2025年12月04日(Thu)
秩序ある共生社会の実現へ「日系の若者」の受入れ強化を
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(リベラルタイム 2026年1月号掲載)
日本財団会長 尾形 武寿 ![]() 外務省によると、現在、世界各国で暮らす日系人は約五百万人に上る。うち中南米諸国に住む日系人はブラジルの二百七十万人を筆頭に全体で三百八万人。一九〇八年、移民船「笠戸丸」で七百八十一人がブラジルに渡って以来、各国に移住した人たちの三世、四世だ。 |
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当時は貧困・人口過剰対策として国策で移民が推進され、先の大戦後も大規模なブラジル移住が行われた。コーヒー栽培など艱難辛苦の末、それぞれの国の発展に貢献し、地元民からも信頼される現在の地位を築いてきた。急速な少子化の進行で人口減少・労働力不足に直面する我国の現状を前にすると、隔世の感がある。
そんな中、日本財団では二〇〇三年に中南米十カ国とフィリピン、インドネシアを対象に「日系スカラーシップ・夢の実現プロジェクト」を立ち上げ、「海外日系人協会」(所在地/横浜市、田中克之理事長)を通じて計百七十八人の日本留学を支援してきた。今年度募集の第二十三期生から対象国に米国、カナダも加え、年十数人止まりだった定員を三十人に拡大し、従来の二倍近い百五十一人から応募があった。 海外日系人協会の書類選考を経て、それぞれの国で二次面接が行われ、筆者も十月、同協会や現地日系人会の関係者とともに選考委員としてペルー・リマとブラジル・サンパウロで計五十五人と面接した。最終的にブラジル十七人、ペルー五人など計七カ国の三十人が合格し来年五月に来日する。 最初の一年間は日本語学校に通学、以後、最長四年間、授業料や生活費の支援を受けながら、本人の希望に応じて大学や専門学校、企業などで日本知識や技能を身に付け、帰国後は日系人社会の発展や日本と本国の相互理解の促進に尽力する。 現在の留学支援制度は終了後の帰国を前提に、こんな思いを託して運営されてきた。しかし、発足後四半世紀近くを経て国際情勢は大きく変わりつつある。特に日本は少子化が急速に進み、出生数が昨年、初めて七十万人を切った。 今年五月時点で約一億二千三百万人の総人口も七〇年には約八千七百万人に減ると予測され、日本で働く外国人労働者も過去最高の二百三十万人まで増えている。それでも十年後には医療、福祉、建設分野などを中心に約三百八十万人分の働き手が不足すると予測され、外国人労働者は今後も確実に増える。 多くの移民・外国人労働者が住む欧州各国の厳しい現実を見ても、民族や宗教、言語が違う外国人との共存は難しい。我国でも一部地域で外国人居住者とのトラブルが発生している。これを受け高市早苗新政権も外国人材との秩序ある共生社会の実現に向け、関係閣僚会議を立ち上げ、多角的な検討を進める方針を打ち出している。 円安や、かつて世界の中で上位にあった我国の給与水準が「失われた三〇年」の中で、OECD(経済協力開発機構)加盟三十八カ国の中でも下位に落ち込んでいる現状から、優秀な若者がどこまで日本に集まるか疑問視する向きもある。 ただし筆者は、現地での面接を含め長年、本事業に携わってきた経験から、父祖のルーツの地である日本に対する日系人の若者の熱い思いを実感してきた。一人でも多くが来日し、両国の友好だけでなく、日本の国づくりに参加し、共生社会のモデルの先兵になってほしく思う。 そのためにも日系人の若者が日本に来やすい環境づくりが欠かせない。現在の留学制度と合わせ、本国に日本語を学ぶ施設を整備するのがその一つだ。「民」による、ささやかな取り組みだが、働き手不足を前に、そんな思いを強くしている。 |



