2015年03月19日(Thu)
障害者の視点を前面に 新たな国際防災の枠組を採択
宮城県仙台市で3月14日から開催された第3回の国連防災世界会議は最終日の18日、今後15年間の国際防災の指針「仙台防災枠組2015-2030」を採択し閉会した。防災、減災に障害者の視点を打ち出しているのが特徴で、今後、各国の防災計画や秋にも国連総会で採択される国際社会の「持続可能な開発目標」(SDGs)などにも反映される。
国連防災世界会議の本体会議会場 |
障害者や外国からの出席者の姿が目立った 国連防災世界会議は国際的な防災戦略を議論する国連主催の会議で、1994年に横浜で第1回会議、2005年に神戸で第2回会議が開催され、神戸会議では15年まで10年間の「兵庫行動枠組」が打ち出された。3回目となる今回は、後継となる今後15年間の新たな国際防災の指針策定がテーマ。人的・経済的損失など7つの減災目標を盛り込んだ新たな枠組みをめぐり、先進国と途上国の意見調整が続けられ、18日深夜にようやく採択された。 障害者や高齢者に視点を置いた対策は兵庫行動枠組でも断片的に指摘されたが、神戸会議以降、ミャンマーで13万人を超す死者・行方不明者が出た大型サイクロン・ナルキス(08年5月)や31万人の死者が出たハイチ地震(10年1月)、さらに11年3月の東日本大震災と大災害が続いた。 いずれも多数の障害者や高齢者が犠牲となり、特に東日本大震災では障害者の死亡率が住民全体の死亡率の2倍に上ったことが初めて数字で明らかになった。避難生活の中で高齢者らが命を落とす震災関連死も3000人を超え、人的被害を減らす上でも障害者や高齢者対策の必要性が国際的にも広く認識され、今回、本体会議の中に「障害者と災害」をテーマにしたセッションが初めて盛り込まれた。 本体会議でスピーチを行う笹川会長 実現に尽力した日本財団の笹川陽平会長は「障害者の数は世界の人口の15%10億人に上る」としたうえ、「あらゆる障害者の参加を可能にする新たな行動枠組が採択されることで、災害発生時の人的被害の減少だけでなく、災害復興に障害者が参加する道も拓かれる」と期待を述べた。 今回は本体会議に国連の潘基文事務総長、安倍晋三首相のほか180を超える国から政府関係者らが参加、日本政府は途上国に18年まで4年間で40億ドル(約4800億円)の防災支援を行う方針を表明した。併せて約350のサイドイベントも開催され、1万人を超す各国政府関係者やNPO関係者らが参加した。 このうちの一つ「障害者の視点からのコミュニティ全体で備える防災まちづくりへの提言〜ポスト2015インクルーシブ防災〜」のフォーラムは仙台市や日本財団、仙台市障害者福祉協会などの主催。仙台駅近くの会場には障害者を含め300人近くが出席し、東日本大震災の経験を踏まえた大災害への備えや災害発生後の被災者支援拠点の運営サポートなどについて多角的な議論が行われた。 国連笹川防災賞を受賞したアラン・ラベル氏=中央= また2015年の国連笹川防災賞の受賞者にコスタリカの防災研究家アラン・ラベル氏が選ばれ、授賞式も行われた。国連笹川防災賞は1986年、日本財団の支援で設立され、防災分野で国際的に顕著な功績を挙げた個人や組織に贈られる。今回で24回目。世界44カ国から推薦があった88人の中から選考委員会が選んだ。(宮崎正) |