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2014年11月27日(Thu)
【正論】地方創生に向け議員定数削減を
(産経新聞【正論】2014年11月27日掲載)

日本財団会長 
笹川 陽平 


seiron.png 急速に進む地方の人口減少を抑制し地域振興を図る「まち・ひと・しごと創生本部」がスタートした。成否は地域の行政、議会、住民がどこまで一体となって前向きの受け皿をつくれるかにかかる。

 日本では長年「三割自治」が続き、地方政治の“待ちの姿勢”が目立つ。ともすれば存在感も希薄で、とりわけ議会の不振が目立つ。最近も不明朗な政治活動費の釈明会見で号泣した前兵庫県議、東京都議のセクハラ・ヤジ、危険ドラッグ所持容疑で逮捕された前神奈川県議、航空機内での泥酔、暴言のうえ辞職した北海道議など不祥事が相次ぎ、地方議会の存在意義が問われる事態になっている。
地方議員はボランティア

 筆者は4年前、本欄に掲載された拙稿「国会は事業仕分けの聖域なのか」で国会議員定数を「衆議院300、参議院100で十分」と書いた。今回は地方議会の定数を大幅に削減するよう提案する。現状は議員数が多すぎ緊張感を欠く結果になっていると考えるからだ。

 世界で最も住みやすい街といわれるカナダ・バンクーバー市。人口約60万人、議長を務める市長も含め市議会の定数は11、議員一人当たりの報酬は市民の平均的収入である年間約6万8千カナダj(約711万円)。生業を持つ議員が多いのと市民の傍聴機会を増やすため、議会は原則、夕方に開会される。

 何も同市が特殊なのではない。もともと欧米の地方議会は名誉職、ボランティアの色彩が強く、大都市では年間900万円(ニューヨーク市)といった例もあるが、米国の平均報酬は約400万円、英仏両国では多くて数十万円、無報酬の自治体も多く、議員数も10〜20人が標準だ。

 これに対し日本の同規模の都市の議員定数は多くが50前後。月70万円を超す報酬に期末手当て、さらに号泣議員で問題となった政務活動費を加えると年間収入は優にバンクーバーの2倍を超す。

 日本も戦前の地方議会は有力者による名誉職の性格が強かった。しかし戦後のGHQ(連合国軍総司令部)による一連の改革の中で地方議会の定数、報酬とも高い数字が定着することになった。

 現在、地方議員数は都道府県議会、市区町村議会を合わせ約3万5千人。平成の大合併で1万人以上減り、住民に対する直接説明会の開催などを盛り込んだ議会基本条例の制定など改革を模索する動きも広がっている。 

役割をはたしていない議会

 地方政治は首長、議員がともに直接選挙で選ばれ、相互監視を建前とする。議会には税金の使途など行政に対するチェック機能、条例など積極的な政策提言が期待されている。しかし現状は、条例の95%が首長提案、99%は原案通り可決されており、議会が本来の役割を果たしているとはいえない。

 加えて多くの議会が委員会審議を原則非公開としており、住民にとって個々の議員活動は極めて見えにくい。高い報酬と議会の平日開催が議員の専業・職業化を生み、議会活動が形骸化・劣化する結果にもなっている。地方選の投票率が長期低落傾向にあるのも、ここに一番の原因がある。

 地方創生の動きは、民間研究機関・日本創成会議の分科会が5月、「約半数896の自治体が30年後に消滅する恐れがある」との“衝撃の予測”を公表したことから加速した。

 政府は「経済財政運営の指針(骨太の方針)」で50年後も維持する人口目標を一億人に設定、今後5年間の総合戦略を打ち出した。地域再生法など関連法の整備、さらに自治体への財源、権限委譲も進める方針だ。

再生にかける決意と覚悟

 今後は都道府県議会が中心となって、それぞれの将来ビジョンをまとめる番だ。地方再生の主役は言うまでもなく地方である。これまでのように地方交付税や国庫支出金を待つだけでは何も進まない。行政と議会が住民の意見を取り込み、地域全体が参加する再生の枠組みこそ求められる。

 そのためには地方の事情に精通し、住民とじかに接する議員こそ中核の役割を果たすべきである。バンクーバーのように夕方に議会や委員会を開催し、住民との直接対話の機会を増やすのも一考だ。

 そのためにも現在の地方議会の議員定数は明らかに多すぎる。

 名古屋市では河村たかし市長が議員定数、報酬の半減を提案し、報酬削減が実現した。これにより名古屋市議会の議員報酬は全国2位から207位(全国議員報酬ランキング)に落ちたとされるが、特段の不都合が出たとは聞かない。今後は議会が自ら定数・報酬削減を提案、住民の信頼回復を図るぐらいの度量があってもいい。

 人口減少はわが国が初めて直面する事態。どう乗り切るか、世界も注目している。江戸時代の人口はピーク時でも約3200万人だった。それでも全国約270の藩がそれぞれの創意工夫で独自の産業、文化を育てた。アイデアは生まれてくる。必要なのは再生にかける決意と覚悟である。
タグ:まちづくり 地域 正論
カテゴリ:正論





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