2016年10月31日(Mon)
異才発掘プロジェクトROCKET海外研修2016
サイバスロンやアウシュビッツへ
「人間」「障害」「優生思想」を考える 「異才発掘プロジェクト ROCKET」に参加する小学6年〜高校1年の6人が、10月6日から9日間、スイス、ドイツ、ポーランドを巡る研修旅行に参加しました。主な訪問先は、10月8日にスイスで開催された「サイバスロン第1回国際大会」と、ナチス・ドイツのアーリア人至上主義に基づいた優生政策により多くのユダヤ人が虐殺されたアウシュビッツ強制収容所(ポーランド)や障害者が殺されたハダマー精神病院(ドイツ)。研修を通じて、何をもって「障害」とするか、優生思想は過去のものなのか、テクノロジーを人間がどう取り入れていくべきかなど、多角的に考えてもらう目的で企画されました。 ![]() 研修旅行に参加したROCKETスカラー候補生6人 |
プロジェクトでは、9月に海外研修の実施を発表。「サイバスロンとアウシュビッツを巡りながら近代の文明を考える旅」というテーマだけを提示し、参加希望者を募りました。28人のプロジェクト参加者(スカラー候補生)のうち、12人が旅の目的や何を学びたいかを自分なりに考え、申請書を提出。1期生4人、2期生2人の6人が研修メンバーに選ばれました。 ここでは、研修の様子を写真で紹介します。 【サイバスロン第1回国際大会】 サイバスロンは、電動の義手や義足、車いすを使って、障害者アスリートが速さと正確さを競う競技会。世界中から25カ国66チームが参加。日本からもメルティンMMIなど3チームが日本財団の支援により参加しました。 科学者や技術者を目指す子どもは、最新のテクノロジーに目が釘付けになっていました。 ![]() ![]() ![]() 出場した日本チームの好意で、子どもたちが技術者やパイロット(障害者アスリート)に質問できる機会が設けられた 【アウシュビッツ強制収容所】 ナチス・ドイツが第二次世界大戦中の1940〜45年にかけて100万人ものユダヤ人を虐殺した、ポーランド南部の都市・クラクフにあるアウシュビッツ強制収容所を見学。 子どもたちは案内してくれた現地ガイドに、「(仲間の身代わりになって処刑された)コルベ神父についてもっと知りたい」、「殺害に使用したガスは、改良中だったのか」などと積極的に質問。見学後、現地ガイドは、「大人からもされたことのない質問がたくさんあって、答えに窮する場面もあった。もっと彼らと話したかった」とコメント。 ![]() ユダヤ人が収容された部屋 ![]() 収容者が連行される際に使われた列車のレプリカ ![]() ![]() ガイドの説明を聞きながら、強制収容所を言葉少なに歩く子どもたち 【ハダマー精神病院】 ドイツ中西部にある人口1万2000人の町ハダマーの丘の上にある病院。ナチスによる「安楽死計画(T4計画)」で、「生きるに値しない」と判断された障害者が1万人以上、1941年8月までの8カ月の間にガス室で殺されました。現在は犠牲者の写真などが貼られた展示室が設けられているほか、地下にはガス室や手術台、火葬場が残されています。 ![]() 犠牲者が埋葬された墓地から眺めるハダマーの町 ![]() 「将来的に障害者の人口比率が健常者を上回り、国の経済を圧迫する」と人々に思い込ませるためのポスター ![]() 研究のために遺体から脳を摘出するほか、換金できる金歯などを抜き取るために使われた手術台 子どもたちの1人はショックで嘔吐。法制化されていなかったにもかかわらず安楽死計画が長期的に広範囲で行われていたことなどにも関心を示していました。 ![]() ガイドボランティアの話に聞き入る子どもたち 【討論会】 最終日には、子どもたちがこの旅で感じたことをぶつけ合う討論会を実施。優生思想への嫌悪と理解、テクノロジーで人間をサイボーグ化することの是非など、時には立ち上がって身振り手振りを加えながら熱くぶつけ合いました。 参加した1人は、「僕たちは社会に適応しづらいところがあると思う。でも、どんなに扱いづらい人間でも、自分ですら自分を扱いにくい時があったとしても、僕はこのままの脳みそで、このままの考え方でいたい」と話しました。 ![]() 白熱した討論会の様子 ● 異才発掘プロジェクト ROCKET ウェブサイト |