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2016年12月21日(Wed)
ポスト資本主義の新社会構築を目指す!(下)
大企業を退職、移住してきた人も
地元も「よそ者」を歓迎、受入れ


岩手県遠野市に立ち上げた「ネクスト・コモンズ・ラボ」のスタッフとして都会から移住してきた人の中には、大企業でバリバリ働いていた中堅社員が少なくありません。東日本大震災後にヨーロッパから復興ボランティアとして来日、東北に魅せられて移住してきたイタリア人女性もいます。こうした「よそ者」を受け入れた遠野市では、街を変える起爆剤として彼らに期待しています。移住者にその動機と抱負を、地元の行政責任者に移住者への期待を聞きました。

古い建物と新しい建物が混在する遠野市中心街

古い建物と新しい建物が混在する遠野市中心街



遠野市の拠点立ち上げで、全体的な運営を任されているのは、COO(最高執行責任者)の田村淳一さん。リクルートに入社して7年間勤め、住宅部門で新規事業や法人営業を担当していましたが、ネクスト・コモンズ・ラボ林篤志代表に出会い、林氏のビジョンに共感し、遠野市に移住してきました。

コモンズ・カフェでインタビューに答える田村さん

コモンズ・カフェでインタビューに答える田村さん

リクルートを退職、遠野に移住してきた理由を聞くと、田村さんは次のように答えました。
「仕事は楽しく、成果も出せていたが、一方で物足りなさも感じていた。もっと難しく、よりダイレクトに社会に貢献できる仕事に挑戦したいと思うようになったのです」

田村さんは和歌山県田辺市で農家の長男に生まれました。大卒後、過疎化が進んでいる地元のような地方に何かしたいと思い、まずはスキルを身に付けるためにリクルートに新卒で入社。新規事業立ち上げや、法人に対する経営コンサルティングなど、リクルート時代に学んだスキルやスタンスは今の仕事でも役に立っているといいます。

昨年から東日本大震災の被災地を中心に何度も地方の現場を訪れる中で、国や行政に対する不満を聞く機会が多く、また自分自身もそう思ってきた所があったそうです。今回、林さんの「不満を言っていても変わらない。自分たちで欲しい未来、社会をつくる」というビジョンに共感し、自らその当事者でいたいと思ったのが、参画した理由だそうです。

「林さんが考えていることがおもしろいし、価値観や目指す世界も近い。形にしていく段階で自分の経験やスキルが活かせられればと思いました」と田村さんは振り返りました。その後、妻の知世子さんに事情を話すと、すぐにオーケーし、2人で遠野市に引っ越してきました。

田村さんは今、コモンズ・カフェを拠点に事務局の運営、起業家の受入れ、さらには遠野ではじまっている各プロジェクトや事業の立ち上げなどを担当しています。

起業家の募集は、総務省の「地域おこし協力隊」の制度を活用し今年9月、10人を採用しました。都市部から地方に移住し、地方創生に協力してくれる若者を自治体が隊員に委嘱し、1人400万円を上限に補助金を出す制度です。

コモンズ・カフェでは現在、週4日営業し、市民にランチ、ディナーを提供しています。食材は地元の農家から分けてもらうなど、地元の人たちと交流する場となっています。また、レストランを起業する人材の研修の場でもあります。

ディレクターの富川岳さん(29)は デジタル系広告代理店の出身で、今年3月まで、同社の営業兼プロデューサーを担当。「大きなクライアントを相手にした広告の仕事はダイナミックでとても面白かったが、徐々に、大きな仕事の一部分ではなく、自分がアクションすることによって結果が大きく変わるような実感を味わえる仕事をしたくなった」と話しました。地域であれば、豊富な地域資源がある一方でプレーヤーが不足している。自分が果たせる役割があるのではないか、とその担い手となるべく遠野へ飛び込んだそうです。デジタルを駆使して情報発信をしてきた経験を活かし、ネクスト・コモンズ・ラボのプロジェクトにて、様々な情報を可視化し、発信していきたいとのことです。

