2014年01月28日(Tue)
ハンセン病への偏見の壁をなくす グローバル・アピール2014発表
ハンセン病患者・回復者に対する社会的差別の撤廃を訴える「グローバル・アピール2014」が世界39カ国・地域の国内人権委員会の連名で1月27日、ジャカルタで発表された。9回目となる今回は「スティグマ(社会的烙印)と差別をなくすため」と題し、「完治する病気となった今でも、差別は依然として残り、教育や雇用、結婚の機会を阻み、公共サービスへのアクセスを制限している」と指摘したうえで、「尊厳ある生活を送る権利を有する事を支持し、立ちはだかる残された社会的烙印と偏見の壁をなくすために協力する」とアピールした。
「グローバル・アピール2014」の発表の様子 |
ハンセン病は1980年代に有効な治療方法が確立され、患者数は85年の約540万人から、2012年には約20万人まで減少したが、就労や結婚など様々な場面で差別を受けているのが現状だ。2010年には国連総会でハンセン病患者・回復者とその家族に対する差別撤廃を決議し、付随した原則ガイドラインでは患者らの人権の促進・保護に関して特別な配慮をすることや、職業訓練の機会、適切な居住水準の確保などを各国政府に求めている。
グローバル・アピールは国際機関、各国政府、一般市民を対象にハンセン病に対する社会の誤解を解く必要性を訴えるもので、2006年から始まりこれまでノーベル平和賞受賞者や宗教指導者らが連名で発表した。今回署名した人権委員会はハンセン病多発国のインド、ブラジルをはじめアフリカ、ヨーロッパなど世界各地域に及んでいる。 アピールが発表されたのは同市内のホテル。WHO(世界保健機関)ハンセン病制圧特別大使、日本政府ハンセン病人権啓発大使を務めアピールを主導してきた笹川陽平・日本財団会長があいさつし、署名した各国人権委員会について患者らの人権を守り、様々な人権侵害を調査して政府に進言することや、市民社会と協力して継続的な啓発活動と一般向けのキャンペーンを実施するなど重要な役割を担っている、と意義を強調。「固い決意を持った人々が集まれば、社会から隔離している高くて厚い壁を壊し、差別のない社会を築くことができる」と呼び掛けた。アピールはインドネシアのハンセン病回復者と笹川会長、インドなどの人権委員会メンバーらが読み上げた。 アピールを読み上げるハンセン病回復者と笹川会長、人権委員会メンバー 式典に先立ち、同国のナフシア・ムボイ保健相が笹川会長と会談し、その中で同保健相は「人々にハンセン病に関する正しい知識を伝えるには宗教リーダーや映像を使った啓発、回復者が自身の体験を話すことが効果的だ。インドネシアでハンセン病をなくす夢をかなえられるように努力したい」と述べた。 インドネシイア政府ナフシア・ムボイ保健相と会談する笹川会長 アピールが発表されたインドネシアは、2000年に人口1万人に患者1人以下のハンセン病制圧国となったが、インド、ブラジルに次いで年間2万人の患者が発生する多発国の一つだ。回復者らがホテルで会合を開催しようとした際、他の客に迷惑がかかるとホテルから拒否されるなど偏見や差別が根強い中で、2007年に回復者ネットワークPerMaTa(インドネシアハンセン病患者・回復者自律協会)が設立。人権回復に精力的に取り組んでいる。日本財団は笹川記念保健協力財団を通じて高等教育を受けるための奨学金の支援や、経済的に自立できるように農業生産などへの融資プロジェクトを行ってきた。(花田攻) 会場には250人が集まった 回復者ネットワークPerMaTaによる写真展も開催 |
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