2025年04月28日(Mon)
― 参院選公約 消費税減税 ー
財源明示が公党としての責任
“明日の日本”に向け党派超えた議論を 日本財団特別顧問 宮崎 正 ![]() 7月の参院選に向け野党第一党の立憲民主党は4月28日、食料品にかかる消費税を1年間0%とする案を公約に盛り込むことを臨時執行委員会で決めた。 国民民主党やれいわ新選組が消費税の税率引き下げや廃止を公約に打ち出す中、立憲民主党は枝野幸男元代表が「減税ポピュリズムに走りたいなら別の党を作ってください」と減税を求める動きを牽制するなど党内の意見が割れ、対応が注目されていた。 |
苦渋の選択
野田佳彦代表は民主党政権下で首相を務めた2012年、増加する社会保障財源の確保に向け「社会保障と税の一体改革」と銘打って消費税を段階的に10%に引き上げる方針を打ち出し、同12月の総選挙で惨敗・退陣した。 当時、国債や借入金を合わせた国の借金は990兆円を超え、財政を立て直すには国民に等しく負担を求める消費税の引き上げの可否が焦点となっていた。 増税にはいつの時代も国民の反発が強い。筆者はあえて増税を打ち出した野田氏の退陣に当たり「評価されるべき野田前首相の覚悟」の一文をブログ(*)に載せた記憶がある。そんなこともあり、今回の方針決定に改めて私見を述べたい。 *総選挙 番外編 評価されるべき野田前首相の覚悟 (2012.12.29)| 四季折々の雑記 発表会見で野田氏は「悩み、困り、悶絶した」と方針決定が苦渋の選択であったことを明らかにするとともに減税は経済情勢に応じ1回限り延長可能、赤字国債に頼ることはしないと言明した。 食料品には軽減税率が適用され消費税は8%。財務省などの試算によると、0%にした場合の減収は国と地方を合わせ約5兆円に上る。野田代表は「地方財政にも未来世代にも負担を及ぼさない」方策を検討するとしたものの、具体的な財源策は示さなかった。 参院選を前に現状では、消費税減税を掲げる野党各党が支持率を伸ばし、与党自民党からも参議院議員を中心に減税を求める声が高まっている。苦渋の選択の背景には、消費税減税に全く触れなければ党が埋没しかねない、あるいは小沢一郎衆院議員らが増税に反対して集団離党した12年のような事態が再び起きかねない、といった党代表としての判断があったと思われる。 国の借金GDPの約2倍 国の財政は、その後の赤字国債の発行で悪化の一途をたどり、今や国の借金残高はGDP(国民総生産)の約2倍1300兆円にも膨れ上がり、先進国でも最も深刻な財政状況にある。 国の財政はどうあるべきかー。資料などによると財政の健全化を目指す財政規律派、金融政策で市場への資金供給量を増やすリフレ派、自国通貨を発行する我が国が円建て国債をいくら発行しても財政が破綻することはないとするMMT派に大別されるようだ。 財政・経済に関する知識は持たないが、国の財政も家計と同様、歳入と歳出のバランスが必要で、国の借金がGDPの2倍にも達する現状はあまりに異常。ツケを追う将来世代に対しても無責任だと思う。 総額115兆円と過去最大となった25年度一般会計予算も、ほぼ4分の1を公債の発行でまかなっており借金残高はさらに膨らむ。発行した国債の償還や利子など国債費が歳出のほぼ4分の1を占め、その分、政策選択の幅が狭まる結果も招いている。 減税など各党の公約は財源の裏付けが示されない限り、どこまで実現性があるのか有権者には分からない。財源確保策を示さないまま聞こえのいい政策を打ち出すのは財政ポピュリズムと言うしかなく、公党としての責任を果たしたことにはならない。 大きい政治が果たす役割 「失われた30年」の中で日本の賃金水準は国際的にも大きく落ち込み、一方で近年は諸物価の高騰が目立つ。高齢化に伴う社会保障費の膨張、急速な少子化に伴う労働力の減少などを前にすると、この国の将来は一層、厳しさを増す。 “耐え忍ぶ覚悟”が必要な時代を迎えている気もする。 ウクライナ戦争やトランプ米大統領が2期目の就任以降、矢継ぎ早に打ち出す自国第一主義の関税政策などを前にすると国際社会も確実に大きな転換期・動乱期に入っている。 次代をどう切り開いていくか、政治が果たすべき役割はこれまでになく大きい。そうした中で行われる参院選。聞こえのいい公約ばかりを並べ集票を競い合う姿は感心しない。 “国の明日”に向け、党派を超えた真剣な論戦が展開されるよう期待する。 |