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2014年01月14日(Tue)
魚の宝庫だった尖閣諸島/漁業者から聞き書き調査
 「魚の宝庫。びっくりするぐらい魚が獲れた」―東シナ海南西部に浮かぶ沖縄県・尖閣諸島海域に、戦前から戦後にかけて出漁した沖縄の漁業関係者に聞き取り調査し、漁業の実態をまとめた「尖閣研究」が刊行された。カツオ釣りや突き棒によるカジキ漁、一本釣りのマチ類漁など豊富な魚種を誇り、沖縄だけでなく県外や台湾の漁船がひしめきあい、島ではカツオ節の生産まで行われていた。今、尖閣諸島は領有権を主張する中国との間で緊張関係が続く。調査に応じた沖縄の漁業者らは「大事な漁場だ。安全に操業できる環境に一日でも早くしてほしい」と願っている。

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刊行された「尖閣研究」
 刊行したのは「尖閣諸島文献資料編纂会」(新納義馬会長)。沖縄県を拠点に尖閣諸島の情報を発信し、県内に埋もれている同諸島に関する資料の発掘・収集、保存を目的に活動している学術団体だ。日本財団の支援で2011年に同諸島海域の漁業資源調査と開発についての報告書をまとめ、今回は第2弾として漁業の聞き取り調査の報告書を作成した。下記の文章は同書からまとめた。

 国吉真一さん(78)。那覇地区漁協に所属し、終戦後の14、5歳ごろから父親らと深海一本釣りでマチ類(アオダイなど)を獲っていた。那覇からは往復で30時間かかる。「3日ほどで3、4t水揚げし、満船で帰ってきたものだ。一番の思い出は一晩で800kg釣ったことかな」。東シナ海南西部で風を避けるのは同諸島しかない。「シケのため魚釣島の島影で避難し、夜が明けてみると地元や内地、台湾の漁船で一杯だった」という。しかし乱獲などで漁獲は減少し、2005年からはマチ類の禁漁保護区が設定されている。
 
 戦前の1939年ごろからから尖閣に出ていた与那嶺三郎さん(90)。その当時は那覇の船だけだった。戦後になって台湾船がきたが、中国船の姿を見るようになったのは日本に復帰した1972年ごろからだという。「台湾も中国もおれたちの島だと言っているのは、おかしいよ」と話す。

 冬の時期、尖閣諸島周辺は脂がのったシマガツオが獲れる。宮古島伊良部の漢那一浩さん(65)は12月から翌年3月まで出漁する。以前は漁獲が多かったが、年々少なくなっており、全盛期は10隻余り出ていたが、今では漢那さんを含め2隻だけとなった。珍しい魚だからマグロより高く売れる。「今、出漁すると必ず海上保安庁の巡視船が寄ってきて船籍を確認し、離れていく」という。現在では保安庁に連絡してから出漁するようにしている。漢那さんは「子どもらのためにも良い漁場を残してあげたい。安心して仕事ができる漁業環境や条件を整備しないと。これは次の世代に対する義務だ」と力説する。

 1950、60年代に同諸島の1つ南小島でカツオ節製造が行われていた。話をするのは宮古島の渡真利浩さん(88)。島の近くでカツオを釣り、縦横1.5m、深さ2mの大きな釜に海水を入れて炊いた。燃料には流木を使った。石垣で造った乾燥場があり、10日間ぐらいでカツオ節6.6t製造し、宮古島に運んだという。

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島ではカツオ節の製造もおこなわれていた

 聞き取り調査は漁業だけでなく、本土復帰前後の領海警備関係者にも実施した。比嘉健次さん(88)は、1970年当時に琉球政府法務局出入管理庁の警備課長を務めていた。60年代に入り台湾漁民の不法操業、不正上陸があとを絶たず、68年に日本政府の調査団が実態調査した。比嘉さんによると、これを受けて当時、沖縄県を統治していた米国民政府は琉球政府に不法操業や上陸を禁止する警告板の設置を提案。70年7月に、尖閣5島に日米中の3カ国語で建立した。費用もすべて民政府が出したという。比嘉さんは「70年は中国が領有権を主張し出した時。この警告板は米国が日本領土であることを対外的に明確したもの」と指摘している。

 復帰前の沖縄に入域するには、他国は外交機関を通じて米高等弁務官の許可書が必要だった。68年に、台湾の企業が南小島の座礁船解体のため作業員を送り込む際、中華民国政府名の申請書を出し、許可を得て入域手続をしている。台湾が尖閣諸島を日本の領土であることを認めている証拠、と比嘉さんは述べている。

 調査に当たったのは同編纂会の事務局長・國吉真古さん(68)と子息のまこもさん(36)。話を聞いた漁業関係者は沖縄本島、宮古島、八重山諸島の計60人、領海警備では2人となっている。
國吉さん親子はあとがきの中で「尖閣諸島の漁業の全容は分かっていなかった。(今回の聞き取りで)大漁した場所や漁労の様子を昨日のように覚えており驚いた。しかし、高齢化し、年々亡くなりつつある。この機会を逸すれば、地元沖縄県の、日本側の、尖閣諸島海域の漁業の歴史的事実が永久に消え失せてしまい、国家にとって大きな損失だ」と指摘。この調査を契機に全体を網羅したさらなる聞き取りを期待する、と結んでいる。(花田攻)
 
【尖閣諸島とは】
魚釣島、南北・小島、久場島、大正島の5島と3つの岩礁から構成されている。最も大きい魚釣島までは沖縄本島から410km、石垣島と台湾からはそれぞれ170kmの距離にある。

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周辺地図

カテゴリ:海洋




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