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2026年02月04日(Wed)
まずは「働きづらさ」抱える二百七十万人に就労の場を
(リベラルタイム 2026年3月号掲載)
日本財団会長 尾形 武寿

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日本財団は一九六二年の創立以来、幅広い社会事業に取り組んできた。障害者支援も、子ども、海洋、災害復興などと並ぶ柱の事業の一つ。多くの試みを経て二〇一八年に始めた「WORK!DIVERSITY(包摂的就労)」プロジェクトでは、引きこもりやニート、刑務所出所者ら“働きづらさ”を抱える千五百万人のうち二百七十万人は適切な支援や労働環境を整備すれば就労可能と判断した。

現実に二二年から千葉県、岐阜市、名古屋市など三県三市で就労困難者に働く機会を提供するモデル事業を進めた結果、支援対象とした計四百三十四人のうち二百四十五人が就業し、賃金も月平均で十一万六千円に上った。モデル事業を拡大整備すれば就労困難者が自立する有効な支援策に成り得ることが確認された。

 一方で現行の制度・法律は極めて複雑。一口で「働きづらさ」といっても、利用できる制度は違い、関係省庁も異なる。既存の制度・法律を整理する必要があり、政府も昨年六月の骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)で「すべての就労困難者に届く就労支援」をテーマに掲げている。

国会でも昨年十一月、超党派の議員による「包摂的就労促進議員連盟」が立ち上がり、会長に就任した野田聖子衆院議員は新法制定を視野に「労働力不足が深刻化する中、働きたいと思いながら働きづらさを抱える人たちを掘り起こしていく」と語った。

こうした動きと連動して、日本財団では個別の支援事業にも取り組んできた。例えば障害者福祉サービスの一つである就労継続支援B型事業所の利用者による国会図書館の図書デジタル化作業。就労支援施設にスキャナー機器を配備して訓練を進めた結果、当初、難色を示していた国会図書館担当者からもOKが出され、現在、全国十三ヵ所のB型事業所で作業に取り組んでいる。

宮城県では、同美里町でB型事業所を運営していた仙台市の社会福祉法人が二四年三月、これを廃止して給料を支払う脱福祉の新型野菜工場に衣替えした。経営は軌道に乗り、今春には福岡県でも同様の野菜工場がスタートする見通しだ。

B型事業所の数は全国で一万三千カ所、利用者は約三十万人に上る。平均工賃は月一万五千円〜二万円。双方の取り組みとも収入は十万円前後に上っており、障害者手当を合わせると二十万円近くになる。生活保護から脱却して納税者として自立し人生に自信を取り戻す人も増えた。
少子高齢化の進行により、我国の生産年齢人口(十五〜六十四歳)は一九九五年をピークに減少を続け、二〇五〇年には五千二百万人にまで減る(内閣府・高齢社会白書)。外国人労働者の数は二四年末で二百三十万人に上り、今後も増える。働きづらさを抱える二百七十万人の就業先の整備は、もっと積極的に進められる必要がある。

昨年十二月、日本財団が東京・有明で二日間にわたって開催した「就労支援フォーラムNIPPON 」には八千円の参加費にもかかわらず全国から申し込みが相次ぎ、一千五十人定員を早々に超えた。働きづらさを抱える人たちの就労支援に対する関心は高い。

ただしフォーラムでは、通常の事業所で就業できる就労継続支援A型事業で、半年以上、就労が続いた場合、自治体から加算金が支給される仕組みを悪用して運営業者が二十億円を受給するなど不正なケースが目立つ点も問題となった。

我国の障害者就労支援は一兆円を超える規模まで拡大し、今後さらに膨らむ。制度面の見直しも含め、「民」の立場から引き続き積極的に協力していく必要を痛感している。








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