ハンセン病を背景に逆境を生き抜いた女性を主軸に据えたこの小説は、監督・脚本が河瀬直美さん、主演は樹木希林さんで映画化され大ヒットしました。朗読劇は「誰にも生まれてきた意味がある」との表題で、原作者本人のドリアン助川さんと女優の中井貴恵さんが、2人の母校である早大の大隈講堂で上演、来場者はシンポジウムと併せて、じっくり聞き入っていました。

「朗読劇 あん」の様子

「朗読劇 あん」の様子

シンポジウムの様子

シンポジウムの様子







【グローバル・アピール2017】
ハンセン病に対するスティグマ(社会的烙印)と差別をなくすために


ハンセン病はかつて、身体に変形が生じることにより恐れられていましたが、現代では薬物療法により、完治する病気となりました。これまでに、世界中で1600万人以上の患者が治療を受けています。

早期診断、早期治療は身体の障害の発生を防ぐことにつながります。

しかし、病気に対する誤った認識が今なお残っており、社会的、経済的な差別が続いています。

世界各地において、多くのハンセン病患者や回復者、その家族はさまざまな問題に直面しています。例えば、

・教育や就職、結婚の機会を奪われる。
・社会の一員として受け入れられず、不当な扱いを受ける。
・事実に基づかない認識による時代遅れの法や慣習によって、社会的烙印を押される。

私たち列国議会同盟は、民主主義や開発の重要な構成要素である人権という概念が、ハンセン病患者や回復者を取り巻く問題の解決策と結び付いていなければならないと固く信じています。

私たちは、ハンセン病患者あるいは回復者であることによって起こる、あらゆる差別に反対します。

私たちは、2010年に国連総会で採択された、ハンセン病患者や回復者、その家族に対する差別撤廃決議を支持し、これに付随する原則とガイドラインの履行に力を尽くすことを約束します。

私たちはすべての議会に対し、ハンセン病の患者、回復者とその家族に対するスティグマと差別をなくすための非差別的な法律と政策の制定と施行を働きかけ、次のことを保証するよう求めます。

・ハンセン病に苦しむ人々やその家族はいかなる時も尊厳と尊敬を持って扱われること。
・ハンセン病患者や回復者、その家族は、自身に関わる政治的な議論や決定に参画する権利を有し、その人権を十分に享受すること。
・すべての人が自由であり、かつ尊厳と人権について平等である社会づくりを促進すること。


● ハンセン病〜病気と差別をなくすために〜(日本財団ウェブサイト)













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