2011年02月08日(Tue)
【正論】スポーツ省を新設し国家戦略を
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(産経新聞【正論】2011年2月8日掲載)
日本財団会長 笹川 陽平 半世紀前の振興法は時代遅れ サッカー・アジア杯で日本が4度目の優勝を果たした。景気が低迷し、難問が山積する内政・外交を前に閉塞状況にあるこの国が久し振りに歓喜に沸いた。スポーツほど国民を奮い立たせ元気付けるものはない。国際社会での日本の存在感アップにもつながる。 |
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そんな中、今年は1961年にスポーツ振興法が制定されてちょうど50年、3月には与党の民主党がスポーツ基本法案を提出の予定と聞く。
文部科学省中心の日本のスポーツ行政は伝統的に学校・企業への依存度が高く、各国の制度に比べ遅れが目立ち、多様化するスポーツ環境への適応力にも欠ける。スポーツ基本法の制定とスポーツ省の新設で、スポーツ行政を抜本的に見直すときと考える。 半世紀前のスポーツ振興法は、3年後の東京五輪の根拠法として国の行動計画や施設整備、指導者養成、補助金などを定めている。だが全体に「学校教育における体育」が強く意識され、プロスポーツやスポーツを通じた国際貢献などに関する言及は希薄だ。 笹川スポーツ財団の調べによると、半世紀が経過した現在、ウオーキングやランニングなど手軽な運動を週2回以上する人は50%近くまで増え、フィットネスクラブも大幅に増加、観るスポーツも野球、相撲からサッカー、バスケット、ゴルフなどに広がっている。半面、文科省調査によると子供の体力・運動能力はこの10年間、低下が続き、日本のスポーツ文化を代表する学校の部活動も少子化の影響で野球やサッカーチームを1校だけで編成するのが難しい学校も増えている。 国際スポーツ界でも力が低下 世界、アジアのスポーツ勢力図も大きく変わった。昨年夏の北京五輪で日本が獲得した金メダルは9個、年末のアジア大会は48個。中国、韓国にも大きな後れをとり、石川遼選手の活躍で人気のゴルフも韓国パワーが吹き荒れ、昨年は男女とも韓国選手が国内ツアーの賞金王に輝いた。 2016年の五輪、2022年のワールドカップ招致も不発に終わり、年明けに行われたアジアサッカー連盟(AFC)の役員選挙ではAFC選出の国際サッカー連盟(FIFA)理事に立候補した田嶋幸三・日本協会副会長が落選、07年、山下泰裕氏が国際柔道連盟(IJF)の教育・コーチング理事の再任を阻まれたのに続き、国際スポーツ界での日本の発言力低下を招いている。 民主党は近く提出するスポーツ基本法案で年齢や性別、健常者、障害者の区別なく国民が広くスポーツを行う権利を中心にプロスポーツの支援強化やスポーツ仲裁制度、さらに都道府県単位をブロック単位に広げた国体開催、スポーツ庁の設置などを打ち出すという。 焦点のスポーツ庁は文科省の「スポーツ・青少年局」からスポーツ局を独立させ、厚生労働省が所管する障害者スポーツなど他省庁関連施策を統合した上、将来的にスポーツ庁に格上げする方向が検討されているようだ。この案でいけば文科省が引き続きスポーツ行政の中核を担うことになる。 しかし現実のスポーツ行政は施設関係が国土交通省、高齢者・障害者スポーツが厚労省など他省庁にまたがり、体力づくり関連予算一つ取っても国交省から文科省、厚労省、社会保険庁など7省庁に広がる。スポーツ行政を一新し強力なスポーツ外交を展開するためにも縦割り行政に横串を刺し、中核組織としてスポーツ省を新設するのが望ましい。 中国はスポーツを社会体育、学校体育、競技体育に分け、社会体育の一環として高齢者・障害者スポーツに取り組んでいる。韓国は国民体育振興法のほかにスポーツ産業振興法を制定してプロスポーツの育成を打ち出し、世界のプロスポーツ界で韓国選手が活躍する源になっている。 超党派で基本法を制定せよ スポーツ省の新設が行革の趣旨に反するといった消極論や文科省の省益との兼ね合いを懸念する声もあるようだが、半世紀振りにスポーツ政策を見直す以上、従来の形にとらわれない大胆で抜本的な切り口こそ必要である。 世界に通用するトップアスリートを育成するには国の支援が不可欠であり、メダリストが引退後も指導者として活躍できるような環境整備も必要となる。ヨーロッパ型の地域クラブの強化育成にも取り組むべきだ。 基本法をめぐり自民党がトップアスリート強化のトップダウン型、民主党が地域のスポーツ振興を重視するボトムアップ型と言われるが、すそ野が広がることでトップが高まり、トップが高まることですそ野も広がる。両者の考えは表裏一体であり、党を超えて対応する余地は十分あるはずだ。 一流のスポーツ選手は数十人の外交官にも増してその国の国際イメージを向上させるという。基本法とこれに基づく長期基本計画をまとめ明確な国家戦略を打ち出すことこそ、この国のスポーツ力を大きく飛躍させる道と考える。 |

サッカー・アジア杯で日本が4度目の優勝を果たした。景気が低迷し、難問が山積する内政・外交を前に閉塞状況にあるこの国が久し振りに歓喜に沸いた。スポーツほど国民を奮い立たせ元気付けるものはない。国際社会での日本の存在感アップにもつながる。

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