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2016年02月18日(Thu)
ブドウ栽培にはがまんが大切
世界の要人も認めるワインに
栃木県足利市「こころみ学園」


傾斜38度の急勾配の山あいに広がる、広大なブドウ畑
傾斜38度の急勾配の山あいに広がる、広大なブドウ畑

都心から電車に乗っておよそ1時間40分。さらに栃木県足利市のJR両毛線「足利駅」から車で20分ほど北に進むと、傾斜38度の急勾配の山あいに広がる、3ヘクタールの広大なブドウ畑が目に入ります。

栃木県足利市の障害者支援施設「こころみ学園」には、23歳から94歳の知的障害をもつ男女約100名が暮らしています。こころみ学園の園生は、このブドウ畑での作業や、椎茸の栽培を中心とした農作業をして暮らしています。

朝6:00頃に起床し、全員で掃除。朝食の準備も洗濯も、職員とともに園生自らが行います。
「貧乏でも良いから、汗をかいて働き、家族のように暮らす」これがこころみ学園の方針です。

 園生が暮らす「こころみ学園」の建物
園生が暮らす「こころみ学園」の建物

こころみ学園の基本的な作業のひとつに、椎茸の原木運びがあります。

椎茸栽培には多くの手間がかかります。90センチほどの長さに切った木に菌を打ち込み、季節などに応じて、原木を色々な場所に何度も移動させ、収穫まで1〜2年ほどかかります。

園生は山を上り下りして、原木を運ぶ作業を行います。山で仕事をすることで、自然と反射神経やバランス感覚、筋力が身につきます。山でいい加減な事をしたり、ふざけたりするとすぐにケガをしてしまうので、集中力もつきます。集中力がつくと、人の話も聞けるようになります。今まで言うことを聞かずに、すぐに暴れてだしてしまっていた園生も、山を何度も登り下りする原木運びを通して、集中力がつき、見違えるように落ち着いて、生き生きと仕事をするようになるそうです。

小屋に並べられた椎茸の原木
小屋に並べられた椎茸の原木

園生は、ぶどう畑での作業も行います。

ぶどう畑には、草刈りや石拾い、虫取りなど、1年を通して、やってもやってもやりきれない程たくさんの作業があります。傾斜38度のぶどう畑での作業は、椎茸の原木運びと同じように、バランス感覚や筋力、集中力が必要です。

ここで栽培したぶどうは、隣接するココ・ファーム・ワイナリーで醸造され、ワインになります。

ココ・ファーム・ワイナリーのワイン醸造所
ココ・ファーム・ワイナリーのワイン醸造所

ココ・ファーム・ワイナリーのワインは、2000年の九州・沖縄サミットの晩餐会や、2008年の洞爺湖サミットの夕食会でも振舞われていて、世界のワイン通の間でも有名です。

九州・沖縄サミットの晩餐会をコーディネートした世界的に有名なソムリエが、世界の要人をもてなすためのワインを捜し求め、見つけ出したのがココ・ファーム・ワイナリーのワインでした。

毎年11月第3土・日曜日には、ココ・ファーム・ワイナリーの一大イベント「収穫祭」が開催されます。新宿駅西口から直行バスがでる程の人気ぶりで、2日間で2万人近くが集まります。世界の要人に振舞われた実績や、収穫祭での盛況ぶりに見られる幅広い支持は、障害に対する同情ではなく、味で支持されていることを証明しています。

スパークリングワイン「NOVO」

九州・沖縄サミットの晩餐会で乾杯に
使われたスパークリングワイン「NOVO」

ワインは、手間をかければかけるほど、美味しくなるそうです。その手間が一般企業であればコストになるのでしょうが、ここでは園生にとっての訓練につながる作業になり、結果として多くのワイン通に支持される味が生まれました。こころみ学園を運営する社会福祉法人「こころみる会」の事務局長で、ココ・ファーム・ワイナリー総合事業部長の佐井正治さんは「同情の1本ではなく、味で勝負したい。障害者だからまずくても良いではなく、選ばれるものをつくりたい」と語りました。

佐井さんに伺ったお話の中で、印象深かったエピソードを紹介します。

「こころみ学園には、“こころみ4つのがまん”があります。暑いのがまん、寒いのがまん、眠たいの我慢、腹へったの我慢です。山やぶどう畑での作業はがまんの連続です。足利の夏はとても暑くなります。がまんして作業したあとの冷たい水やおいしいご飯は格別です。

こころみ学園には、全国各地の学校から毎日のように学生が研修にやってきます。ある夏、東京から一人の女子大学生が研修にやってきました。彼女は生まれてから一度も水道水を飲んだことが無いと言いました。市販の飲料水やウォーターサーバーの水しか飲んだことがなく、水道水を飲むのは怖いというのです。夏の暑い日、園生と一緒に延々とぶどう畑の草取りをしました。休憩時間になると、園生は水道の蛇口をひねってゴクゴクとおいしそうに水を飲みます。彼女は、最初は怖くてどうしても飲めなかったそうなのですが、のどの渇きに耐えかねて、初めて水道の蛇口をひねって水を飲んだそうです。そしたら彼女は、『水道水ってこんなにおいしかったのですね』と言いました。足利の水道水は普通の水道水です。何も特別な水ではありません。市販の飲料水やウォーターサーバーの水のほうがおいしいのは間違いありません。我慢して我慢して飲んだ水だからこそ美味しく感じたのでしょう。」

便利なアイテムが競うように世の中に溢れ、私たちが“我慢”する機会は減りました。効率を求める社会は、無駄を省き、どれだけ利益をあげるかに重点が置かれがちです。我慢することや、世の中は自分の思い通りにならないという事は、便利になればなるほど忘れがちのものです。こころみ学園の取り組みは、現代社会では忘れられがちな、汗をかき、我慢をすること、手間をかけることの大切さ、世の中は思い通りにならないということを教えてくれます。

日本財団は、施設の建設や改造、車椅子対応車の整備などを通して、長年に渡ってこころみる会の活動を支援しています。



● こころみ学園(ココ・ファーム・ワイナリー) ウェブサイト
タグ:こころみ学園
カテゴリ:障害者支援







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