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2024年02月07日(Wed)
若者は将来をどう見ているか
7割が国、6割が自分の将来に不安
GDP4位への転落は“国力の低下”
日本財団特別顧問 宮崎 正
風の香りロゴ
若者の7割が国の将来、約6割が自分の将来に「不安がある」と答えている。日本財団が昨年12月、全国の17〜19歳1000人を対象に行なった60回目の18歳意識調査の結果だ。
調査は日本のGDP(国内総生産)について、IMF(国際通貨基金)が先に「近くドイツに抜かれ世界4位に後退する」との見通しを公表したのを受け、国の将来を中心に聞いた。次代を担う若者の6、7割もが国や自分の将来に不安を持つ姿は尋常ではない。

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日本の将来についての不安(日本財団18歳意識調査 第60回「GDP・新NISA・モビリティ」より)

少子高齢化に伴う社会の縮小、GDP(国内総生産)の2倍を超す国の借金、政治の停滞など、わが国を取り巻く環境はあまりに厳しい。世界が大きな転換期を迎える中、この国の将来はどうあるべきか、あらためて考えさせられる思いがする。

名目GDPの国際比較は米ドル換算で行われ、GDPを人口で割って算出される1人当たりのGDPはその国の平均所得の指標にもなる。折からの円安が日本の落ち込みを加速している面はあるが、個人所得は「失われた30年」の中で一貫して低迷しており、4位後退の一番の原因は「国の力」そのものの低下にある。

これを受け、調査では3人に2人が日本のGDPランキングは「今後も下降する」と見ている。若者が将来を不安視する材料はあまりに多く深刻だ。急速な少子高齢化に伴い65歳以上の高齢者1人を支える生産年齢人口(15歳〜64歳)は、2020年の2.1人から70年には1.3人と若者の負担感は一段と厳しさを増す。

国債や借入金など “国の借金”(政府の債務)も23年3月末でGDPの2倍、1270兆円余と先進国では例を見ない額に膨れ上がり
重く圧し掛かる。財政の硬直化が柔軟な政策投資の大きな足かせともなっている。

国の将来、目指す方向を示すべき政治も機能していない。19年に言論NPOが実施した調査では、「日本の政党や国会を信頼できない」と考える人は6割を超え、政治的無関心が膨れ上がっている。あえて否定的な面を列記したが、18歳調査の結果は、こうした厳しい現実がそのまま反映された形だ。

一方で、1月から年間投資枠や非課税保有期間が拡充された新NISA制度に4割以上が「関心がある」と答えている。過半数が魅力的な投資先などについて「分からない」としているものの、数字は将来に対する若者の不安・焦りが多分に反映された結果と理解する。その意味でも社会の立て直しが急務となる。

関連リンク:
日本財団18歳意識調査結果 第60回テーマ「GDP・新NISA・モビリティ」









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