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2015年05月01日(Fri)
「子どもの貧困対策」に全力傾注!
(リベラルタイム 2015年6月号掲載)
日本財団理事長
尾形 武寿


Liberal.png 政府が4月2日に開催した「子供の未来応援国民運動」の発起人集会で日本財団は、内閣府、文部科学省、厚生労働省とともに運動の拠点となる事務局設置を担当することになった。

 発起人集会は、「子どもの貧困対策法」(昨年1月施行)に基づき昨夏に策定された「子どもの貧困対策大綱」を受け開催された。今後、子どもの貧困を解消するための幅広い体制を、官民協働で構築する出発点でもある。
 発起人には、安倍晋三首相のほか、山田啓二全国知事会会長、三村明夫日本商工会議所会頭、白石興二郎日本新聞協会会長ら、政府や地方自治体、経済界、さらに民間から計27人が名を連ね、国民運動としての広がりを持たせている。

 集会では「国民の力を結集して、全ての子どもたちが夢と希望を持って成長していける社会の実現を目指す」との趣意書を採択。民間資金を活用して基金を新設し運動を推進する、としている。

 基金を活用して、ひとり親家庭の子どもへの学習支援や、児童養護施設を退所した児童に対するアフターケア、貧困家庭の生活を安定させるための就労支援等、多彩な事業を展開する計画だ。

 運動を進める上で難問もある。まずは資金。民間から広く調達するのは、国民運動を盛り上げる上でも不可欠だが、現実にどこまで集まるか、フタを開けてみないとわからない。

 さらに子どもの貧困の定義もはっきりしない。虐待を受けている子ども、養護施設に預けられている子ども、望まない妊娠によって生を受けた子ども、小児難病の子ども・・・。対象は広く、どこまで支援の対象にできるか、資金・制度面だけでなく、医療技術面の進歩を待たなければ解決できない分野も少なくない。

 大綱では、児童養護施設に入所する子どもや、ひとり親家庭の子どもの進学率や就職率、ひとり親家庭の親の就業率等、達成目標となる指標を設定している。三府省が並立する現状を前にすると、それぞれの数字や思惑が独り歩きし、調整に時間が掛かるような事態も予想され、間に立つ日本財団の役割は大きいと自覚している。

 今回の「子供の未来応援国民運動」立ち上げでは、事前に政府から日本財団に発起人会への参加要請があった。恐らく夏にも立ち上がる事務局は日本財団に置かれ、基金創設に向けた資金集めや運用にも、主導的な役割を求められることになろう。

 我々は「子どもの貧国対策なら日本財団」といわれるような組織を目指し、難病の子どもや犯罪被害者の子弟の支援、特別養子縁組等、数多くの事業に取り組んでいる。発起人会への参加要請は、蓄積した豊富な経験や知見が評価された結果と自負している。

 厚労省の調査によると、平均的な所得の半分を下回る家庭で暮らす18歳未満の割合を示す「子どもの貧困率」は2012年、16.3%と過去最悪を更新した。

 明日の日本を切り拓くためにも、この国の未来を背負って立つ子どもの貧困問題に国を挙げて取り組むのは当然であり、対策を一層、強化していく必要がある。

 大綱に書かれた諸課題は、相互の関連を強めながら、総合的に推進してこそ実効が期待でき、そうした取り組みが少子化対策にもつながる。

 単なる事務局の管理者ではなく、できれば“総合プロデューサー”として、大きな視点から子どもの貧困対策に取り組みたいー。いささか力が入り過ぎかもしれないが、そんな思いで子ども達の貧困対策に一層の力を入れる覚悟でいる。(了)

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