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2015年04月14日(Tue)
「ひとがはじめから持っている力」を見つめ直そう
アール・ブリュット美術館の合同企画展 渋谷でイベント

120人を超える来場者
120人を超える来場者


 福島、京都、広島、高知の4府県にあるアール・ブリュット美術館の活動を後押ししようというイベントが4月12日、東京都渋谷区の渋谷ヒカリエで開かれた。地域で活動する各館の連携を強め、互いに積極的に発信していく―4館の美術館が目指すものを東京から全国に訴えるシリーズ「東京フォーラム」。前年に続き2回目となる今回は「いま考えるTURN」と銘打って開催された。
 「みずのき美術館」(京都府亀岡市)の奥山理子さん、「鞆の津ミュージアム」(広島県福山市)の櫛野展正さん、「はじまりの美術館」(福島県猪苗代町)の岡部兼芳さん、「藁工ミュージアム」(高知市)の松本志帆子さんの4館キュレーターがまず、それぞれが企画した特色ある展覧会の概要を報告した。

 続いて、企画展監修者の日比野克彦さん(東京芸術大学教授)と、かつてアール・ブリュット作品の展示を企画したことのある「ワタリウム美術館」(東京都渋谷区)の和多利浩一さんが、「ひとがはじめからもっている力って何だろう?」と題して対談。

TURN展監修者の日比野克彦さん ワタリウム美術館の和多利浩一さん
TURN展監修者の日比野克彦さん=左=、ワタリウム美術館の和多利浩一さん


 最後に約120人の参加者全員が多くの小グループに分かれて、アール・ブリュット美術館の新しい可能性などについて話し合った。

進行役は「働き方研究家」の西村佳哲さん 5グループ・ディスカッションの様子
進行役は「働き方研究家」の西村佳哲さん=左=、グループ・ディスカッションの様子


 障がい者支援施設を運営する法人が開設した4館の美術館は2014年11月から、日本財団(東京都港区)と協力して、初の合同企画展「TURN/陸から海へ(ひとがはじめからもっている力)」を順次開催中だ。日比野さんや新進気鋭の作家らによるアール・ブリュット作品だけでなく、各館独自のプロジェクトによるユニークな作品も多数展示。

 これまでに、みずのき美術館(14年11月8日〜15年1月12日)、鞆の津ミュージアム(15年2月1日〜3月29日)で開催を終え、この後、はじまりの美術館(同年4月18日〜6月28日)、藁工ミュージアム(同年7月12日〜9月23日)へと続く。

日比野克彦さん(中央)、和多利浩一さん(中央右)、西村佳哲さん(中央左)を囲む4館のキュレーターたち
日比野克彦さん(中央)、和多利浩一さん(中央右)、西村佳哲さん(中央左)を囲む4館のキュレーターたち


 アール・ブリュット美術館は現在、全国で5館が開館。地域との関係を育みながら、問題意識を持って挑戦を重ねている。今回はうち4館による合同企画で、日比野さんと4館構成の実行委員会が新しい可能性を問い直すために掲げた言葉が「TURN」だ。「地球上のすべての人に価値があることをアートは教えてくれる。みんなが同じように入っていけるフィールドとして『TURN』という言葉を使った」と日比野さん。

 周りを気にしながら外側に向いていく気持ちを少しだけ内側に向けて、気付かずにいた力を発見することができたら、目の前の壁を越えられるかもしれない―。合同企画展は「ひとがはじめから持っている力」を見詰め直し、再認識しようという試みだ。

 日本財団は、パリで高い評価を受けた日本のアール・ブリュット作品を多数所蔵・保存し、さまざまな展覧会への貸し出しを実施している。またアール・ブリュット作品を身近に親しむことができるような地域の拠点を増やすため、古民家や蔵を改修した美術館を整備したり、そこで活躍する人材の育成なども行ったりして、アール・ブリュット作品の魅力をより多くの人に届ける支援を続けている。(竹内博道)




ことば解説【アール・ブリュット】
 フランスの画家ジャン・デュビュッフェが創り出した言葉で、正規の芸術教育を受けていない人による、技巧や流行にとわられない芸術は、日本では「生(き)の芸術」などと訳される。「アウトサイダー・アート」と英訳され、世界各地に広まっている。欧米では芸術作品として価値を見出す市場が既に成立していて、アール・ブリュット作品を専門に扱うギャラリーも多数存在している。




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