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2013年08月01日(Thu)
トルコ百五十年の夢「海峡横断鉄道」完成
(リベラルタイム 2013年9月号掲載)
日本財団理事長
尾形 武寿


Liberal.png トルコの反政府デモが、やや鎮静化してきたようだ。日本財団では、奨学事業として、タジキスタンやトルクメニスタンなど、中央アジア五カ国からのトルコへの留学生を支援している。同事業で七月に来日した、学生や教師七人は、「あの程度のデモは日常的に行われている。エジプトのような大きな騒動に発展することはあり得ない」と強調していた。
 デモは、二〇二〇年の五輪招致を目指すイスタンブールの再開発計画に反対する、市民の抗議運動が発端だった。そこに、エルドアン政権が打ち出す、夜間のアルコール販売禁止など、イスラム色の強い政策に対する反発が結び付き、反政府デモに発展したとされている。

 トルコは人口約七千三百万人。建国の父、ケマル・アタチュルクが打ち出した政教分離原則に立ち、「公の場に宗教を持ち込まない」柔軟な世俗主義を基本路線に、混迷するイスラム世界の中で、ひと際目立つ経済発展を実現してきた。国民の九九%がイスラム教徒とされるが、デモに参加する若者にとって、政権が進めるイスラム化は政教分離に反し、自由の束縛につながる、と映っているのかもしれない。

 そんなトルコで、この秋、ヨーロッパとアジアをつなぐ、ボスポラス海峡横断鉄道の大事業が完成する。オスマントルコ時代の一八六〇年に設計図が描かれ、「トルコ国民百五十年の夢」と呼ばれるこの事業は、JICA(国際協力機構)が資金調達、大成建設が設計・施工を担当し、ヨーロッパ側のカズリチェシュメ、アジア側のアイリリクチェシュメ両駅間の一三・六kmをトンネルで結んだ。

 うち一・四kmはボスポラス海峡の海底を通る。海峡には橋が二本しかなく、交通渋滞がイスタンブールへの五輪招致の難点の一つとされていた。横断鉄道が開通すると、両駅は十分間で結ばれ、橋を渡るのに一時間以上かかる交通渋滞は、大幅に緩和される見通しだ。

 トルコは世界でも有数の親日国。一八九〇年、和歌山県串本沖で五百人を超す乗組員が死亡した、オスマン帝国の軍艦エルトゥールル号の遭難事故では、地元民が総出で六十九人を救助。日本海軍が遺品とともにオスマン帝国に送り届け、現在もトルコの教科書には、こうした史実が記載されている。

 イラン・イラク戦争さ中の一九八五年、トルコが特別機を出し、テヘランに足止めされた日本人二百六十五人を救出。日本に送り届けたのは、エ号事故への対応に対するお礼でもあった。

 工事は、二〇〇九年の完成を目指して〇四年に始まったが、ヨーロッパ側を中心に紀元前に遡る遺跡の発掘が相次ぎ、完成が大幅に遅れた。

 奨学事業の授与式出席のため、毎年イスタンブールを訪れ、その度に工事の完成を待ちわびる声を聞いた。海峡横断鉄道が、両国の友好をさらに促進する、新たな記念碑になるのは間違いない。同時に、この国でイスラム圏初の五輪が開催された場合の意義も感じてきた。

 そんな訳で、五月、米紙のインタビューで「イスラム諸国が共有しているのはアラー(神)だけで、お互いにけんかばかりしている」とした、猪瀬直樹東京都知事の発言には正直、戸惑いを覚えた。

 この発言は、他都市の批判を禁じたIOC(国際オリンピック委員会)の行動規範に触れる恐れがあるばかりか、イスラム圏からの無用の反発を招き、日本とトルコの友好に水を差しかねないと懸念したからだ。

 もちろん東京招致が決まれば、これに勝る喜びはない。マドリードを含め、最終的にどこが開催地となるか。さまざまな思いをこめ、九月のIOC総会に注目している。
タグ:トルコ
カテゴリ:世界




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