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2015年09月18日(Fri)
発達障害児・者とともに歩む!
「全国規模で取り組む体制ができればいい」
五十嵐全国自閉症者施設協議会会長に聞く


自閉症やアスペルガー症候群などの発達障害児・者への支援を行うスーパーバイザーを養成する実務研修が今、全国各地の障害者施設で進められている。そこで、スーパーバイザー研修の“発祥の地”、大分県豊後大野市犬飼町にある社会福祉法人・萌葱の郷(もえぎのさと)を訪れ、五十嵐康郎・全国自閉症者施設協議会会長(68)に、全国に先駆けて県単位でスーパーバイザー養成研修を始めた理由などを聞いた。

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実務研修の開講式で挨拶する五十嵐全国自閉症者施設協議会会長

「自分の生い立ちを知って・・・」

―日本福祉大学を卒業後、社会福祉法人・滝乃川学園児童部に就職され、18年間勤務されましたが、そもそも福祉の道を選んだのはなぜですか。

私はあまり他人に話していませんが、実は産みの親を知らないのです。私は香川県坂出市の生まれですが、父は私が2、3歳のころ、がんで死亡したそうです。兄弟が4人もいたので、母が経済的に大変だというので、一番下の私が養子に出されたのです。それを知ったのは高校受験のころで、自分の生い立ちを知って、もし今の養父母にもらわれなければ養護施設に行ったかも知れないと思い、もうこれ以上、親の世話にはなりたくないと、日本福祉大の2部(夜間)へ行くことにしたのです。高校時代にボランティア活動を始め、養護施設などを慰問したことも、この道に進むきっかけになっていると思います。


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インタビューに答える五十嵐会長


「初めて担当したのが自閉症児」

―発達障害児に初めて出会ったのはいつですか。

高校時代、同級生を募って知的障害児の施設にボランティアに行ったのが最初です。かれらはわれわれの言うことを聞こうとせず、黒板に魚のうろこの絵を書き続けていました。
本格的に向き合うことになったのは、滝乃川学園に就職して児童部に配属されてからです。初めて担当したのは知的障害も重い、自閉症の児童9人でした。ちょうど前の年に職員15人が辞めて入れ替わったので、担当者4人の中で入ったばかりの私が責任者になったのです。


「座敷牢のようでした」

―入所していた児童はどういう状態だったのですか。

7、8歳の児童が中心だったのですが、みな飛出すので部屋は全部カギがかかっていて、天井や壁にはベニヤ板が貼ってありました。夏は部屋を閉め切っていたので、悪臭がひどく、座敷牢のようでしたね。私は「子どもたちに普通の生活をさせてやりたい」と思い、まず環境整備に努めました。窓に張ってあったベニヤ板を厚いガラス戸に変え、網戸のフェンスを付けて風が通るようにした。それから児童たちを外に出して散歩させたり、キャンプに連れて行ったりした。2、3年後にはカギは不要になり、行動障害も改善されました。この時の経験が私の原点になっています。今でも施錠している施設も少なくありません。


「相手との関わりの中から援助を目指す」

―わが国の自閉症療育の第一人者といわれる石井哲夫さん(元白梅学園短大学長、昨年死亡)を師と仰いでいるそうですが、どういうところに感銘されたのですか。

石井先生は単なる訓練ではなく、受容的交流を通して子ども自身が成長・発達することを目指しており、セミナーでそれを実践してわれわれに見せてくれた。それがきっかけで石井先生との師弟関係が始まり、大分県に念願の施設を作ろうと思った時、石井先生が理事になって励ましてくれたのです。


「妻の出身地で土地探す」

―なぜ大分県で発達障害に特化した施設を作ったのですか。

私は若いころからそういう施設を作ろうと思っていたのですが、なかなか果たせなかった。ようやく自己資金のめどが立ったので、妻の出身地である大分県で土地を探していたところ、犬飼町(現在、合併して豊後大野市に)の有力者が協力してくださり、約3,500坪の土地を入手できました。1991年に知的障害者更生施設「めぶき園」(その後、障害者支援施設に移行)を設立したのを皮切りに、子どもデイサービスセンター「なごみ園」、ホームヘルプサービスセンター「らすかる」などを設立しました。


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作業所で働く入所者と指導する職員



「10年前に始めたきっかけは」

―大分県独自に発達障害者支援専門員養成研修を10年前に始めたきっかけは何ですか。

親御さんにアンケート調査をしたら、発達障害を支援してくれる専門家が必要だという回答が一番多かったのです。われわれが大分県の発達障害者支援センターをやっていたので、当法人が事務局になって研修を始めました。3年間で支援専門員を養成し、県の委託事業として施設などに派遣するというもので、毎年30人前後の専門員が巣立っています。この結果、関係機関や施設の連携がうまく図れるようになりました。これが全国に広まれば、全国規模で連携が取れるようになると思い、国の事業として取り上げるよう関係省庁に働きかけました。だが、採用されなかったので日本財団に持ちかけ、昨年度から実施しています。この事業が国の事業になれば、全国で発達障害に取組む態勢ができ、飛躍的に効果が上がるでしょう。


「やりがいの持てる施設に」

―福祉施設などの職員の待遇が全国的に問題になっていますが、何かいい解決策はありませんか。

長期計画をきちんと立て、リーダーシップを発揮して、やりがいのもてる施設にすればいいと思います。ウチの職員は全部で110人ですが、ほとんど辞めていません。今は待機中の保育士がいるほどです。一つには、私が自分の賃金を年金がもらえる程度に抑えていることをみんなが知っているからでしょう。また、リーダーシップを発揮する職員の給料やボーナスを改善するよう努めていることもあると思います。


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めぶき園の玄関に立つ五十嵐会長


「児童精神科医を置きたい」

―今後、さらに施設などを改善する計画はありますか。

児童精神科の医師を置きたいと考え、今準備中です。児童精神科の医師は県全体でも少ないので、地域全体にメリットがあると思います。私も昨年暮れに大動脈瘤の手術を受け、その際の大量出血で一時意識不明になりました。これからはあまり無理せず、健康に留意しながらライフワークに取組みたいと思います。


発達障害支援スーパーバイザー養成研修は日本自閉症協会と全国自閉症者施設協議会の主催で昨年から実施され、今年は2年目。講義中心の前期研修は7月24日から3日間、日本財団ビルで行われ、全国の医療、福祉、教育など実務に携わる85人が参加した。実務研修は現在、各地の障害者施設で実施中。来年3月中旬には後期研修が行われ、研修が終了する。全研修に参加し、報告書を提出すれば終了証が授与される。
(飯島一孝)


words.png【発達障害】子どもだけでなく、大人の間でも発達障害と診断されるケースが増えており、わが国では人口の10人に1人にのぼるともいわれている。発達障害は生まれつき脳の発達が通常と違っているため、幼児のうちから症状が現れ、通常の育児ではうまく行かないケースがある。しかし、先天的なハンディキャップではなく、支援のあり方によってハンディキャップになるかどうかが決まる。発達障害には、自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害などが含まれる。
(2015年8月10日付け当ブログ「発達障害支援スーパーバイザー養成研修始まる」を参照)








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