別府で「被災者支援拠点」運営訓練
大規模災害に備え人材を育成 災害が発生した後の避難生活で被害を拡大させないようにと、日本財団は12月12、13の両日、大分県別府市、大分県社会福祉協議会と協力して、大規模広域災害の発生を想定した「被災者支援拠点」の運営訓練を別府市内の福祉施設で実施しました。大規模災害が起きた時に避難所を適切に運営する人材の育成を兼ねた取り組みで、日本財団が進めるプロジェクト「被災者支援拠点運営人材育成事業」の一環です。 ![]() 体調が悪い男性を周りで介護する様子=12月12日 |
![]() 「遠慮なく意見を」と呼び掛ける別府市企画部危機管理課の村野淳子さん=12月12日 震災発生時に助かった命が避難生活のなかで数多く失われる‐。東日本大震災でさまざまな支援活動を展開してきた日本財団は、こうした事態をなんとか防ごうと、地域の非常時を支える「被災者支援拠点運営人材育成事業」を展開。避難所の実践的な運営訓練を通して、避難所を適切に運営できる人材の育成を進めています。障害者や高齢者をはじめとした被災者が今何を必要としているか、現場の要望をしっかり理解・把握し、必要な世話や管理ができるリーダーを育て、避難所の役割を十分機能させ、避難生活を送る人の危険を減らすことを目指しています。 災害救助法上「被災者支援拠点」と位置づけられている避難所は、子ども・高齢者・障害者・アレルギー疾患のある人、自宅に留まっている被災者など、地域の誰もが安心できる場所としての機能を担います。従来は「災害が起きて避難所に避難するまで」の防災訓練が多く、「避難した後」や「避難所の運営は自分たちで担う」訓練は珍しいのが実情です。 防災と避難所のあるべき姿を包括的に学ぶ「被災者支援拠点」運営訓練の普及に取り組む日本財団は、大分県と大分県社会福祉協議会の協力で2014年、同県佐伯市で南海トラフ地震に備えた同訓練を全国で初めて実施。今回は同県内3回目で別府市では初。前回までの自治体関係者だけでなく別府市亀川地区内14自治会、市内に住む障害者など地域住民計35人も参加して、JR日豊本線亀川駅から歩いて5分ほどにある社会福祉法人「太陽の家」のサンスポーツセンター2階体育館を借りて行いました。初日はライフラインが止まっている想定で震災発生直後の避難生活体験を、2日目は震災から1週間の被災者支援拠点を想定した地域活動のシミュレーションを、それぞれ実施。実際の場面を想定して参加者がさまざまな役割を演じ、どのような困ったことが起きるか、問題点を探りました。 訓練開始前の説明会で日本財団ソーシャルイノベーション推進チームの橋本葉一が主催者を代表して「今日は大分県ではこの冬一番寒い日。その中でこれから『避難所ができた』想定で、いい人、悪い人、いろんな役を皆さんに割り振って実際に演じていただきます。役に徹していただくことで、より現実感のある訓練になります。ぜひとも頑張ってください。1泊2日、体育館の中で過酷な訓練になると思いますが、くれぐれも体調に気を付けて、いろいろなものを得て帰ってください』とあいさつしました。 別府市企画部危機管理課の村野淳子さんは「別府市は今、この亀川地域をモデルにして、要援護者の個別避難計画を具体的につくっていく動きを進めています」と紹介し「その中の一つとして今回の訓練や研修を組み込ませていただきました。この訓練を通じて感じたことや、こうしたほうがよかった、という意見を遠慮なく寄せてください。今後の取り組みや仕組みづくりにつなげていきたいと思います」と呼び掛けました。 ![]() 小灯を頼りに簡易トイレを組み立てる様子=12月12日 その場にあった資材で作成され女子トイレスペース=12月12日 完成した授乳スペース=12月13日
非常用保存食のアルファ米に水を加えて五目ご飯づくり=12月12日 「足にけがをした。助けてくれ」「責任者は、行政の職員はどこにいる」「トイレに行きたい」「胸がドキドキする」「寒い、暖房器具はないのか」「意識のない人がいる、医者は、看護師は」「食べ物はどうなった」「英語のできる人は」「犬を連れてきている者がいる。外に出せ」‐あちこちから迫真の訴え、要望が一斉に湧き上がりました。間もなく食べ物として非常用保存食の乾パンが配られ「鍋も電気もお湯もないので今晩はこの乾パンだけで我慢してほしい」との“自治会長”からの要請に対し、それでもご飯が食べたいという強い意見が表れ、結果的に非常用保存食のアルファ米に水を加えて五目ご飯をつくることになりました。別のところでは男女別のトイレや授乳スペースが毛布などその場にあった資材で作成され、簡易トイレの組み立ても始まりました。次第に日が暮れ身の周りは真っ暗に。簡易トイレの組み立てやアルファ米のご飯づくりは非常用の小灯が頼りでした。 ![]() 玄関脇で発電機の使い方を学ぶ様子=12月12日 2日目の訓練ではまず受付を設置=12月13日 初日の反省から2日目の訓練では掲示板を積極的に活用=12月13日 障害のある人も訓練に参加=12月13日 2日目は災害発生から1週間後の設定。避難所の外からの支援要請にどう応えるか、外部からの連携をどのように行うかをテーマに、初日と同じような形で課題の洗い出しが行われました。電気、ガスは一部復旧し、スーパー・コンビニも一部再開した、との想定のなか、訓練初日の改善点も考え併せ、しっかりした名簿を作り、上がってきた要望を専門家や助力者に発信していくこともゴール目標の一つとされました。 開始前に村野さんは「いろいろな課題を抱えている人が、あちらにも、こちらにも、ということになると、その人たちの情報を把握するのが非常に厳しくなります。被災地の中にある福祉避難所も、被災をすると開けなくなる。避難所の中でそういう人たちを、ちゃんと対応できる場所を確保しなければいけない。今日はそういうことも意識してイメージを膨らまし、役割を超えてもう一つステップアップした形を目指してください」と要請しました。 訓練の会場として借りた「太陽の家」のサンスポーツセンター=12月12日 海抜を示す別府市の掲示(JR日豊本線亀川駅構内)=12月13日
● 被災者支援拠点運営人材育成事業(日本財団ウェブサイト) |