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2016年02月04日(Thu)
漁師体験や防災教育、食・生物学習も
大津波被害の石巻でサイエンス合宿
異才発掘プロジェクト「ROCKET」


異才発掘プロジェクト「ROCKET」を進めている東京大学先端科学技術研究センター(東京都目黒区)と日本財団は1月29日〜2月3日まで6日間、東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた宮城県石巻市で、理科に興味のある子どもたちを対象にした併設イベント「サイエンス合宿」を開催しました。昨年12月から講義が始まった第2期生のスカラー13人とは別に、SIG(Special Interest Group)スカラーとして採用した55人の中から希望者10人が全国から参加しました。合宿のタイトルは「漁師体験を通して、生物とその研究法を学ぶ−6日間の過酷な生活に君は耐えられるか−」。津波で多くの児童が犠牲となった大川小学校を目の当たりにしたり、津波が押し寄せてきたときの様子を語り部から聞いたりする防災教育も、プログラムの柱の一つでした。

大川小学校の校舎前で話を聞く子どもたち。説明しているのはモリウミアスの安田健司さん(左)
大川小学校の校舎前で話を聞く子どもたち。説明しているのはモリウミアスの安田健司さん(左)

東京大学先端科学技術研究センターと日本財団は、今回を皮切りに3月末までに、イラスト、ロボット、数学、歴史などSIGスカラーの興味・関心に応じた合宿型のコンテンツを提供していきます。

ROCKETは突出した能力はあるものの、現状の教育環境になじめていない小・中学生を選抜し、継続的な学習保障や生活のサポートを提供するプログラムです。

合宿が実施されたのは石巻市雄勝町明神の学び場「モリウミアス」。雄勝町は森と海に囲まれた、リアス式の海岸線の町です。かつては4000人以上が住んでいましたが、過疎化、小子化が進む中で、大震災の津波が甚大な被害をもたらし、人口は約1000人に激減してしまいました。そんな雄勝地区の山間部で2002年を最後に閉校になっていた小学校校舎を再生した体験宿泊施設が「モリウミアス」です。運営しているのは公益社団法人「sweet treat 311」(雄勝町桑浜)、日本財団の支援実績もあります。

「ここまで津波が押し寄せてきました」と雄勝小所在地裏山で指を示す、語り部の徳永利枝さん
「ここまで津波が押し寄せてきました」と雄勝小所在地裏山で指を示す、語り部の徳永利枝さん

雄勝小児童が逃げた場所での説明風景。児童はもう一段上へ、もう一段上へとよじ登って避難したそうです
雄勝小児童が逃げた場所での説明風景。児童はもう一段上へ、もう一段上へとよじ登って避難したそうです

雄勝小の4年生の教室にあった時計。
雄勝小の4年生の教室にあった時計。「3時30分で止まっている、ということは、この時間に教室に津波が入ったということです」という説明がありました

雄勝町を襲った津波の映像を見る子どもたち
雄勝町を襲った津波の映像を見る子どもたち

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「津波は地形によって来かたも高さも変わります」と語り部の徳永利枝さん

合宿期間中「モリウミアスプログラム」として1月31日午後に実施した「防災教育」では、「雄勝花物語 ローズファクトリーガーデン」(雄勝町味噌作)を主催する一般社団法人「雄勝花物語」代表の一人・徳永利枝さんが、町に甚大な被害をもたらした津波の語り部として、ガーデンの一室で子どもたちに話をしました。雄勝花物語の資料によると、大津波での町の死者行方不明者は241人、その中でも海から一番遠い味噌作地区で最大犠牲者61人が出ました。徳永さんのお母さんも津波で亡くなったそうです。

徳永さんは「2011年3月11日までは、皆さんのような元気な子がいっぱいいた町でした。今はソーラーパネルがある場所に雄勝小学校がありました。その向かい側に、今は土が盛ってある場所には雄勝中学校がありました。それが今は何もなくなってしまいました」と述べて、津波が押し寄せてきた時のすさまじい映像を子どもたちに見せました。

「雄勝では一番高いところで21メートルまで津波が上がりました。雄勝小学校の所だと16メートル、ちょっと奥までいくと19メートルまで上がっています。確かに『10メートルの大津波が来ます』と大津波警報が出ていました。だけどここでは10メートルではなかったの。なぜだろう」と子どもたちに投げ掛けました。

「ここはリアス式海岸。津波は平野や谷、川など地形によって、来かたも高さも変わってきてしまいます。みんなそれが分かっていたら、もっと助かった人がいただろうな、と私たちは思っています。警報で『10メートル』といわれても、10メートルにならないところもある。でも地形によっては、それよりも高くなるところもあります。皆さん、自分のところに戻られたら、今どういう地形のところに住んでいるか、ぜひ考えてみてください」と述べました。また「先ほど『山に逃げればいい』という声もありましたが、逃げた後も、寒さや食べるもののこともあります。同じ山に逃げるのでも、明日、あさって先でも助かる山に逃げなくてはいけません」と話しました。

子どもたちはこの後、雄勝小があったところまで移動して、児童がどのような際どいいきさつで避難することができたのか徳永さんから説明を聞き、児童が学校裏山を、もう一段上へ、もう一段上へと急いで逃げた経路を途中までたどってみました。3時30分で針が止まった時計も紹介され、このとき4年生の教室に津波が流れこんできたことも学びました。さらに子どもたちは山一つ反対側に位置する大川小学校も見て、モリウミアスのスタッフ安田健司さんから、津波で起きた悲しいできごとについて話を聞きました。

モリウミアス全景

モリウミアス全景

「生物プログラム」でアイナメの解剖を間近で見詰めるこどもたち

「生物プログラム」でアイナメの解剖を間近で見詰める子どもたち



ホタテをつるしていたロープからピンを抜く作業。

ホタテをつるしていたロープからピンを抜く作業。見守るのはプロジェクトディレクターの中邑賢龍・東京大学先端科学技術研究センター教授

豚の餌やりもプログラム

豚の餌やりもプログラムの一環です



一連のプログラム中の漁師体験では、小学6年以上の高学年チームと、それ未満の低学年チームに分かれ、高学年チームは午前2時起き、低学年チームは午前6時起きで、それぞれ漁師さんのもとで、ホタテの水揚げや銀鮭の餌かせ、刺し網仕込み、ホタテロープのピン抜きなどの作業を学びました。ホタテの水揚げを体験した小学6年の女の子は「持ち上げて、積み上げて、清掃機にかけて、めっちゃ大変」と話していました。

このほか「モリウミアスプログラム」として「食」「生物」などについての学習もあり、総合研究院大学大学院博士課程の伊藤宗彦さんによる「世界の不思議な魚と魚の研究方法」と題した動物生態についての話には、子どもたちから積極的に質問や意見が上がっていました。伊藤さんは「世界にはまだまだ不思議な魚がいます。身近な生き物でも、じっくり見てみると不思議な行動をしていることもあります。じっくり本物を見てみよう」と呼び掛けました。またホタテさばきやアイナメの解剖などもあり、子どもたちは大いに関心を示していました。食事の後片付け、風呂わかし、夕食作り、掃除、ブタの餌やりも日課になっていました。



● 異才発掘プロジェクト ウェブサイト
● モリウミアス ウェブサイト






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