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2025年06月02日(Mon)
【View Finder】大阪大学に感染症センター竣工/世界の研究者が集う拠点に/大阪大学・日本財団プロジェクト
(BOAT RACE Monthly Report 2025年6月号掲載)
日本財団会長 笹川 陽平

画像:View Finder ロゴ世界保健機関(WHO)は地球温暖化の進行で発生の可能性が高まっている新たな感染症のパンデミック(世界的大流行)に備え、健康安全保障を強化するよう国際社会に呼び掛けている。

そのためには何よりも感染症総合研究の強化が欠かせない。筆者は3月、大阪大学の吹田キャンパスに完成した「大阪大学・日本財団感染症センター」=写真=に期待する旨、同28日付のマイブログに記した。その意義や役割の大きさについて改めて記したく思う。

センター建設は日本財団と大阪大学が2021年から進めてきた感染症対策プロジェクトの一環。建築家・安藤忠雄氏が“宇宙船地球号”をイメージしてデザインした地上10階建て(延べ床面積約1万7千平方メートル)、楕円状の建物は国内で最大規模の感染症研究施設となる。

最先端の研究機器を備えた7階は「共用実験室」として学内外に広く開放され、世界の研究者が集い、新たな人材を育てる感染症研究の国際的なハブ拠点にする計画だ。

感染症対策プロジェクトは19年末に中国・武漢市で初の患者が確認されてわずか数カ月でパンデミックに発展し、世界の累積感染者数が3億人を超えた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を教訓にスタートした。

総合的な科学技術力を備え、ワクチンや治療薬を新たに生み出す「創薬力」を備えていると思われていた日本の国産ワクチン製造が事実上、不発に終わったことが大きなきっかけとなった。

パンデミック発生の危険が高まるのは、温暖化の進展で新たなウイルスが発生しやすく病原体を運ぶ蚊や動物の生息域が広がるのが一因。それに対応する新薬やワクチンを開発するには基礎研究の他、医療機関での治験、高品質の薬品を大量に作る高度な製造技術、安全性や有効性の評価など重層的な態勢整備が必要となる。

3月24日、吹田キャンパスで行われたセンターの竣工式典で大阪大学の西尾章治郎総長=当時=は「感染症総合知のハブとして世界中の研究者が集い、感染症に関する研究を国際的にリードできるよう取り組んでいく」と決意を語り、筆者も「世界に冠たる感染症の研究拠点となるよう願っています」と期待を述べた。

感染症対策プロジェクトは10年計画で進められており日本財団は230億円の助成を予定している。主たる資金はボートレース事業からの交付金。多くのボートレースファンやレースを主催する地方自治体の善意と理解に支えられており、竣工式典には全国モーターボート競走施行者協議会代表理事の高野律雄・東京府中市市長にも出席いただいた。

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大阪大学・日本財団 感染症センターの外観


関連リンク:
2025.03.28 「大阪大学・日本財団感染症センター」―竣工式― | 笹川陽平ブログ









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