富川さんは林代表について、「同じ世代ならではの問題意識を持っているビジョナリーな人。さらに、そのビジョンを明確に、説得力のあるプレゼンテーションをしてくれるため、理解しやすく付いていきやすい」と、話していました。

コモンズ・カフェでインタビューに応じるレナータさん

コモンズ・カフェでインタビューに応じるレナータさん

イタリア出身のレナータ・ピアッツァさんは今年10月、スペイン・バルセロナから遠野に移住してきました。夫と離婚し、長男(15)、長女(13)、次女(9)の子ども3人を連れての移住でした。日本とのつながりは古く、レナータさんがベニスの大学で日本語を学んで以来です。スペイン外務省のシンクタンクで10年間、日本との交流を担当し、東日本大震災直後に出張で来日しました。被災地の宮城県気仙沼市に3日間通い、災害のひどさにショックを受けたそうです。2012年4月、仕事を辞めて来日し、東北地方を3カ月見て回りました。その結果、「ツナミは未来社会を作るきっかけになる」と思い、日本と欧州で市民同士が震災の体験を共有できないか、と考えたそうです。

このころからレナータさんは東北に住みたいと思い始めました。昨年8月、来日した際、林さん宅で開かれたバーベキュー・パーティに参加し、意気投合しました。今年1月、「おもしろいことが始まるよ。一緒にやりませんか」と誘われ、移住を決意しました。「日本に移住してきたが違和感はなかった。日本に生まれ育った感じで、安心できます」と話していました。

だが、子どもたちは日本語が全然分からないうえ、学校へ行っても英語ができる教職員が少ないため、意思疎通にさえ苦労しているそうです。子どもたちは主にカタルーニャ語(スペイン・カタルーニャ自治州の言語)で話していますが、レナータさんはカタルーニャ語ができないので、母と子の間ではイタリア語で話しているそうです。レナータさんは「私たちは今後全国展開していくので、地方との経済交流のコンテンツを提案していきたい。また、外国人から見た新しい観光のあり方を考えたい」と語っていました。

市役所でインタビューに答える飛内副市長


市役所でインタビューに答える飛内副市長

一方、地域おこし協力隊員の選考をネクスト・コモンズ・ラボに委嘱している遠野市の飛内雅之副市長(60)は「昔から既成のものを変えるには若者・よそ者・ばか者が重要といわれている。過疎化が進むわが市では、よそ者の力に期待したい」と、林さんらの移住を歓迎しています。移住者の大半が都市部からのよそ者なので、「よそから古い町に入ってくるのは大変です。町の人たちと仲良くできるよう、両者が交流する場をたくさん作っていくことが大事です」と語っていました。

飛内副市長によると、市の人口は平均すると1年間に約350人づつ減少しています。とくに市内に職が少ないため、高校生になると転出していくケースが多いそうです。このため飛内副市長は「地方創生のためにも彼らのビジョンが実現できるよう、彼らと一緒にやっていかないといけない」と、連携して進めていく考えを示しました。

ポスト資本主義の新しい社会をつくる試みは今始まったばかりで、今後、行政や住民と話し合いながら進めていかなければ、成功はおぼつかない。また、新しい社会のビジョンがいくら正しくても、経済的に成功しないと長続きしません。コモンズ・ネクスト・ラボの今後の活動をしっかり見守っていきたいと思います。
(終わり)


奈良県の大和高原でロート製薬などと食・農分野で連携
ネクスト・コモンズ・ラボはロート製薬、奈良県、宇陀市と連携し、奈良県北東部の宇陀市、山添村など5市村にまたがる大和高原の農業を活性化し、移住や定住を促進する。来年2月をメドに起業家を募集し、蜂蜜やキノコの生産などの事業を立ち上げる計画。山田邦雄・ロート製薬代表取締役会長(CEO)は「当社のライフサイエンスの研究や技術で貢献できる」と語っている。


大和高原 Infomation(奈良県ウェブサイト内)


● ネクスト・コモンズ・ラボ ウェブサイト
● 日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016 ウェブサイト














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