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2016年02月01日(Mon)
次世代にハンセン病を語り継ぐ
東京・六本木でビブリオバトル開催
チャンプ本に「生まれてはならない子として」


チャンプ本「生まれてはならない子として」のバトラー横森さん
チャンプ本「生まれてはならない子として」のバトラー横森さん

ハンセン病文学をテーマにした知的書評合戦ビブリオバトルが「世界ハンセン病の日」の1月31日、東京・六本木の多目的スペースumuで開催されました。ハンセン病の制圧と患者・回復者に対する偏見・差別の撤廃に向け「THINK NOW ハンセン病」のキャンペーンに取り組む日本財団の主催でハンセン病文学をテーマにビブリオバトルが行われるのは初めて。予選会を通過した5作品の中から、東京都羽村市の大学生横森夏穂里さんがバトラーとなった宮里良子著「生まれてはならない子として」(毎日新聞社)がチャンプ本に選ばれました。

普及委員会によると、ビブリオバトルは本の紹介を通じた文学イベント。「人を通して本を知る。本を通して人を知る」をキャッチコピーに全国的に広がっています。バトラーと呼ばれる発表参加者が面白いと思った本を5分間紹介、その内容に対し2〜3分間議論した後、参加者全員が「一番読みたくなった本」を投票しチャンプ本を決めます。

会場は150人の参加者で満席に
会場は150人の参加者で満席に

この日は、冒頭、日本財団の田南立也常務理事が「人類の負の遺産でもあるハンセン病を次世代に語り継いでもらうのが狙い」と企画の趣旨を説明、これを受け「バトル本選」が行われました。残る4作品は以下の通り。それぞれのバトラーが150人の参加者を前に「生きていくうえでヒントとなった」、「前を向いて生きようとする主人公の姿に感銘した」など、自ら選んだ作品の魅力を訴えました。

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ビブリオバトルバトラー(左上から時計回りに)平野紘佑さん、秋田悠太さん、大橋航平さん、ケ晶音さん、横森夏穂里さん

▼近藤宏一著「闇を光に ハンセン病を生きて」(みすず書房):11歳でハンセン病療養所長島愛生園に入り、2009年に83歳で亡くなるまで、ほぼ全期間を同園で過ごした著者が園の機関紙などに発表した随筆や詩などをまとめた作品。バトラーは平野紘佑さん。
▼ドリアン助川著「あん」(ポプラ社):公園に面した、どら焼き屋の雇われ店長が、味の良い「あん」を作る老婆を雇い店も評判をとるが、やがて老婆がかつてハンセン病患者だったとの噂が広まり店を去る、といったストーリー。昨年映画化され世界45か国で公開された。バトラーは秋田悠太さん。
▼石井光太著「蛍の森」(新潮社):四国の山村で起きた老人の連続失踪事件を舞台に、ハンセン病患者が受けた激しい差別をミステリータッチで描いたフィクション。バトラーは大学生大橋航平さん。
▼遠藤周作著「わたしが・棄てた・女」(講談社):ハンセン病の疑いを持たれ精密検査の結果、誤診と分かった女性の、かつて肉体関係があり彼女を捨てた男性に対する一途な愛と悲劇を描いた小説。発表は1963年。バトラーはケ晶音さん。

チャンプ本に選ばれた「生まれてはならない子として」は、両親がともにハンセン病患者として隔離収容された著者が、両親の過酷な人生、さらに進学や恋愛、結婚生活、親戚との確執など苦しみを通じて尊厳を取り戻す姿を綴った作品。バトラーの横森さんは「ハンセン病文学に触れる中で一番印象に残り、大切にしてきた」と紹介。投票の結果、「蛍の森」と同数となり、同点決勝の結果、チャンプ本に選ばれ、日本財団から10万円の旅行券が贈られました。

記念撮影するビブリオバトル参加者
記念撮影するビブリオバトル参加者

また表彰に先立ちハンセン病患者・回復者・支援者の国際ネットワークIDEAの日本代表を務める森元美代治氏、「あん」の著者ドリアン助川氏、女優の中江有里氏によるスペシャル・トーク「文学とハンセン病」も行われました。森元さんは中学3年でハンセン病と診断され東京・多摩全生園などに入園経験を持つ。中江さんは大学の卒業論文にハンセン病で隔離生活を余儀なくされながら「いのちの初夜」などの作品を残した北条民雄を取り上げ、ドリアン助川氏は、森元さんとの交友を通じて「あん」を執筆しました。

「文学とハンセン病」のトークイベント
「文学とハンセン病」のトークイベントも。写真右からドリアン助川氏、中江氏、森元氏、司会のバロン山崎氏

トークの中で森元氏は「若い人が(患者や回復者に対する)同情ではなく、私たちと友達になることで、この問題と真剣にかかわってほしい」と訴え、中江氏は「ハンセン病を知ることが自分を考えるきっかけになる」と指摘。ドリアン助川氏は多摩全生園にあるハンセン病資料館を取り上げ、「ここを訪れると、すごい力をもらって帰ることができる」と自らの訪問体験を披露しました。

会場も大きく盛り上がり、ビブリオバトルに初めて参加したという東京都内の女性は「日ごろ忘れている差別の問題を考え直すいい機会になった」と感想を語っていました。






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