2026年01月13日(Tue)
礼を失する「高市答弁への中国抗議」 恫喝に屈しない毅然とした態度を
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(リベラルタイム 2026年2月号掲載)
日本財団会長 尾形 武寿 ![]() 日中関係が極端に冷え切っている。約四十年間、民間交流の大切さを唱え日中民間交流に携わってきた立場から辟易たる思いを禁じ得ない。 発端になったのは昨年十一月七日の衆議院予算委員会で、台湾有事の際に集団的自衛権の行使が想定される「存立危機事態」について立憲民主党の岡田克也元幹事長が質したのに対する高市早苗総理の答弁。 |
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質疑の模様は繰り返し報じられており触れないが、答弁内容はあくまで台湾有事の際、アメリカ軍が来援した場合を前提にしており従来の政府見解の域を出ない。その意味で「中国の内政への乱暴な干渉だ」として撤回を求める中国の要求は意図的な「すり替え」と言え、撤回する必要はないと考える。 ただし、アメリカはこれまで台湾有事の際にどう対応するか、手の内を見せない「曖昧戦略」に徹し、我国も同様の姿勢を貫いてきた。一部に「手の内をさらす答弁」との批判があるのもそのためだ。 しかし、筆者はむしろ執拗ともいえる岡田氏の質問の狙いが何だったのか、あるいは一部メディアや評論家の無責任ともいえる総理批判により大きな疑問を感じる。 さらに遺憾なのは、答弁を受け自身のX(旧ツイッター)に「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」と書き込んだ中国の薛剣(シュエジェン)駐大阪総領事の言動や、関連して北京で行われた日中両外交当局の局長協議の後、中国の劉勁松(リュウジンソン)アジア局長がポケットに手を入れて我国の金井正彰外務省アジア大洋州局長に応対する映像を報じた中国の姿勢だ。 その後、書き込みは削除され、映像に関しては日本側が「日中間で調整されない形でプレスアレンジが行われた」と不快感を表明したが、国を代表する外交官あるいは外交の姿勢としてあるまじき対応である。 いずれも現場が指導部の意向を過度に「忖度」した結果のような気もするが、古来、「礼儀の国」と呼ばれてきた中国のイメージにあまりにそぐわない。筆者は長い中国との付き合いで、「礼」を尊ぶこの国の伝統を感じてきただけに余計その思いは強い。 中国政府はその後も「日本で中国人を狙った犯罪が多発している」など根拠のない理由で観光目的の日本渡航や留学の自粛、日本産海産物の事実上の輸入停止措置などを打ち出した。中国軍機による自衛隊機へのレーダー照射など異様な事態も続いている。 中国は台湾を、いずれ中国本土と統一すべき失われた領土と考えており、台湾有事に関する外国政府の発言をすべて内政干渉と見なす傾向にある。事態がどう発展するか予断を許さないが、周章狼狽した姿勢を見せるのは「恫喝」に屈したことになりかねない。毅然とした態度こそ必要だ。 中国からの訪日客は二〇二五年一月から十月までで八百二十万人。前年同期より四〇%以上増えた。日本への渡航自粛一つとっても、観光地におけるオーヴアツーリズムが緩和される、といった余裕ある態度こそ必要だ。 日本と同様、中国にも多様な意見がある。とかく隣国関係は難しいが、14億人の民すべてが「嫌日、反日」というわけではない。 中国全土で大規模な反日デモが吹き荒れた一二年の尖閣諸島国有化の際とは様相も違う。同時に日本では、次代を担う若者を中心に初の女性宰相となった高市総理に対する支持率も極めて高い。 対立するだけでは得るところはないし、相互理解を促進する民間交流は今後も必要である。互いに相手を知る知日派、知中派を少しでも増やす努力を引き続き続けていく決意でいる。 |



