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2016年04月04日(Mon)
人口最少の鳥取県で「地方創生のモデル」づくり
(リベラルタイム 2016年5月号掲載)
日本財団理事長 尾形 武寿


Liberal.png「スタバ(スターバックスコーヒー)はないけど日本一の砂場(鳥取砂丘)がある」。平井伸治知事のこんな一言が評判を呼んだ鳥取県と昨年11月、地方創生に向けた共同プロジェクトを立ち上げた。

同県の人口は昨年10月現在、47都道府県中最少の57万3千人。2013年には1974年以来39年振りに58万人を割った。九六年以降、転出者が転入者を上回る社会減、死亡数が出生数を上回る自然減が続き、人口減少に歯止めが掛かる気配はない。

障害者が暮らしやすい「あいサポート」運動など思いやりの風土があり、ボランティア活動も盛ん。2013年10月には、手話を日本語と同様の独立した言語と認める手話言語条例を全国に先駆けて制定し、研究段階から日本財団が事務局を努めたこともあり、今回の共同プロジェクトとなった。

プロジェクトでは、住み慣れた地域での生活を守る中山間地域の生活支援や将来の担い手・リーダーを育てる人材育成、難病の子どもや家族が孤立しないように支え合う地域生活支援、障害者スポーツの拠点づくりなど九項目を中心に「日本一のボランティア推進県」を目指す。

総務省が2月発表した15年の国勢調査の速報値によると、我国の人口は前回10年の国勢調査に比べ94万人減った。人口減少は今後、一層、加速する。

これに対し政府は14年「まち・ひと・しごと創生本部」を設置、総合戦略を打ち出し、現在、地方自治体が「長期人口ビジョン」、「地方版総合戦略」の策定を急いでいる。

しかし行政の対応は法律や規則に縛られ、遅れが目立つ東日本大震災の復興を見るまでもなく、ともすれば柔軟性を欠く。全国で700万人に上る買い物難民対策一つとっても然り。地域社会の崩壊を防ぐためにも中山間地の買い物難民対策が急務となっている。

例えば鳥取県西部、名峰「大山」の南麓に位置する江府町。3千259人(14年)の町人口のうち65歳以上の住民は全国平均の1.6倍、42%にも上る。

人口も最近十年間で15%近く減り、商店の数なども減少しているようで、移動が困難な高齢者が生活必需品を確保する上で移動販売車への依存度は大きい。

ところが現行法では郵便物や医薬品を一緒に運ぶことはできない。

大型の拠点基地を設け、スーパーマーケットや病院、在宅看護センターなどと連携した上で、各種サービスを一括して、定期的に届けるような工夫が急務であろう。

足腰が不自由になっても出掛けなければならない用は誰にもある。鳥取県では現在七百台のタクシーが営業しているが、うち約二百台を車イスでも乗れるユニバーサルデザインに切り替えれば、高齢者や障害者の足の確保につながる。

課題は山積しており、アイデアも尽きない。県内19の市町村や商工会議所、農業協同組合、医師会、大学、新聞社などが参加する顧問団も立ち上がり、県を挙げた支援態勢も整った。

東日本大震災の被災地復興は、壮大な地方創生の試みでもあり、我々はこの5年間、NPO(民間非営利団体)や企業とも協力して様々な取り組みを進めてきた。

鳥取のプロジェクトに活かせる教訓もたくさんある。日本財団職員を五年間、鳥取県庁に常駐させ、県の「元気づくり総本部」と一体になって万全を期したいと思う。

そうした試みの先に、他の自治体にも参考になるような地方創生のモデルがいくつか見えてくるのではないか、そんな熱い期待を持っている。






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