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2013年12月24日(Tue)
日本の特異な現状、浮き彫り/養子縁組、国際シンポ開催
 特別養子縁組の普及に取り組む日本財団主催の国際シンポジウム「赤ちゃんがあたたかい家庭で育つ社会を目指して」が12月15日、東京・赤坂の日本財団ビルにNPO関係者ら約150人が出席して開かれた。5月に次いで2回目のシンポジウム開催。里親や養子縁組など家庭での養護が国際的な流れとなる中、9割近くが施設で暮らす日本の特異な現状を改めて浮き彫りにする内容となった。

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満席となったシンポ会場
 シンポジウムでは日本、英国、米国、韓国の養子縁組の現状と課題について朝日新聞GOLBEの後藤絵里記者、英国養子縁組里親委託機関協会(BAAF)のクリス・クリストフィデス講師、全米養子縁組協議会(NCFA)のミーガン・リンドセイ公共政策・教育部長、首都大学東京の姜恩和助教が報告した。

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朝日新聞GOLBEの後藤記者、BAAFのクリストフィデス講師

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NCFAのリンドセイ公共政策・教育部長、首都大学東京の姜助教

 まず各国の養子縁組件数。どの国も関連法、制度の改正に伴い年度ごとに変化があるが英国は概ね年間3000件、米国は国際養子縁組も含め約8万件、養子制度が戦後の混乱期に米軍人との間に生まれた子供の海外養子で始まった韓国はピーク時の年間平均9000人から大きく減ったものの、ここ2年間は2000件を超え、400件以下で推移する日本の数字の低さが際立つ形となっている。

 産みの親が育てることができない子供の社会的擁護をめぐっては近年、「永続的な家庭での養育」(パーマネンシーケア)を重視する考えが広まり、「施設から家庭へ」の流れが定着しつつある。米国の現状についてミーガン部長は、好ましい子どもの養育順位を(1)生みの親(2)生みの親の親戚(3)国内養子縁組(4)国際養子縁組(5)里親(6)施設―と位置付け対応していると説明した。

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パネルディスカッションも開催

 これに対し日本はこの10年間に児童養護施設が48ヶ所増の589ヵ所、乳児院も16ヶ所増の130ヵ所に拡大し、養護を必要とする子どもの9割が、米国が6番目に位置付けた施設で暮らす形となっている。その原因として後藤記者は、虐待問題に追われ養子縁組に十分対応できていない児童養護施設の現状や親権や血縁へのこだわりが強い日本の特性を指摘した。

 こうした違いもあって、最近、日本で問題となっている費用負担に関しても、英、米、韓国と日本では大きな違いが出ている。日本では児童養護施設、乳児院の運営費のほか里親に対する委託費などとして900億円を超す予算が組まれているが、養子縁組に取り組む民間団体に対する公的支援はない。

 これに対し英国では要した費用の全額を原則として公費で支援。米国も民間団体が扱った養子縁組に関しては費用負担が発生するが最終的に税法上の措置で軽減化が図られている。さらに韓国の場合は2007年以降、民間の養子縁組機関が養親からあっせん料を受けるのを禁止したのに続き、2013年からは公費による支援を1件当たり270万ウォン(約27万円)まで増額、養子縁組を後押しする態勢をとっている。

 これを受けパネルディスカッションでは費用の在り方から、養護が必要な子どもや養子縁組を希望する夫婦など関連情報の全国的なデータベース化など、養子縁組の促進に向け幅広い意見が出された。(宮崎正)
カテゴリ:こども・教育




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