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2016年12月12日(Mon)
福島事故はチェルノブイリに比べ低い
甲状腺被ばく線量、スクリーニング効果指摘
国際専門家会議の提言、県知事に提出


9月に開催された国際専門家会議「福島における甲状腺課題の解決に向けて〜チェルノブイリ30周年の教訓を福島原発事故5年に活かす〜」の提言がまとまり12月9日、専門家会議組織員会の委員長を務める笹川陽平・日本財団会長から内堀雅雄・福島県知事に提出されました。福島事故による一般住民の甲状腺被ばく線量はチェルノブイリ事故に比べはるかに低く、甲状腺異常の増加は高性能な超音波診断機器の導入に伴うスクリーニング(検診)効果と考えられるーなどの内容で、今後、福島県の健康調査検討委員会の検討材料としても活用される見通しです。

内堀知事に提言書を手渡す笹川会長、山下長崎大副学長、喜多悦子・笹川記念保健協力財団理事長

内堀知事=左=に提言書を手渡す笹川会長、山下長崎大副学長、喜多悦子・笹川記念保健協力財団理事長


国際専門家会議は9月26、27の両日、国際原子力機関(IAEA)、原子力放射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)、世界保健機関(WHO)など海外の専門機関と福島県立医科大など国内の専門家が出席して福島市で開催され、子どもの甲状腺がん、とりわけ県民健康調査に導入されている甲状腺超音波検査結果を中心に議論が行われました。その後、会議内容に健康と健康リスクに関する福島レポート、チェルノブイリ事故に関する専門家報告なども踏まえ、この日の提言がまとめられました。

9日は笹川会長と組織員会のメンバーである山下俊一・長崎大学副学長が内堀知事に提言書を提出。笹川会長は「世界の学者から適切な知見をいただきました。大所、高所からご判断いただきたい」と述べ、山下副学長は「事故後、多く見つかった甲状腺がんをどう理解するか、国内外の専門家がオープンに議論しました。事故後の健康モニタリング、特に甲状腺の超音波検査に関しては、きちんとしたガイドライン、方向性をつけるべきであろう、ということを提言しています」と説明しました。

これに対し内堀知事は「関係者の努力に敬意と感謝を表したい」とした上で、福島県の検討委員会が甲状腺の取り扱いも含め、今後の県民健康調査の在り方について協議を重ねていることを紹介、「提言を参考にしながら県民、特に子どもたちの健康をどう見守っていくか協議を尽くしていきたい」と述べました。

提言内容について意見を交換、マスコミ取材も

提言内容について意見を交換、マスコミ取材も

提言ではスクリーニング効果について、青森、山梨、長崎で小児を対象に行われた調査でも同様の結果が確認された、としているほか、将来に向けた対策として「健康調査と甲状腺検診プログラムは自主参加であるべきだ」、「福島の経験を国際社会と共有するため国際機関と国内組織の共同事業が強化されるべきである」など4つの提案を盛り込んでいます。

福島県では事故後、18歳未満の県民を対象に2回にわたり健康調査が実施され計56万人が受診、175人が甲状腺がんの疑いがあると診断され、136人が甲状腺摘出手術を受けたとされており、事故に伴って放出された放射性物質との関係をめぐり幅広い議論が戦わされています。

カテゴリ:健康・福祉







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