2024年03月07日(Thu)
少子化時代の教育に若者は何を望むか
大学の定員削減に40%が反対
財源確保 年金・介護費の削減を 日本財団特別顧問 宮崎 正 ![]() 日本の出生数は昨年、75万8631人。8年連続で減少し、過去最少となった。出生数と密接に関係する婚姻数も48万9281組と戦後初めて50万組を割り、少子化は今後、一層、深刻化する。 これに伴い大学や短大への進学者数も減る。文部科学省の学校基本調査によると、2023年度の進学率は大学が57.7%、短期大学3.4%、専門学校21.9%。女性を中心に進学率が上昇しているが、文科省の試算では2040年度の大学進学者数は50万6000人。22年度の64万人から20%以上減る。 |
これを受け、生き残り競争も激しさを増している。1990年以降、39の女子大が共学化に踏み切り、複数の大学の統合あるいは学部を増やし総合大学化を目指す動きも目立つ。外国人留学生の受け入れも90年の約4万人から20万人近くまで増えた。 自治体が地元の私立大学を公立大学に衣替えし若者流出に歯止めを掛ける試みも顕著。この結果、90年に39校だった公立大学は昨年、100大学まで増えた。若者が地域に留まったまま学べるオンライン大学の設立許可申請も増える傾向にある。 こうした動きを若者はどう見ているか。日本財団が1月、全国の17〜19歳1000人を対象に行なった調査によると、通学不要のオンライン大学の増設、留学生の受け入れ増加、公立大学の増加にはほぼ半数、大学の総合大学化や女子大の共学化にも40%以上が賛成している。 6割が大学無償化に賛成する一方で、4割は大学定員削減に反対している。望ましい入試の形としては、男性が「学力検査を中心とした試験」、女性は「総合的な評価を中心とした評価」を求める声がいずれも4割を超えている。 ![]() 教育支出に対する考え(日本財団18歳意識調査 第61回「教育」より) ▼世代間の意見の違い、どう調整するか? 教育強化に欠かせないのは公的支出の強化。初等、中等、高等教育に対する我が国の公的支出は一般支出の7.8%、OECD(経済協力開発機構)に加盟する38国平均の10.6%(19年)を下回っている。 調査では28%がOECD平均程度、13%が15%以上に増やすよう提案。そのための年金、国際協力、防衛、介護、医療の順で歳出を減らすほか、法人税や所得税増税、新税の創設による財源確保を求めている。ただし、消費税増税を適切とする声は7.1%に留まっている。 国の財政が逼迫する中、将来の人材を育てる教育をどう強化していくか。年金や介護費の減額が歳出削減策の上位に挙がっている点から見ても、今後、若年層と高齢層の意見の違いが顕在化すると見られ、どう調和を図っていくか政治の指導力が問われることになる。 関連リンク: 日本財団18歳意識調査結果 第61回テーマ「教育」 |