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2014年11月13日(Thu)
日本とインフラなどで協調も インドネシアの新政権を展望 アズラ氏講演
講演するアズラ院長
講演するアズラ院長


 イスラーム思想研究の優れた歴史学者でインドネシア国立イスラーム大学院院長のアジュマルディ・アズラ氏が9月25日、東京・赤坂の日本財団ビルで「インドネシアにおけるイスラームと民主主義:選挙後の情勢展望」と題して公開講演し、ジョコ・ウィドド新大統領についてインフラ分野などで日本と強調する可能性を指摘した。会場にはイスラーム研究者やインドネシアに進出している企業など幅広い分野から参加者が集まった。
 アズラ氏は日本財団アジア・フェローシップ(API)事業の国際選考委員を長く務めてきており、福岡アジア文化賞学術研究賞を受賞したのを機に来日した。

会場の様子
会場の様子


 講演の中でアズラ氏は、インドネシアは文化的・民族的に非常に多様であるが、インドネシア建国5原則(パンチャシラ:唯一神への信仰、人道主義、インドネシアの統一、民主主義、社会的公正)に基づき統合されているとし、独立以来民主主義を受け入れてきたとする一方で、スハルト政権崩壊後の多党体制の下、イスラーム系の政党はその存在感を示すことに失敗してきたと解説した。

 今年7月に行われた総選挙におけるジョコ・ウィドド新大統領の勝利に対しては、「イメージ先行で決まらない政治にうんざりした国民が問題解決者としての同大統領に期待した」結果だと分析。「政治の独立、自立可能な経済、強い国家」を打ち出し、インフラを中心とした産業、および人材開発を目指す新政権と日本との協調の可能性について述べた。

 会場からは多様な質問が出され、そのうち国際社会において現在問題が深刻化しているイスラム国とインドネシアのイスラームとの関係についての質問に対し、インドネシアは穏健なイスラームであることを強調した。

挨拶する田南常務理事
挨拶する田南常務理事


 講演の冒頭、日本財団の田南立也常務理事は、東南アジアの諸国で社会貢献や文化交流のために様々な分野で活動する知的リーダーたちに研究交流の機会を提供するAPI事業について触れ、フェローシップの選考委員としてのみならず、自らがフェローらのロールモデルとしての役割を担っていただいたとアズラ氏を紹介。

 福岡アジア文化賞学術研究賞の受賞について「インドネシアにおける多元的で調和ある市民社会の形成に尽力し、イスラーム文化の深い理解に基づく実践的な活動が国際社会においても異文化間の相互理解に大きく貢献した」と祝福した。

アズラ院長を紹介する中村千葉大学名誉教授
アズラ院長を紹介する中村千葉大学名誉教授


 それを受け、司会を務めた千葉大学の中村光男名誉教授が、生い立ちから研究者として、教育者として、そして公共的知識人としてのアズラ氏の功績を紹介。革新的な教育者で中道・穏健なイスラームを説く知識人でもある「新政権における知恵袋の一人」として同氏を迎えた。

 APIフェローシップは今年度、14年間で340名近いフェローを輩出した実績を残し、プログラムを終了する。これまでの成果を記念し、11月14日(金)に広島で「アジアの災害と紛争の現場から~市民参加と協働による創造的復興~」と題する公開市民フォーラムを開催する。

本フォーラムは、基調講演者として、「アジアのノーベル賞」とも言われるマグサイサイ賞受賞者であるミャンマーのラーパイ・センロー女史、さらに東日本大震災を題材としたドキュメンタリー映画「311」などで知られる映画監督の森達也氏を迎え、一般に公開される。これに合わせてアズラ氏も再来日する。(田中麻紀子)

公開フォーラムについての詳細・申込みは 京都大学東南アジア研究所API事務局
(e-mail: api@cseas.kyoto-u-ac.jp Tel:075-753-7352/7348)まで。
http://www.api-fellowships.org/hiroshimaforum/
カテゴリ:世界





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