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2014年01月23日(Thu)
1本10円の善意
(朝雲 2014年1月23日掲載)

日本財団会長 
笹川 陽平 

 手前みそで恐縮だが、日本財団では2008年から「あなたの善意で社会は変わる」を標語に寄付型自動販売機・夢の貯金箱プロジェクトを進めている。

 飲料水1本ごとに10円を設置者から寄付してもらい、社会貢献に役立てる仕組みで、現在、設置台数は全国で約2000台。ミャンマーでの学校建設やホームホスピスの整備、犯罪被害者支援基金の設立などに活用されている。
 そして今回、少年院出院者や刑務所出所者が社会復帰に必要な技術や資格を取得する奨学金制度の立ち上げに向け、この関連では第1号となる寄付型自販機を福岡空港ビルに設置していただいた。

 犯罪白書によると、我が国の一般刑法犯は過去8年間、減少傾向にあるが、再犯者が占める割合は逆に増加、昨年は過去最高の45.3%に上り、法務省も12年7月、今後10年間に再犯を20%削減する目標を打ち出している。

 3回以上、刑務所に入所した人の再犯率は約60%、初犯の2.5倍に上る、とのデータもあり、再犯防止は犯罪を減らす上で喫緊の課題である。

 企業が親代わりとなって就労の場を提供する職親(しょくしん)プロジェクトなど意欲的な取り組みが始まっており、奨学金事業では福岡市で元受刑者らの社会復帰に取り組むヒューマン・ハーバー社と協力、当面、50人を対象に上限30万円の奨学金をスタートさせたいと考えている。

 必要な寄付型自販機は約300台。設置者から寄付される10円はもともと消費者の支払いの一部。
  
 内閣府が昨秋、発表した再犯防止に関する特別世論調査によると、刑務所入所者や非行で保護観察下にある人を企業が積極的に採用すべきだ、とする意見が60%に上った。

 10円が持つ意味が購入者に意識されれば再犯防止の裾野も広がり、寄付型自販機を設置する企業のCSR(企業の社会的責任)も上がる。

 現在、国内に設置されている自販機は約230万台。1本10円の寄付を年間に直すと、1台当たり平均5万円となる。10%が寄付型自販機に変われば年間100億円の“世直し資金”が得られる計算となる。

 同様の試みは、今後さらに広がろう。「1本10円の善意」が日本の新しい寄付文化となる日を夢見ている。
タグ:夢の貯金箱




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