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2015年01月23日(Fri)
世界で活動する若者が報告 ハンセン病への理解を求めて
熱心に報告に耳を傾ける会場
熱心に報告に耳を傾ける会場


 世界各地のハンセン病コロニーで活動している若者が体験を語る「ハンセン病でつながる若者と世界」合同シンポジウムが1月22日、早稲田大学の公開授業として開催された。ハンセン病の差別撤廃を訴える「グローバル・アピール2015」のサイドイベントの一環で、中国やインドなどでの元患者らとの交流、生活改善の活動などが報告され、参加した約50人の学生らは差別が残る世界の現状に耳を傾けていた。
 ハンセン病は治療法が確立し、早期に治療すれば障害が残らず完全に治る病気だが、顔や体に変形をもたらすことから歴史的に人々から恐れられてきた。患者・回復者、その家族は社会から隔離され、教育や就職、結婚などででも差別されている。ハンセン病問題に向き合い活動している若者が、同世代に直接語りかけ、ハンセン病の知識を伝えて偏見・差別のない社会を目指す目的で、今回のシンポが取り組まれた。

ハンセン病を考えてと訴える西尾さん
ハンセン病を考えてと訴える西尾さん


 日本財団学生ボランティアセンター長の西尾雄志さんが主催者あいさつ。「ハンセン病が制圧されつつあるのは人類悲願の達成。日常生活の中でハンセン病をほとんど意識しないまま病気としては制圧されてきているので、人類が共通に犯してきた差別という罪に対する忘却の始まりにもなりかねない。差別を受けたハンセン病患者の肉声を聞く人類最後の機会かもしれない。だからこそ若い世代にハンセン病を考えてほしい」と訴えた。

「JIA」の原田さん
「JIA」の原田さん


 オープニングは中国のNGO「JIA」で12年前から活動している原田燎太郎さん。ビデオでハンセン病回復者村の広東省・リンホウ村で村人との触れあい、地元の学生にワークキャンプへ誘い、交流の広がりを紹介。現在では学生だけでなく社会人も参加し、つながりのパートナーが増えている。

中国での活動を話すLIN Yinyueさん
中国での活動を話すLIN Yinyueさん


 「JIA」で活動している中国人女性LIN YinyueさんとZhang YiPingの2人も報告。ある回復村で2010年に女性の活動家が植樹に取り組んだが、翌年に事故で亡くなった。村人は彼女の死を悼んで木に「親情」と名付け、今では村人とワークキャンプ参加者が共通の使命で活動を続けている。

インドで自立の道を探る梶田さん=右=と安田さん=左
インドで自立の道を探る梶田さん=右=と安田さん=左


 世界最大のハンセン病発症国、インドで活動しているのが「ナマステ」の梶田恵理子さんと安田亜紀さん。インドのハンセン病の患者・回復者は、病気だけでなく、職業や身分を決定する「カースト」からも排除され、人としての扱いを受けられなくなっている。物乞いでしか生きていけず、3世代にわたる差別の連鎖となっている。梶田さんらはコロニーの若者と一緒に寝泊まりする協働型ワークキャンプを展開。コロニーのために何かを成し遂げる喜びを感じてもらい、自立への意欲を高めている。

 経済的な自立を図るためコロニーの女性の手に職を付ける指導をし、ストラップやマフラーなどの小物、アクセサリーを日本で販売している。現在10人の女性が従事しているという。

参加者に語りかける笹川会長
参加者に語りかける笹川会長


 日本財団の笹川良平会長も登壇。世界でハンセン病に取り組む財団の活動を紹介するビデオが上映された後に挨拶。「若い人にハンセン病問題をどう引き継ぐのか、私たちに課せられた使命だ。今回の皆さんの経験、取り組む強い意志が感じられて励まされた」と述べた。ボランティアに取り組んでいるのは素晴らしい、尊いことだが、勘違いする人もいる、と指摘した上で「活動は自分のため、1回しかない人生を心豊かにする、そのきっかけをいただいている。その結果が、人のために役立っている」と、目線を同じくすることの大切さを強調した。

多彩な質問が出た座談会
多彩な質問が出た座談会


 この後、笹川会長と報告者との座談会が開かれた。27日に宣言される「グローバル・アピール2015」が日本で初めて発表することの意義や、ハンセン病が社会にもたらす積極的な価値はどうなのか、さらにはリダーシップのあり方まで多彩な質疑が交わされた。

 活動報告ではベトナムや、国内での国立療養所での回復者との交流、海外でのハンセン病コロニーでの活動経験を生かし、東日本大震災で被害を受けた宮城県気仙沼市での町づくりの取り組みなどが紹介された。

 参加した学生らからは「自分たちのサークルでは高い問題意識が続かず、困っている。海外で継続して活動しているのを聞いて感動した」「どうしたらハンセン病への理解を広げていくのか、考えたい」など様々な感想が寄せられた。ハンセン病を考える輪が確実に広がっている。(花田攻)




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