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2024年12月04日(Wed)
「言うべきことは言うのが真の友人」中国の大学から学位受け講演
(リベラルタイム 2025年1月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿

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中国人民大学(劉偉学長)から名誉教授の称号を受けることになり、十月二十日、北京市内の同大で授与式に臨んだ後、大学関係者や学生を前に約四十分間、記念講演を行った。
中国人民大学は中国共産党が一九三七年に創設した人文科学・社会科学中心の総合大学。大学の筆頭責任者である張東剛党書記の申請を受け中国教育部(日本の文部科学省)が学位授与を決めた。

 一九八〇年代から四十年間にわたる日中関係改善への貢献が授与理由。一橋大学学長も務められた経済学者・故石弘光氏(二〇〇四年)ら何人かの日本人も同大名誉教授の学位を受けられている。

 筆者は一九八四年十一月、故笹川良一日本財団(当時は日本船舶振興会)初代会長に随行して中国を初めて訪問して以来、二百三十回以上この国を訪れ、百人を超す知己を得た。

記念講演のテーマは「民間交流はいかにあるべきか」。冒頭で初訪問の際、良一会長と最高実力者・ケ小平氏(当時は中国共産党中央顧問委員会主任)が人民大会堂で行った歴史的会談に触れた。会談では「貴方と私は日中の過去百年の生き証人」と語るケ氏に良一会長が「アジアの安定のためには日中間の安定が第一」と応じ、日中関係発展に努力することを誓い合った。初対面に関わらず二人が親しく抱き合った光景を今も鮮明に記憶している。

講演ではこのほか、相互理解促進に向けて設立した百億円の笹川日中友好基金、OB組織「笹川同学会」(約二千四百人)が中国医学界の中枢組織に育った笹川医学奨学金制度、人民解放軍と自衛隊の信頼醸成に向けた佐官級交流、既に四百五万冊が中国の八十七大学に贈られた日本語図書寄贈事業など、日本財団や姉妹財団が進める多彩な事業を振り返った。

天安門事件(一九八九年)で中国が国際社会から孤立する中、西側諸国の経済制裁解除を求める楊尚昆国家主席(当時)の要請を笹川陽平・現日本財団会長が竹下登首相(同)に取り次いだこともある。その後、経済制裁は解除され日本政府の第3次円借款も再開された。どうした動きがあったか把握していないが、日本財団がその後の中国の国際社会への復帰に一役買ったのは間違いない。

 そんな思いもあり講演では、「相手にとって耳の痛いことであっても言うべきことは言うのが真の友人」、「二国間には政治的緊張が沸騰点に達したとき爆発しないように協議するチャンネルが必要」と述べた上で、「相互理解を促進させる活動は世代が変わっても限りなく継続させるべきである」と指摘し、最後を締めくくった。

 当の中国は台湾周辺や南・東シナ海で軍事活動を一段と活発化させている。習近平国家主席は建国七十五周年となる今年十月一日の国慶節を前に「台湾は中国の神聖な領土だ」と述べており、いずれ台湾に侵攻する可能性が高いと思う。

アメリカ大統領選でドナルド・トランプ氏が勝利したことで、今後の米中、さらに日本との関係も波乱含みとなろう。その一方で、核開発を急ぎウクライナ戦争にも派兵した北朝鮮の“暴発”を防ぐには、やはり中国の力が欠かせない。

国際情勢は常に複雑、多様でありる。一方で地政学的に中国が日本の隣国である現実は変わらない。わが国の政治は先の総選挙で与党(自民、公明)が大敗し、一段と混迷を深めている。日中両国の相互理解に民間が果たす役割は今後、さらに大きくなる。そんな思いで、引き続き中国と向き合っていく覚悟でいる。









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