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2016年11月19日(Sat)
「学校の魅力化」が日本の社会を変える!(下)
島根県外からの“留学生”3倍に
全国に成功モデルを拡散できるか


国宝の天守閣を有する松江城の隣に、島根県庁などの建物が並んでいます。その一角の県教育庁内で、県レベルの「学校の魅力化」を担当している江角学・社会教育課生涯学習振興グループリーダーを訪ねました。9月に行われた日本財団ソーシャルイノベーションフォーラムに応募するよう、学校魅力化プラットフォーム共同代表の岩本悠さんに勧めた人です。江角リーダーは「来年度から本格的に魅力化事業を開始するので、良い予算になるようにしたい」と張り切っていました。岩本さんが主導している「学校の魅力化」プロジェクトの今後の展望を探りました。

「しまね留学」ガイドブックと、フェリーから見た海士町

「しまね留学」ガイドブックと、フェリーから見た海士町


県教育庁では、2011年から県内の離島や中山間地域の高校で「魅力ある教育・学びづくり」を推進してきました。その中心は、県外に住んでいる中学生に島根県の高校を受験してもらい、入学して3年間、充実した高校生活を送ってもらおうという「しまね留学」プロジェクトです。積極的に県外入学者を募集する高校を選び、県外入学者の枠(通常4人まで)を撤廃し、学校施設の整備を行っています。昨年度までに島前高校など10校が積極的県外募集校に指定され、今年度はさらに9校が積極的募集校に指定されました。この結果、県外入学者数は2009年時の52人から今年度は184人へと3.5倍も増えています。

県教育庁作成の「しまね留学ガイドブック2016」によると、島根県が留学先に選ばれている理由として「5つの魅力」を挙げています。
(1) 公立高校で寮の数が日本一
(2) 少ない、小さい、あまりない、だからいい
(3) 本物の自然や文化、人情を堪能できる3年間
(4) 地球を舞台に、最先端の21世紀型学習
(5) 多彩に燃える部活にチャレンジ
今年度の県外入学者を出身地別に見ると、一番多いのが近畿地方で35%、次いで関東、中国地方がともに28%となっています。この結果から、都市圏からの入学者が多いことがうかがえます。

教育の魅力化予算について語る江角リーダー

教育の魅力化予算について語る江角リーダー

江角リーダーは、このプロジェクトが来年度から「高校の魅力化」から県内の小中高校全体に拡大され、「教育の魅力化」になると語りました。予算額は現在詰めている段階ですが、年間数千万円規模から億単位に増える可能性があることを示唆しました。また、教育の方向性については「5教科の点数を上げるだけではもうやっていけない段階にきている。それと同時に、人間力を養おうというのが教育の魅力化です。文部科学省も2020年度から大学の入試改革を行う方針で検討しているので、その動きを注視していきたい」と話していました。

学校の魅力化を推進している岩本さんに、今後の計画について聞きました。岩本さんは、地域での教育改革のモデルはできたと語り、「これから全国に広げるに当たり、都道府県のシステムチェンジを起こしていきたい。教職員も県単位で採用し、高校入試も県単位で変えようとすると、県レベルまでシステムを変えないといけない。今後これを3年くらいかけてやっていきたい」と話しました。

さらに、国との関係について「文科省は入試改革をやろうとしているので、我々も国に要望を出していきたい。文科省は理念としては我々と同じと思うが、具体化するときに既成勢力に押し戻されないよう、モデルを作成して働きかけていきたい」と話していました。
また、日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム(9月下旬開催)で特別イノベーターの最優秀賞に選ばれたことについて「我々のプロジェクトを本当に価値のあるものと認めていただき、今後の活動に確信が持てました」と述べ、授賞を感謝しました。日本財団は年間1億円を上限に3年間、このプロジェクトを支援していく方針です。

町長室でインタビューに答える山内・海士町長

町長室でインタビューに答える山内・海士町長

学校の魅力化の原点である海士町の山内道雄町長に地元の期待を聞きました。岩本さんの結婚式で媒酌人を務めたという山内町長は「彼の本気度に敬意を評している。島根だけでは意味がないので、日本の教育を変えてもらいたい。彼なら、やってくれると思う」と語りました。また、教育の魅力化による波及効果について「わが町は平成の大合併の時、近隣町村と合併はしないと宣言した。ハコモノをいくつも作れば町は死んでしまう。モノづくりと人づくりで持続する社会を作っていきたい」と意欲を燃やしていました。

一方、生涯学習と街づくりが専門の牧野篤・東京大学大学院教育学研究科教授に、「学校の魅力化」プロジェクトの意義と今後の見通しについて聞きました。
「日本には学校ほど整備されたシステムはないので、学校に目をつけたのはすばらしい。住民からすれば学校がなくなることに反対するのは当然で、それを利用しながら社会改革を図ることに期待したい。気になるのは、小さな学校単位で成功したモデルを普遍化できるかどうかだ。各地の特色に合わせて計画を作成しないといけないので、そこをどうクリアーするかが問題だ。今後、どういう形で全国にスケールアウト(拡散)していくかに関心がある」
牧野教授自身も同様の問題にぶつかったことがあるといい、「難しい課題だが、ぜひやって欲しい」とエールを送っていました。

研究室で学校の魅力化について語る牧野・東大大学院教育学研究科教授

研究室で学校の魅力化について語る牧野・東大大学院教育学研究科教授



岩本さんが主導する「学校の魅力化」プロジェクトは来年度から島根県で本格化しますが、都道府県レベルから全国へ拡散するのはこれからです。地域から全国へ広がるまでには解決すべき課題がまだまだありそうですが、岩本さんらの士気は高く、今後の動きが注目されます。

文科省の大学入試改革
大学入試センター試験が2020年1月(2019年度)の実施を最後に廃止され、新しい共通テストに移行する。現行の試験は1990年から続けられてきたが、文科省は「これからの社会では知識の量だけでなく、自ら問題を発見し、答えや新しい価値を生み出す力が重要になる」として新しいテストへの移行を決めた。2020年からは、マークシート式に加え、記述式の試験も始まり、より思考力や判断力が必要なテストになるという。


(終わり)


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● 日本財団ソーシャルイノベーションフォーラム2016 ウェブサイト












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